離陸/文藝春秋
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読みたかった本なので、ゆっくり時間をとって読みました。


まず・・・「スパイ小説」ではないと思われます(^∇^)

たぶん。



(あらすじ)

国交省の公務員である「サトー」は、矢木沢ダムでの

雪が積もる勤務時に自分を訪ねてきたイルベールと会う。

イルベールはサトーが昔付き合っていた乃緒を探しに

きているというのだが、サトーには心当たりはもちろんない。

その後サトーの転任に伴い、舞台はフランス・熊本へと

移りつつ謎の多い乃緒の行方を捜す・・



まず最初の矢木沢ダムの風景の描写に心奪われる。

ダムについては私の友人の旦那が、同じくダムで勤務していた

のでその仕事内容などが「なるほどなるほど」と納得できた。



絲山作品で好ましいのが、主人公の描かれ方。

ここがもしかしたら少し村上春樹と似ているところかもしれないが

(全然違ってたらすみません)

無機質的なのだ。

これは、主人公が男であろうと女であろうと変わらない。

あまり内面のドロドロとした感情を読み取ることが好きでないので、

ありがたい。


女性作家には珍しく、感情を俯瞰的に描くというのか。


かといって、冷たいというわけではない。


サトーは人とのつながりに臆病なあまり、「淡々とした自分」を

作り上げているのだ。



だから、ずいぶん前に別れた恋人の行方を追うイルベールに

かかわる自分を御し切れていない。

かかわるまいと思いつつ、かかわってしまうのだ。



乃緒に関する謎は謎のまま終わってしまう。

だが、読後感はよく、謎がとけなかったことについて特に

何も思うことはない。


だけど・・・乃緒のスパイ・タイムスリップのネタは必要だった

のだろうか・・・(ノ_-。)


サトーはこの物語のなかで、自分に近いたくさんの人たちの死を

見届けてしまう。



死を、「離陸」


とみるサトーの視線は暖かいと思う。


「ぼくらは滑走路に行列をつくって並んでいる。

いや、まだ駐機場にいるのかもしれない。

生きているものは皆、離陸を待っているのだ―」



死によって離陸し、次の旅にいく。


エピローグの言葉は、やはり暖かい。




★★★★☆



本書に出てきた

ルイ・フェルディナン・セリーヌについて興味深く思ったので

文献など読んでみたいと思った。