むかしむかし。
ある森のなかに、一匹の蜘蛛がありました。

そこはとても自然豊かな森で、多種多様な草花、樹木、昆虫の楽園のようでした。

恵まれた蜘蛛は、毎晩、蜘蛛糸で精巧な網をせっせとこしらえては、素敵なディナーにありついていたのです。


ある夜のこと。

あまりあちこちに網を設置していた為か、
あろうことか蜘蛛は自分の罠に引っ掛かってしまいました。

こんなハズでは・・!!
と、なんとか脱出を試みようとしましたが、糸はびくともしません。
もがけばもがくほど、グルグル巻きになってしまうのです。

そこへ、鋭い鎌を光らせたカマキリがたまたま通りかかりました。

「カマキリさん、すみませんが、このからだに巻き付いてる糸をなんとかしてくれませんか。
身動きが取れなくて困ってるんです。
あなたのその鎌なら、きっと私を助けられるでしょう?」

カマキリは快く頷いてくれました。
鎌を持ち上げて、慎重に狙いを定めます。
蜘蛛はなんだか恐ろしくて、目をぎゅっと瞑りました。

その時、ちょうど夜が明けてきました。
太陽が昇ります。

ぱらり。
固く巻き付いていた糸が急にゆるみ、蜘蛛は自由の身になりました。

「ああ、ありがとう、カマキリさん!
やっと自由になれたよ!」

「私はなにもしてないよ。
君は夜行性だから知らなかったかもしれないけど、
君の糸は、熱で溶けるタイプなんだ。
だから自然に溶けちゃった、
今日はなんて良いお天気だろうね」


(おわり)