「え、空徐君、付き合うことオッケーしたの?」
一応、房家天乃は矢張李々佳に確かめる。
「うん、いいってー」
あっさり李々佳は答えた。
「何で今頃、オッケーしたんだろう?」
思わず天乃は口に出してしまっていた。
「本当に彼女と別れたみたいだよ」
李々佳はあっさり答えた。
空徐伊湾が正直に話したらしい。
「え? 今頃?」
ヤバくね? 天乃の心の中はそんな気持ちでいっぱいだ。
「……私が言うのもなんだけど、やめた方がいいんじゃない? もうすぐ40になる男が女と別れるなんて……」
つい天乃は反対してしまう。
しかし、
「天ちゃんまでそう言うの? 確かに他の人もそう言ってたけど……」
いじけ気味になる。
そりゃあ、そうだろう。
う~~ん、恋は盲目、不倫している人もこんな感じなんだろうか?
「まーいいわ、どちらにしろ、李々佳には徐々に好きになるっていうことがほぼ皆無だから、でも今回は待っていないで自分からいかないとね」
「判ってるよ~~」
40になっても中身はJKな李々佳。
それでも、ついつい見捨てずにきてしまった腐れ縁。
「じゃあ、毎日電話出来る?」
「毎日は……しないと思う」
「ダメ、しないと、どうせ向こうは電話してくれないんだから、
いい? 毎日、ほんの5分でもいいの、してみな、その内に李々佳から電話が来るのを楽しみに待つようになるから……」
「判った……」
しかし、李々佳には経験も実績もなかった。
李々佳が伊湾に電話をする。
5分で切れず、ダラダラダラダラと30分以上は話をしてしまう。
長く話してしまうので、次の日はしない。
2日ぐらい空いてまた電話するとまたダラダラ長電話してしまう微妙なことになる。
伊湾は伊湾で、
「何?」
と必ず聞いてくるし、矢張さんとか李々佳さんとか名前で呼ばず、絶対“あんたさん”と呼ぶ。
それらの報告もされる天乃は聞いてて、イラだちを覚えていた。
「ちょっと! どうして毎日電話しないの? そしてダラダラ話をしないの! ちょっと会話してまたね~~てすればいいのに、どうして出来ないの?」
天乃はイラつく。
『天ちゃんは出来るけど、わたしは出来ないの!』
「はあ~~!?」
あきれるしかなかった。
これだから頑固者な上、一方通行女で高齢処女の恋愛未経験者は……
しかもそこに自分に(李々佳)気がない男で、とてつもなくハードルが高過ぎだ。(本当は恋愛不適合者)
天乃は気を取り直し、
「じゃあ、今度はデートに誘おう。
食事だけで誘うのは大変だから好みの映画とか誘ってみな、映画中は会話とかいちいち気にしなくていいからさ」
別のアドバイスをする。
『……判った、やってみる』
今度は天乃に素直に従い、前売り券を2枚買って万全の体制で誘う李々佳。
すると、いいよと伊湾は承諾したらしい。
が、
いつも土日の休みは朝寝坊な上、車を構ったりするので、お昼頃の映画を観るはめになっていて……
夕飯まではきっちり帰ってしまい、半日以上一緒にいたことがないという……
その報告まで聞くと、
「何で?」
聞いていると、やっぱりイライラしてしまう天乃がいた。
そんな具合なので、天乃のグチつぼと苦情袋は今のところ全く使う気配は無いままでいた。
続き
