(前号からのつづき)
目の前にそびえる屋根を前に僕の闘志は燃え上がった。
頭の中で響く「ミッション・インポッシブル」のテーマソング
はい、みなさんも頭の中で響かせてください。
ラッラッ
ドーレ、ラッラッソーミ X 2
よ~し、のってきた、のってきたぁ~!
が、足を屋根に乗せると、ズルッ。
やばい。
靴の底が45度傾斜の屋根にしっかり接していないので、どうしてもすべる。
そうだ、後ろ向きに登ってみよう。
やった。滑らない。
ズズッ。
あ、あんまり滑らない。
足全体に体重を乗せるよりも、かかとの上にケツを乗せるようにすると、更に滑りにくくなった。
じりっ、じりっと僕はかたつむりのように登って行った。
ようやく煙突に手が触れた。
あともう少しで向こう側に手を掛けることができるところまできた。
体をねじって手をのばす。
ズズッとまた滑った。
さっきより怖い。
ここまで来たのを後悔し始める。
気を落ち着けてもう一度下に向き直り、5センチずつ後ろ向きに上った。
もう一度手を伸ばすと、しっかりと煙突の角に手が掛かった。
そろ~っと立ち上がる。
よっしゃ~!
見よ、後光の射す主夫の雄姿を!
僕は今、自分が映画「ゴースト ニューヨークの幻」のラストシーンで天に召されるパトリック・スウェイジのように、光り輝く存在となって下界で見守る双子達の心の中に永遠に生き続けるだろう事を確信した。
「お父さ~ん」とリオが叫んだ。
「お~い」と、僕は余裕たっぷりに手を振った。
「僕、ウンチ~」と言うや否や、リオは家の中に駆け込んだ。
「お父さん、心配しないで~。ジーニィはウンチしなくてもいいから~」と大声で娘が声援を送ってくれた。
僕は彼女の便秘を神に感謝した。
さて、仕事に戻ろう。
煙突の付け根の裏側を見ても特に別状は発見できなかった。
う~、一体、何の為に苦労してここまで登って来たのか。
折角なので、僕は眺望をもう一度楽しんだ。
う~ん。宇宙から地球を見ると、このように見えるのだろうか?(んなアホな)
帰りにロープを少し使ったが、これに捕まって体重を預けると、靴に掛かる荷重が低下し、滑ってしまう。結局、ロープも外して、行きしと同じようにしゃがみながらゆっくり慎重に下りた。平坦な大地の感触が嬉しかった。
あ~、疲れた。
徒労という文字が頭に浮かびかけた時、ジーニィとリオが僕の手から赤いボールを奪い取った。
無邪気に戯れる双子を見ていたら、怪我をしなくて本当に良かったと思い直した。
Takaya
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