こんな物を買った。
家庭用バリカンセット。
この櫛のようなアタッチメントで髪の毛の長さを調節する。
ここ2,3週間程リオが散髪に行きたいと言っていたが、なかなか都合が合わずに先延ばしにしていた。近所の店でたまたま見つけて、「お、これに決めた!」と即購入。
お値段は$30。
リオの散髪は一回$15。2回やれば元が取れる。
楽勝、楽勝。
これから何が起こるかのも知らず、「まな板の上のコイ」のリオ。
「心配するな。お父さんを信じろ」
「うん」
「よっしゃ、始めるぞ」
スイッチオン。ブィ~ンという音とともに振動が手に伝わって来る。
大丈夫かな~と心配になったが、まあどうせリオの頭だし。
えいっと気合を入れて、うなじから上向きにバリカンを這わせた。
ジョリジョリジョリという不気味な音を立てたと思うと、くしの様なアタッチメントの歯の間からモコモコと毛が湧き出てきた。
うわ~っ。
ちょっと一息。
現状分析。
あら~っ。長さがバラバラ。変に真ん中だけえぐられたように刈られている。
しかし、もう後戻りはできない。
父の逡巡を察してか、リオが聞いた。
「どう、お父さん?」
「お~、順調、順調。うまいこと切れるわ、これ」と無責任に答える。
そう言えば、中学の時、母と姉に両側から同時に散髪をされて、一方は耳の上、もう一方は耳の下で切られて、ギャーギャー泣いた事を思い出した。僕は耳を出したくなかったので、結局、翌日、そのままで学校に行き、クラスメートの嘲笑の的となったのは言うまでもない。更に悪い事に、その日は高校に提出する願書用の写真撮影があり、僕は「片耳出し」の段違いカットのままで臨む事を余儀なくされた。
リオの後頭部を何度もバリカンで撫ぜて、ようやく形がついてきた。
今度は前髪だ。
彼はちょっとひさしを作りたいと言ったが、長さをコントロールする事ができず、バリカンはブルドーザーのごとく髪の毛を蹴散らしていった。
ぶぶっ。
何のデザイン意図も感じないヘアカット。
あとは、適当にはさみで揃えて、おしまい。
「こんでええやろ?」とリオに聞くと、
「うん」と快い返事。
あ~、よかった。
ふと下に目を落とすと、
床屋の床があった。
ほうきで掃いて、掃除機を掛けた。
あ~しんど。
これで$15とは、床屋も楽じゃない。
Takaya
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