黒いマントを着た とっても 寂しい男がいました


 それは遠い記憶
 
 何度も転生を繰り返した 

 そんな 記憶の中の物語 1000年前 私は 中世ヨーロッパに生きていたのかもしれない 

 思い出せる7回の人生のうちの最初の一コマだ

 いつも黒いマントを羽織り 目を潰されても 彼は言葉を買うことをやめなかった

 美しい街には美しい名前があり そこに暮らす人たちは また心の美しい人たちであふれている

 その街は空気も水も綺麗で 自らも人々の幸福を願う 花々が咲き乱れている



言葉を買い歩いた詩人  作/ 松尾多聞


 言葉を買い歩いた詩人がいた。

 彼は長い戦乱から逃れるために、幼くして故郷から隣国に預けられたのだ。彼は異国の空にあり、優しかった母を思い、生まれた美しい街に思いを馳せた。それは悲しい叫び。無情の諍いへの葛藤。そして彼は慕情をしたためるうちに、いつか詩人になった。

 ある日、詩人は故郷への船に乗る。戦火に苦悩する人々へ労わりと癒しの言葉を綴り与えようとして。

 美しかった街の荒廃。肉親の離散。人心の錯乱。詩人は目を覆いながらも、既に母国の言語を忘却していたことを知る。

 詩人は言葉を探し歩いた。より深淵で美しい言葉を。そして、全てを奪われ貧困に窮する若者達は、やがて詩人に言葉を売りに来るようになった。

「流浪」・「貧困」・「空虚」・「カオス」
若者たちが叫ぶ言葉を彼は書きとり、わずかばかりの硬貨を渡した。

「永遠」・「普遍」・「生命」・「融和」
彼は感動して若者たちを抱きしめ、心からの涙を流した。

「愛」・「希望」・「夢」・「慈悲」

 このとき彼は生まれてきた意味を知る。しかし、この言葉を購(あがな)うものを彼は持ち合わせてはいなかった。

「愛」・「希望」・「夢」・「慈悲」

 そしてこの言葉を売りに来た若者達へ彼は約束する。この言葉を戦争の当事者である王へ献上することを。そう、彼は彼の命を以ってこの言葉を購(あがな)うことを決めた。

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 降りしきる雨の中、言葉を詩人に渡した貧しい若者達は刑場へ向かう道に列を成し、詩人を見送った。

 口々に若者達が彼に与えた言葉を口ずさみながら。王があらがう彼らの言葉を故郷の大地へ染み込ませるようにして

抗う(あらがう)
① さからう。抵抗する。 「権力に- ・う」 ② 相手の言うことを否定して言い争う ...

 やがて時は流れ いつか戦争は忘れられ、やっと人々に笑顔が戻った。 しかし 詩人の 命の限り戦った 伝説だけは この街に残っていた

そして、、、

 その街には4本の広いストリートが出来ていた。詩人が言葉を買うために歩んだ道である。

「愛の道」・「希望の道」・「夢の道」・「慈悲の道」
そして人々の笑顔が絶えないその街には「詩人の故郷」という意味の素敵な名前がつけられているという。


中部ヨーロッパに生きた 
遠い昔の記憶から / 

自由詩人 松尾多聞

彼は この歌のように 生きていたんだと思う 僕は思い出したんだ


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