公園の入り口に並んだ自転車。
その向こうに野球をしている子供たちが見える。
「あ~いいなぁ。懐かしいなぁ」
こんな情景はリオの住むニューヨークで見ることはできない。
子供が遊ぶには、プレーデートと言って、親同士が事前に連絡を取り、どちらかの家に子供を連れていくのが常だ。
日本のように子供たちが勝手にどこかに集まって一緒に遊ぶなんてことはない。
僕は小学生時代、学校から帰るとカバンを放り出した手でグローブとバットをつかみ、すぐに近くの公園まで野球をしに行った。
あれから30余年の月日を隔てたにもかかわらず、まだ祖国日本では同じように子供たちが広場で野球をしていることにとても感動した。我が子を体験入学に連れてこなかったら、リオはこういう体験を決してすることができなかった。
「リオ、王将に食べに行くから、これが最後の打席やぞ」
「は~い」
その直後、リオはさく越えのホームランを打った。
「ボール、どこや?」
「あの家の方に行った」
「あ~あ」
さく越しにボールの行方をうかがう子供たち。
僕が何度も体験した幼い日々のひとコマが、自分の息子の目の前で繰り広げられている。
ボールの持ち主にボール代を払って、リオと僕は公園を後にした。
「これが本当のサヨナラホームランだね」と、リオは楽しそうに言った。
王将に行って、おなか一杯になって家に帰ってきた。
夜、寝床に横になって電気を消した。
「おやすみ」と言うと、
「お父さん。今日、今まで日本に来て一番良かった日だったよ」とリオが言った。
「そう?」
「うん。さよならホームランを打って、王将で餃子を食べたから。楽しいことが二つもあった」
「そう。よかったなぁ」
アメリカの友達がもう夏休みを楽しんでいるのに、日本の学校で勉強をしなければならないのがあまり好きでないリオの口から、こんな台詞を聞くとは思わなかった。
僕は目頭が熱くなった。
リオの頭を撫ぜようと暗闇の中、彼に寄ると、リオはすでに寝息を立てていた。
僕はリオを起こさないように優しく彼の頭を撫ぜた。
Takaya
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