スマート・スマート(11) | BLOG MYSTERY NOVELS

スマート・スマート(11)

題「青空の下の鎮魂歌」

 

 

場所:百間川一声の探偵事務所。

 

百間川一声「なるほど、(高級)車を盗難されたんですね」

A「ええ。ショッピングを終えて、屋上駐車場へと行き、車の鍵を開けようとしたんですが、あぁ、鍵と言うのがですね。端末を車内へと置いて、外からガラス越しに手をかざすことで、(端末の)液晶画面に表示される4桁の数字を合わせるものでして」


百間川一声「あぁ、以前某TV(TV東京「WBS」)で放映されていた、あの鍵のロックをオン・オフと切り替え、作動させる機器のことですね」

A「ええ、そうです。液晶に数字が表示される度、登録しておいた数字の所で(車外から)手をかざして(一桁ずつ)数字を止め、4桁合わせると、車のドアのロックが外れるという、あの鍵のことです」

 

百間川一声「続きをどうぞ」

 

A「はい。その鍵の作動装置の端末を作動させようと、窓ガラス越しに手をかざしていたんですが、開かなかったんです。そこで一度、車を離れて(携帯電話も車内へと置いていたので)公衆電話で端末を購入したお店へと連絡しようと、階下へと降りて公衆電話を探し、やっと見つかったところで連絡。屋上へと戻ってみると、車が消失。というわけです。

 あぁ、一つ付け加えておくと、鍵端末を取り付けると共に、ドアの鍵穴へは、自動車鍵を挿せないようにしておいたんですが、それだけに、何故鍵のロックが外れたのか……」

百間川一声「なるほど。しかし、何故、壊れた鍵作動機がうまく作動したんでしょうかね?」

A「あっ。実は私、ついうっかりと、数字を揃えても機器が反応しないので、『おかしい、9371の所で止めたはずなのに』と口にしていました。実は私、失敗すると、つい声に出して状況を言ってしまう癖があるので」

百間川一声「癖ですか……もしやこの盗難事件。あなたの癖を知っている人物の犯行かもしれませんね。
その車も事前に盗難しようと考えていたのかもしれない」

 

A「何ですって」


百間川一声「周囲に不審者はいなかったでしょうが。あなたの癖を利用して、番号を耳に出来るチャンスを窺っていたんですよ」

 

A「ま、まさか。でもちょっと待って下さい。鍵の作動機は壊れていたんですよ。

じゃあ、窓ガラスを叩き割って……しかし、車内へと入れても鍵が無い限りエンジンは掛からないでしょう」

 

百間川一声「Aさん、鍵を落とされたことは無いですか?あるいは車を貸したことは」


A「いや、まだ購入仕立ての新車ですから……あっ、この間、友人に貸しました、ほんの一時間ほどですが」

 

百間川一声「なるほど。その人物が怪しいですね。その際に盗めばバレバレですから、次の機会を狙ったんでしょう。そしてその際に合い鍵を作っておいた?」

A「しかし、もう一度言いますが、あの鍵の作動機は壊れていたんですよ。じゃあ、どうやって鍵のロックを解いたんです」」

百間川一声「いえ、だからこそ作動機は壊れていた。そう考えられるかもしれません」

 

A「?」

百間川一声「そのご友人は、あの作動機。いえ、正確には窓ガラスの方に、ある細工をしていたのではないでしょうか? 窓ガラスへと、特殊溶液を塗るか何かしておいてね。赤外線に反応する機器であるのならば、赤外線をシャットアウトする溶液の類を」

 

A「何ですって」

 

百間川一声「そうすれば、手をかざしても、手の反応を妨げるはずです。そうやって、手の反応を妨げて、あなたが公衆電話を探しに行く隙を窺っていた。

 もちろん、このデパートも事前に調査していたのではないかと思われます。駐車場から公衆電話までが出来るだけ離れているデパートであることなど、ここは好都合な場所だったのではないでしょうか?ああ、駐車券の問題は、券を落としましたと窓口で伝えればクリアできるでしょう。そうすれば後は、料金を支払えば通してもらえるはずですから。それらを踏まえ、そのご友人こそ最有力容疑者。そう私は考えます」

 

A「そこまで手の込んだことを……。いえ、私も責めることができないかもしれません」

 

百間川一声「と、申しますと」

A「実は彼は、世界から自動車を無くす運動をしている人間なんですよ。エコカーはまだ認めると言っているようなんですが。だからこの間。車を貸してくれと言ってきた時は、妙だとは思ったんですが……」


百間川一声「車を無くす運動家……ですか……」

A「ええ。しかもその原因がですね、一年前に私と息子と、彼の息子の三人を乗せて、あるテーマパークへと行く途中、事故に遭い、私たちは軽症で済んだのですが、彼の息子だけが……亡くなってしまった……。

それ以来、連絡も寄越さなくなったんですが。一年間、追悼の気持ちもあってか、安い中古車に乗り換えていたのをこの間やめて、新車を買うことにしたのです。

 そう、購入した直後です、突然、彼から連絡が入り、車を貸してくれないかと……」


百間川一声「なるほど、一年前に、動機の根が出来ていたと言うわけですね」

 

A「え、ええ。百間川さん。ではこれから彼のところへ行き、一年前のことも踏まえてよく話し合ってみます」


百間川一声「是非そうしてください。あぁ、行く前に自動車神社へと参るといいですよ。すべての罪が洗われ、許されますようにと」

A「自動車神社ですか?」
百間川一声「 ええ、私の提案で丘備市内に造っていただいたんです(今年の一月に完成)。私もある交通事件の被害者ですからね。
 その話(春を呼ぶ指揮棒)を知りたい場合は、私の自伝を書いている薫葉豊輝という三文書き手のブログを読んで見て下さい。私はやめてくれと言っているんですが、明日から、私の少年期の物語をそのブログで連載を開始すると、さっきメールが入ったので」

 

A「アドレスは、わかりますか」

 

百間川一声「ええ。http://toki-t.hama-sush-jp.pro/ 。ブログ名は『BLOG MYSTERY NOVELS』です」