スマート・スマート(8)
題「スキンシップ」
ふと気付くと、あれは誰だったのか?
確かに母だったが、声を聞いた記憶がない。
しかし、今戸籍を調べると三歳までいた母は、
僕が生まれると同時に死んでいたことを知ってしまった。
しかし、僕の頭には母に抱かれた記憶がある。
それも、いつも頬をぺろぺろ舐められる記憶が。
よし、お父さんに、勇気を出して聞いてみよう。
「実はね。あれは、
スキンシップ系子育てロボットだったんだよ。
何故、舐められた記憶があるかって?
それはね、2004年に発見されたラットの実験にて、
母親が充分な時間をかけて舐めたラットは生涯に渡り、
ストレスに強くなることが実証された。
どうも、母とのスキンシップにより、
脳の海馬にて特定に受容体を作る遺伝子が活性化して、
長期的にストレスレベルが制御されるというらしいんだが、
その理論を応用して何か作りましょうと言ってくれた、
百間川のエジソンという発明家が作ってくれたんだよ。
子供の肌を舐めて、子育てをする子育てロボットを。
もちろん、お前を膝に乗せたまま、唇と腕以外は動かないんだが、
なかなか精巧な物を造ってくれたのさ」
「百間川のエジソンさんって、
あのモーツアルトのお墓の地下に作った音楽堂で指揮をしている最中に、
強盗事件が発生したので、
指揮棒に仕掛けていた特殊銃で犯人の足を射撃したことで、
海外の警察から表彰された人だよね」
「そうだよ。
ちょっと奇想天外な発明家なんだが。
なかなかいいところがあってね」
「あの人って、僕の母親まで造ってくれていたんだね。
だけど、舐められた謎が解けてよかった。
だけど、父さん。
もうあのロボットはないの」
「いや取ってある。倉庫の中だ。
見たいか」
「うん」
その夜。
僕は、押入れの中の母親と再会した。