1994年5月

それは、ポチ(下の子)を里帰り出産し、
実家から自宅家に戻って間もない頃だった。



そんな頃はまだ、

鬼姑の店美容院もそれなりに知り合いが来て
毎日数人のお客さんは通っていた。



その日もお客さんが、

赤ちゃん赤ちゃん(男の子)の顔を見せて音譜

と言ってくれたので、

私はポチ(下の子)を抱いて

お店の扉を開けた。



お客さんは大きさにびっくりしながらも、
「かわいいねぇ、

男の子ふたりで将来楽しみだねぇ」
などと言ってくれていた。



女の子が欲しかったけど、

男の子ふたりも楽しいかな音譜

と考えていたし
何よりも、

生まれてきたポチ(下の子)はかわいくて、
男の子だとか女の子だとか、
そんなことはどうでもよかった。





だが、それは鬼姑にとっては

どうでもいいことではなかったみたいだった。




お客さんが、

「若いんだから

もうひとり産みなさいよぉ~ニコニコ
と、社交辞令を言ったら、



鬼姑はこう言いだした。
『そうでしょ~DASH!

私も言ってるんだわね~!!
言ってやって!!言ってやって!!
ほらみぃプンプン

娘はいいから女の子産みなDASH!

3人は産まないかんわ!!
娘は絶対いいよ、
ほんとにいいで。
嫁さんなんか絶対だめだに!!

やっぱり娘とは違うし
年取って、

話し相手になるのは

絶対娘だし!!

嫁さんなんか絶対違うし

絶対だめだに爆弾爆弾






その場で私は言葉も涙も飲み込んだ。





娘を持つと、母親としてはいいよ
という話をしたかったんだろう。



そんな気持ちもわかる。


けれど、それを言われて

平気なのは私が娘の場合だ。



私は嫁だ





毎日、鬼姑節分の相手をし、

話をしているのは
同居しているこの嫁の私だ。




お客さんはそのとき、
『そんなこと言って…』
と、黙り込んでしまった。




鬼姑は何も気づいていない。





考え方にもよるだろう。
私を娘のように思うあまり、

出た言葉かもしれない。




無意識に私の瞳はうるんできた。
でも、お客さんの前で

失態をさらすわけにはいかない。
私はとっさに
「あれ、

おむつが濡れてる、

かえなくちゃ」



そう言って、その場から離れた。




ほんとは、おむつなんか替えたばっかりで、
全然濡れてなんていなかった。




ただ、その場から立ち去りたかった。




泣いてしまいそうで、





そんな自分がいやで、





とにかく鬼姑から離れたかった。




くやしかった。




ポチ(下の子)が不憫に思えた。





くやしくて、くやしくて、悲しかった。





これだけは

一生残るだろうと

その時思った。





あれから13年たった今でも、
思い出して文字にすると涙が溢れてくる。

当時の日記を読み返して

また泣いてしまったわたし




もっと強くなれたらいいのにな・・・。

バナー
↑これはひどいよ・・・しょぼん

と一緒に涙してくれた方は

応援よろしくお願いします。