換気扇を回してコロッケを揚げていたので、リオが何を言っているかわからなかった。
「お父さん!ジーニィが僕の悪口を書いた~!」と、大声でリオが繰り返す。
ちらっとテーブルの方を見やると、ジーニィは真面目に宿題をしている。
「リオ、お前も集中して勉強せい!」
おっ、コロッケが浮いてきた。
オーブンの中のブリはそろそろ焼ける頃。
コンロの上では、煮たった照り焼きのタレが濃度を増している。
リオの相手をしていたら、コロッケは破裂、ブリは黒焦げ、タレは飴板になってしまう。
ややあって、
「リオ、返せ!」と、突然ジーニィが叫んだ。
「ほら、見て」と言って、リオが僕にぶつかって来た。
「こら、揚げもんしてる時に、危ないやろ!」
「これ、これ」と、リオが紙を私の鼻先に突きつけた。
「Leo is as loud as thunder.(リオは雷と同じくらいうるさい)」と書いてある。
「ジーニィ、何、これ?」
「Similie(比喩)の宿題」
僕は紙をジーニィに返して、リオに言った。
「ええやないか。お前、ほんまにうるさいんやから。それより、もうすぐ晩飯できるから、机の上、片付けて」
ジーニィとリオは本やノートを片付けながら、口論を続けた。
「ジーニィ、悪口を言ったから、僕に25セント払えよ」
「イヤ~。私は宿題をやってただけよ。お父さんも何も言わなかったでしょ」
「ジーニィのおならの方がもっとうるさ~い」
「黙れ、リオ!」
笑いながら逃げるリオをジーニィが般若のような形相で追い回す。
コロッケが食卓に乗った途端、二人は喧嘩をやめて食べ始めた。
先程までの喧噪が嘘のよう。
ベッツィーも席に着いて、一家四人の夕食。
食事が終わって、リオはテレビゲームをしに別の部屋へ行った。
ベッツィーも休憩に二階へ上がった。
僕はキッチンに戻って後片付け。
ふと見ると、ジーニィがさっきの宿題の続きを一人で黙々とやっている。
「ジーニィ、それ、いつ提出?」
「明日」
ジーニィは机から顔も上げずに答えた。
「そう、頑張ってるなあ」
片付けが終わって、宿題の進行具合を覗いてみた。
「彼(リオ)の部屋はPigsty(豚箱の様に不潔で乱雑な場所)みたいだ」と書いてあった。
彼女は先程の恨みをせっせとこの一コマに叩きつけていたのだ。
散らばったおもちゃを表す赤、青、黒、緑の点の多さに、怨念の深さを感じ取った。
ジーニィはじっと手元を見つめたまま、静かに作業を続けている。
僕はなるべく音を立てずにその場を離れた。
Takaya
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