あなたに会いたくて、
この程よく静かで
落ち着いたカフェを選んだ。
仄暗い照明に
窓の外の沈みかけた夕日が、
私とあなたの顔をほんのりとオレンジに染め上げ、
この瞬間だけの
画になる。
感じ取れるものを
見ないふりをして、
ソーダの泡みたいに
儚げな会話が
浮かんでは消える。
真っ白なバニラを浮かべたグラスを、泡が吹きこぼれないように
ストローでゆっくりかき混ぜて・・
静かに流れるジャズ、
軋む板張りの床と靴音のリズム。
夕闇が迫る窓の向こう、まだ
かすかな月。
視線を転じるたびに
想いは駆けていく。
あなたの頬に触れる髪、
両手を組んだ指の形、
伏せた長いまつげが落とす影。
私はあなたに会いたくて来た。
求めているのは
たった今あるものだ。
風景でなく
この居心地よい場所を味わうことでもなく、
お互いの“歴史”を語ることでもなく。
ただあるもの。
それ以外は“物語”となる、
今。
広大無辺な
単純な意識に、
時も無く
二つの顔も身体も無く
満ち足りた
花の微笑みが浮かぶだけ。
花の丘を描いた。
