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そもそもあのおじいさん、

あの人は何を職業にしてる人か知らないが、

どうもあまり働き者ではない様子

 

雀ナド可愛がって

ノソラノソラと日を送っている

非生産的な男のように思われる。


おそらくおばあさんは、

その貧しい家計のやりくりに必死で、

糊などもお釜の底にくっついたご飯を

一粒あまさずかめにためておいて

やっと作ったものであろうから、

それをなめた雀が憎らしいのは当然である。

 

もとはといえば

おじいさんの甲斐性なしがいけないのである。

 

舌を切られた雀は、

可愛がられてワガママに育った者の常として、

チイチイ、キャアキャアと大げさに鳴きさわぎ、

家出をしてしまう。

 

するとおじいさんは家のこともおっぽり出して

「すずめ、すずめ、

すずめのお宿はどこじゃいなァ」

と胴間声はり上げて捜しまわるさわぎ。


それを聞きつけた雀は、安キャバ女よろしく

家から走り出て

「さあさあ、ようこそ、おじいさん、

お待ちしてたのよン」

と甘えて招じ入れ、さっそく酒盛りとなる。

 

おじいさんは

家で汗水流して働いている

おばあさんのことも忘れ

脇息などにもたれ、

金屏風の前でいい調子で喜んでいる。

 

「お前がいなくなったあとの

おばあさんとの二人ぐらし、

一日とて楽しいはなかったよ」


「お察ししますわ、

ホントにあの方はキツイかたネ」

 

おばあさんがキツくなったのは

おじいさんのせいなのだ

どんなに優しい女でも、

こんなグウタラと五十年も一緒にいれば

そうなる。

 

小雀は大きいつづらと小さなつづらを出して、

どっちを持って帰るかと聞く。


おじいさんにこんなにも愛され、

気心の知れた仲でありながら、

まだおじいさんをためすようなことをする

雀。

 

こういう小ざかしさが見ぬけないで、

色香に迷う男というものは

どうにも救いようがない。

 

二つのつづらを出されたおじいさん、

気取って

「小さいほう」

などという。

 

甲斐性もないくせに見栄だけは一人前だ。

 

おばあさんが大きいほうを欲しがったのは

無理からぬことではないか。

のらくらじいさんを抱えての生活の不如意、

 

あまつさえじいさんが

小雀といちゃついている間に、

溜まった借金も利子がかさむばかりである

 

早速、尻ハショリをして

雀の家へ出かけて行った

おばあさんの心境を思うと、

一掬の涙を禁じ得ないのである。

 

大きなつづらを背負ったおばあさんの胸中は

買い整えるべき米や冬支度のことで

いっぱいである。


だが出て来たのはバケモノの群れだった。


ああ、何という残酷な仕うちだろう。

可哀想なおばあさんはこしを抜かす。


雀のお宿では、

さぞかし小雀どもが笑ったことだろう。

 

可哀想なおばあさんは、

強欲ババアの烙印のもとに、

辛い貧しい生涯を送ったのである。



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エッセイ集

佐藤愛子著「楽天道」

新釈・舌切雀より抜粋

です。

 

これをうっかり電車で読んでしまって

家から走り出て招きいれる雀

吹いちゃって泣き笑い

 

見栄だけは一人前のじいさん

笑っちゃって

途中でやめました。笑い泣き


だけど面白いだけじゃなくて、洞察が優れている

要は「女性哀話」だという。



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女は残酷なのでも強欲なのでもない。

男がそうさせ、家庭というものがそうさせるのだ


男はその上にアグラをかいて、

一見、被害者のふりをしながら

女を利用するのである。


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深いよ真顔

小ざかしい小雀の色香に迷うじいさんから

こうくるとは。





佐藤愛子さん101才。

・直木賞・女流文学賞・菊池寛賞

・紫式部文学賞

受賞作家






この「楽天道」は

40~60年前のエッセイを集めた本


その頃の自分が何歳だったか、もしくはこの世に存在してなかったかと、想像してみてもかなり前のエッセイなんだけど、全然おもしろい。


時代的に今とは違う価値観が当たり前の中で、

そんな文章の中に

それでもハッキリと自分の意志が通っている。



多分とても頭の良い人で、読みやすくて面白い。



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「女流作家らしくない気さくなおばさん」

と言われ憤りを禁じ得ず


「気さくな女流作家」というのなら

お世辞だといってもわかる。


「おばさん」とは何か、

「おばさん」とは。


「ええやないですか。

実際におばさんなんだから。

おっさんと言われるよりはええでしょう」


いいや、いっそおっさんと言われる方がいい。

その方が面白みがある。


おばさんという言葉の

クソリアリズムに私は侮辱を感じる



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クソリアリズムひらめきw

確かに「お姉さん」とか「お嬢さん」とは明らかに違う含みを感じる言葉よね。


クソリアリズム→クソなリアリズム(現実主義・写実主義・実在論) あまり上品な言葉ではないので、むやみに使わないようにされたし。



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睾丸を解放し、睾丸に面目をあたえよ!

私にいえるのはそれくらいである。


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そうだー!指差し・・?え

…………面目??ひらめき


え、よく意味が分からない🤣


ちゃんと全部読むと何となく分かる。





私は遠藤周作がめちゃくちゃ好きで、

バイブルと化してる本がある程好きなんだけど、

その遠藤周作との

漫才みたいなやり取りとかもあって、

すごい嬉しい本でした。

 




もしかして舌切り雀&佐藤愛子先生?


次に読んでみようかなと









*️⃣破線内太字は
全て佐藤愛子著「楽天道」より引用抜粋








休日の朝(もう昼)に目が覚めたら
カーテンのすき間から薄日が射し込んでいた部屋

庭の手入れしなきゃなぁ
とか
洗濯物片付けなきゃなぁ
とか
思って布団から出られず。。

半珈思惟像が
「寝ていて良い」
と言っている真顔