うどんを食べに・・・ | 余生庵 カラスの晴耕雨・読ぶろく…クンセイが肴

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残り少ない余生をテキトーにいきていくブログ
◇監修 左上野 老鶴 ◇GM 経田野 横鋤 ◇照明 当代元 蔵志
☆余生を送っている人間が書いている記事ですので、恐縮ですが
 「記事更新頑張りましょう」といったコメントにはお返事できま
  せん。

「そば屋、一杯、頼もうかの。」
「へい、お武家さま、いらっしゃいまし。」
「いや、ちょっと待て・・・おぬし、うどんも作れるのか?」
「讃岐風でございますが・・・おいやでなければそちらになさいますか?」
「そーぢゃな~・・・」
「失礼ながら、、お武家さま。あなた様のお言葉、関(せき=箱根の関所)より、
西の方とお見受けいたしました。
御出汁も西の方のお味にさせていただきますよ。」
「そーか!!亭主。お主の腕を見込んで、讃岐風うどんとやらを所望いたそう!!」
「かしこまりました。」

「ところで、亭主、いろいろなことができるようじゃの。」
「いえ、お武家さま。たまたま、手前の師匠が讃岐のうどん職人だったので
ございますが、手前が実家の事情で江戸に出て来ることになりまして、
すると、向こうの味のうどんはさっぱりで、江戸そば屋に鞍替えしただけのことで
ございますよ。」

「亭主が、できるのは、うどん、そばのみにあらず。武芸にも通じておるようじゃ。」
「なにを、仰せで。滅相もない!!」
「さきほど、拙者がこの屋台に近づいた時、乾いた土を殊更選んで
撒き直しておったな。
食べ物屋は、普通、土ほこりが立たぬよう心配りをするのが常。
その反対のことをわざわざやってみるとは、自分が不利になったときに
目くらましにそれを使うとか・・・」

「さすが、<彦根藩・16代藩主、井伊直弼>。
単身で屋台に飯を食いに来る肝っ玉の太さ、砂を撒いていた意味を素早く解釈した
洞察力、”赤鬼”と恐れられただけの事はある。
しかし、井伊殿、貴殿の強運もここまでじゃな。御命頂戴つかまつる。
先の<桜田門外の変>で暗殺された井伊殿は影武者であろうこと、我らにはとうにお見通しよ。」
「水戸(藩)のお庭番衆か?」
「御想像にお任せ申そう。
さてこそ、御覚悟召されい!」
「そう簡単にいくかな?」

「井伊様!そやつと戦ってはなりませぬ!!」
「なぜじゃ?」
「説明している暇はございません。とにかく不思議な術を使います。
誰ぞ、井伊様をお守りして、なるべく遠くへ!!」

「小頭殿か、強いのが出てきたの・・・」
「柘植(つげ)の十兵衛・・・お主が刺客とはな・・・やっかいなことだ・・・」
「小頭殿、われらまとめてかかれば・・・」
「何をいう。奴は<忍びの術者>としても一、二を争う抜け忍。
剣も北辰一刀流皆伝の腕じゃ。下手に動くとこちらが危ない。」
「この期に及んで、何をもめておるのじゃ。そちらがこぬなら、こちらから行くぞ!」

「十兵衛。伊賀一番組3人を一瞬にしてたおすとは・・・相変わらずすさまじい殺人剣。
われら既に4人になってしまった。こうなれば、わしがお主と刺し違えて、井伊様を
お守りするしかなさそうじゃの。」
「おぉ、小頭殿、いつになく弱気ではないか?」
「またちょっと見ないうちに、お主の剣相が凶悪になっているのに気付いたから・・・とでも言っておこうか・・・
あっ、そこをせめたら、奴の思う壺じゃー」
「ふふふ、さすが、一度戦った相手の術はよく覚えとるな、小頭殿。」

十兵衛を、一人ははがいじめ、一人はおそらく心の臓でも突こうかというところ、体をよじって抵抗が
あったせいか片腕を落としてしまった。
しかし、その腕は意思がある鳥のように直弼の方に飛んで行った。

それを見た、小頭は一大事とばかり、直弼の前に立ちはだかった。
千切れた腕はその手首から先で、本来井伊殿ののど元にくらいついているはずであったろうが、今や、
小頭ののど元をがっしりとわしづかみにするのであった。
ほかの、伊賀組3人が、腕を手首から落としても、指の関節を一本一本折って食い込みをはずそうと
しても、時間はあっという間に小頭の命の刻限の限界を越えてしまい、寸刻の間もなく小頭を窒息死に
至らしめた。

ところで、
一瞬にして、伊賀組の中でも手練の3人を下した男が、そう簡単に背後をとられるはずがない。故意に組
ませたと考えるべきであろう。
「小頭殿には申し訳ないことをした。かくなるうえは拙者が・・・」
「いけませぬ、井伊様。ここは何としても我々が。」

すると、十兵隊の上から正体不明のぬるぬるした液体がザーザーと掛かってきた
「お。油か。それで俺は火責めにあって一貫の終わりになるって寸法だな?
それにお主ら、八人衆か?七人衆などと、たばかりおって!!
それで俺に勝ったつもりか?!!」

「言わせておけば!!火矢を!!」

「ふふふふ、はははは・・・」

「火の熱で気でも狂ったか?」

「十兵衛最後の術じゃ。<大車輪>。」
なんと残っていた片手で自らの両足を切り落とし、それが直弼に向かって回転しながらやってくる。

両の足は、既に十分火が回った熱で膝のところで縮みあがったためか直角に曲がっており、
それが、直弼の首に2本の足で菱形のように巻きついて容易にはとれない。
残った伊賀組3人が腕ずくでほどこうとし、また、8人目が小柄で切れ目を入れながら、
足をゆるめようと試みたが、単に、肉片を細断するのみではなく、熱との戦いでもあったので、
ついには井伊殿も絶命してしまった。

また間もなく、腕づくで足を取り去ろうとしていた伊賀組3人も、それぞれに全身大やけどを負って
次々とその場に斃れ、帰らぬ人となったのであった。

最後の8人目は報告のため、江戸のお城に体を向けたところ、もうすべてが焼きつくされたと
思われたはずの十兵衛の燃え残りの体の間から、できそこないの長~い手のようなものが、
彼の足首をつかんで、有無を言わさず、地中に引きずり込んでしまった、

そして半刻(=1時間)もすると、地中から、十兵衛がよみがえって出てきた。なんとなく
8番目の伊賀組の男にも似ていた。

柘植では不死身の十兵衛とも言われているらしいが、本当のところ、実体は誰も知らない・・・
ところで自分で切った両脚、切られた片腕もあったようだ。

一方の井伊直弼は、「影武者をたてる」という幕府の妙案が奏功、江戸城門下の御触れ書きにも
「井伊大老、桜田門外にて安政七(1860)年三月三日、水戸藩士に暗殺さる」と普通はこのような大事、
伏せるところ逆手にとって、井伊殿いったんは難を逃れた形になっていた。

しかし、何らかの落ち度があり、あるいは密偵に探られ、井伊殿御存命が漏えいされるところとなり、
結局、井伊殿は桜田の変から1週後に落命された。享年、満44歳。


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うどんを食べに・・・                  了

ラーメン・・・・そば・・・・ウドン・・・自分は麺類が好きですので、
好きな食材を内容に選べば記事が書きやすいのではないか?
とやってみました。

形としては3編ですが、自分の気持ちの中ではワンセットであります。
最後まで、ほら話にお付き合いくださいましてありがとうござました。