奇跡は起きた

「うそだろ?」

信じられないことに、ユリは俺と同じ高校に合格していた

「ねっ、愛の力は偉大でしょ?」

ユリは受験番号が貼ってある掲示板を背に、綺麗なウィンクをして微笑んだ

当然

入学後は不動の学年最下位を独走し、常に補修と追試に追われることになったが

「いいもん、大学に行きたいわけじゃないし。3年間、周のそばにいられれば卒業できなくったって全然平気!」

彼女は全く気にしてなかった

「少しは親の気持ちも考えろよ」


「うちの親なら大丈夫」

ユリの父親は芸術に疎い俺でも知ってる有名画家で、母親は元美術教師

ふたりとも大らかな性格で、40代半ばになって生まれたひとり娘のユリを溺愛していた

彼らにはユリを外で働かせるなどという発想は最初からなく

「周は大学に行ったらひとり暮らしするんでしょう?そしたら、ご飯を作りに行ってあげるね。こう見えてもお料理だけは自信があるの!」

卒業後は花嫁修行よろしく、家事手伝いでもさせるつもりだったらしい


高校2年になったあの日も


「ママとクッキー作ったから、持って来ちゃった」

母さんが仕事で留守中に、ユリが狭い我が家を訪ねてきた

「散らかってて良ければ、どうぞ」

「うん、ありがとう…」

部屋にあげた途端、ユリの表情が変わったのを見て「またか」と心の中でため息をつく

「言いたいことがあるなら、ハッキリ言え」

「C組の絵里奈ちゃんに告白されたでしょ?」

ユリは頬を膨らませ、気持ちいいくらいハッキリ俺を問い詰める

中学時代より身長が伸び、ユリとは反対に成績は学年1位の座を譲らないせいだろう

自分で言うのもなんだが、高校に入ってからの俺はそこそこモテた

「だったらなんだよ?」

「絵里奈ちゃん可愛いよね、スタイルだってすごく良いし」

「だから?」

「なんて返事したのかなって、思っただけ」

このやり取りをするのも、高校に入って何度目だろう

「なんて返事したと思う?」

「ユリとつきあってるから、ごめん…だよね?」

「わかってて毎回聞くのはなんなんだよ、面倒くせえな」

「あーん、ごめんなさい!でも周が悪いんだからね、頼まれたら誰にでも勉強教えてあげるでしょ?女の子はみんなアレで好きになっちゃ…」

ユリが言い終わるより先に、うるさい唇をキスで塞ぐ

「んっ!」

高校生になっても相変わらず、ここから先には進めないでいたのだが

いつものように舌を差し入れ、砂糖の甘い香りがする唾液を貪っているうちに体は正直に反応する

「周?」

気がつけば

ソファの上にユリの身体を押し倒し、ブルーのワンピースに包まれた胸の膨らみに手を伸ばしていた

「あっ、やっ…ちょっと待って」

「なに?」

「周のお母さん、帰って来るんじゃない?」

今日という今日はさすがに止められそうにない俺の動きに、ユリはかなり慌てていたが

「母さんなら夜まで帰らない、だから」

勇気を出して、俺も自分の欲望をハッキリ伝えることにした

「ユリを抱きたい、今すぐ」

「えっ…」

ユリは一瞬、困った顔をしたものの

「いいよ、周のこと好きだもん」

天使のように愛らしい笑顔で頷いた

「あっ、間違えた。大好き、だった」

そんなこと

出会った時から知ってたさ


つづく↓