詩(15) | BLOG MYSTERY NOVELS

詩(15)



題「アスファルトの樹海」


 レース場の観客席で受ける風が青い。
 時折混じる砂埃。

 痛みで目を閉じた拍子に、目の前の二本脚の機械猫達は、
 視界の外側へと移動していた。

 一瞬のベスト・ショットを逃した結果、
 待っていたのはブラック・アングル。

 この瞳のファインダーは、狩人のように、
 周回遅れの四気筒のマシン達へと目を移す。

 まるで自分の人生のようさ。スロー・スピードでもアクセルに掛ける手は緩めない。

 雨の降る坂道を、哀愁に満ちたエキゾースト・サウンドを鳴らしながら、転がり続ける。

 そして、下りきったところでターン。

 これからスピード・アップするために、
 最高のタイミングを拾いながら、
 ギア・チェンジしていく。

 目の前の機械猫達が、脳裏で加速を始めた自分の加速する自我(マシン)の排気音をかき消すかのように、駆けていった。

 そして、又、コーナーの奥へと消えていく。

 消えていく猫はやがて幻に。
 まるで、幻の猫の詩が、路上にて演奏されているかのよう。

 疲れ果てた一匹の猫。
 老いたその猫は、猫撫で声を上げながら、
 ゆっくりとコースアウトしていく。

 ここで白旗を揚げた者の心は、
 亡霊へと飲み込まれてゆき、
 ダダこねる暴れるマシンの排気音を飼い慣らす事のできる勇者は、
 亡霊の幻影の持つ脚よりも速く駆け抜けていく。

 ここは、スピードに取り付かれた男達の集う、
 アスファルト製の魔の樹海。

 路上(サーキット)の策士達がスピードを競い、
 速く走る事だけに人生を賭けて生きる闘技場。

 その樹海に迷い込んだ我は、一人この円周を傍観しながら、
 心の中で飼い慣らす猫を宥める歌を口ずさんでいる。

 自分の人生のレースで、どんな展開を、どんな勝負をしよう。

 心のアクセルは、今、(脳裏にて)回転を始める。