スマート・スマート(2)
題「亡霊航路」
俺の前に現代詩の亡霊たちが、破片となって吹き荒れている。
その吹雪を前に、瞼を開いていることが苦痛なのだ。
だけどそれを振り払うこともできず、この道を俺は行かなければならない。
何故かって、俺の手には数珠が握られているだろう。
全ての死んだ言葉。
いや、正確には死に切れずに、彷徨っている詩の言葉たちへと祈りを与え、成仏させるために。
言葉を無へと帰す霊力のある袈裟を着て、言霊たちに北斗の方向を示してやる。
そう、パンドラの箱を閉じるために。
言霊を鎮める霊力のある蒼い炎を発しながら燃え滾る、それでも固形物ではなく、液状の十字架を彼等へと向けるために、
独り、この道を行くのだ。
そして、彼等を鎮めた後、その土地に、言葉の墓石を置くことによって一つ一つを「封印」してゆく。
俺の名は封印師「零号」
逃げても無駄さ。
一人の男の使うアリバイト・リックも俺は、見抜く術を知ってしまった今となっては、物理的干渉による逃走劇も、決して明るい結末を迎えないということを覚悟してほしい。
作家の想像力を上回る怪盗でも、目の前に出現せぬ限りは……。
そうやって、悲しき詩たちを封印し、新しい言葉をこの世へと誕生させよう。
いや、新しいなどという概念などは思い上がりかもしれない。
正確には、別の空間から新たな言葉たちを召喚してくるのだ。
その純真な産声を聞くために、死んだ言葉たちを、北斗七星行きの列車へと乗せる。
ハーモニック・コンコーダンスの形作られた夜。
言葉のチェンジ期を予感している。
この耳には、汽笛が聞こえてくる。
言葉を総入れ替えするために訪れる
列車の音が。
その列車から降りた言葉を迎え、乗せる言葉を今、俺は集めている。
そう、目の前の破片がそうだ。
言葉の生霊を一つ一つ集めていき、
蒼い炎を発する十字架の内へと、言霊たちを閉じ込める。
その十字架の発する蒼炎によって、言葉を焼き、鎮め、零にする。
しかし、質量までは失わぬ言葉たち。
言葉の抜け殻を列車へと乗せて、見送るまでは、この道を行かねばなるまい。
俺の前に現代詩の亡霊たちが破片となって吹き荒れている。
その吹雪を前に、瞼を開いていることが苦痛なのだ。
だけどそれを振り払うこともできず、この道を俺は行かなければならない。
それが封印師としての
俺の役目なのだから……。
後記=封印師「零号」というキャラクターは、偶然の産物ですが、近い将来この人物を立てたメタ・ミステリーを作品化するかもしれません。
まだ未定ですが。