ここ二三日,私は田付流砲術の鉄砲について調査報告書をまとめていた。田付流砲術の鉄砲は,銃床尾が平面にカットされピストルのグリップを思わせる形状をし,田付柑子と呼ばれる銃口飾りが特徴として挙げられる。
田付流の鉄砲の木製雛型
典型的な田付流の鉄砲
田付柑子
しかし田付流砲術から派生した流派が多いうえ,自由な学風だったためか,鉄砲の作風にバリエーションが多いのが困りものだ。
田付柑子のない田付流の4匁鉄砲
だから田付流の鉄砲だと判断するには,多くのデータを集積しておかねばならない。ところが,私は,田付流の大筒に関するデ―タが少なかったため,調査結果報告をまとめきれないでいた。
今日の午後に鉄砲館の支援者が,大筒を携え来館された。その大筒が,なんと田付流の口径28ミリの30匁大筒だったのである。しかも田付流の掟通りに作られた完品だったから,私は腰を抜かしてしまった。
田付流30匁大筒
どんなに少なくとも150年以上前に作られた大筒だから,何一つ欠落したものが無いという完品の鉄砲が存在していること自体が珍しいのである。よほど優秀なコレクターたちに愛され,そして大事にされてきた大筒だったに違いない。縁というものは不思議なものである。




