木奥内志(キオク ナイシ)は、母親のバッグから記憶対策ヨーグルトの空の容器を見つける。
何でこんな空の容器をバッグに……?
怪訝(ケゲン)に思いながら裏側を見る。
ーー記憶力とは、見たり聞いたりした内容を記憶し、思い出す力のことです。
「んなこと知ってるわ!」
つい声に出してツッコんでしまった!
おっと……
慌てて口を押さえると、続きを読む。
ーー封を開けましたらヨーグルトなので一気に飲み干して下さい。
二十歳前後の記憶力まで回復します。
ただしあまりに最近の情報ばかりを取り入れ過ぎると昔の記憶が徐々に消えていきますので、
新しい情報を過度に取り入れないように注意して下さい。
「ええっ⁉️」
内志は読み終えるとゾッとした。
やっぱり、あの尋常な記憶力に対して代償があるじゃないか……
内志は嫌な予感しかない。
ちゃんと母ちゃん本人に言わないと……
今はぐっすり眠っている。
うん、明日にしよう。
内志は軽く考えた。
翌朝、
「母ちゃん起きたか?」
内志は東側の部屋まで再びやってくると、母親の利翼に声をかけた。
「ああ、おはよう、どうしたの? こんな朝早くから……」
朝の6時前だった。
「うん、話があって」
「どんな? まさか……出ていくとか言うんじゃないよね?」
「まさか、違う違うよ、その自販機で出たヨーグルトのことだよ」
「あーそれがどうかした?」
「うん、容器の裏側、ちゃんと母ちゃん自身は読んだ?」
すると、
「……字が細かくてあまり読んでないわ」
やはり利翼は飲んだだけで注意事項を読んでいなかった。
「じゃあ、何でバッグの中に大事そうに入っていたんだよ」
「え!? そう、何で入れちまったかね?」
「こっちが聞きたいよ、とにかく良く聞けよ。
新しい情報は次から次へ詰め込むなよ? 詰め込むと昔の記憶から消えていくらしいんだ、だから……」
「昔の記憶ってどういうことよ? こんなに記憶力が良くなっているっていうのに、何深刻な顔してんのよ~~、大丈夫よ~~」
いきなり内志は利翼から背中を叩かれた。
「いって~~、止めろよ」
「話はそれだけ? もういい? 仕事に遅れるよ」
「え、まだ大丈……ちょっ、おい、まだ話が……」
なんと利翼は息子の内志を有無を言わさず追い出してしまい……
内志はとりあえず、一旦妥協して西側の部屋へ戻っていった。
続き

