クルーズ客船とは
乗客に船旅(クルーズ)を提供するための旅客船である。巡航客船とも言う。

宿泊設備を持つことは勿論、レストランやバー、フィットネスクラブやプールなどの設備を備え、 サービス要員や医師・看護師なども乗船しており、長期間の船旅を楽しめるようになっている。

なお海洋を航行するクルーズ客船が人気だが、クルーズ客船による河川クルーズ(リバークルーズ)のドナウ川クルーズ、長江クルーズなども人気である。

歴史など
元々は荒天が多く旅客需要が低下する冬期、旅客船が定期航路における運航を休止しがちな事から、これを活用して温暖地域への巡航サービスが企画されるようになったのが始まりである。

その最初は、イギリスのP&O創立者の一人であるアーサー・アンダーソン(Arthur_Anderson_(businessman))が、1836年にシェトランドの地方新聞の創刊号に、シェトランド発着でフェロー諸島・アイスランドといった北大西洋方面を周遊する航海のアイデアを架空の広告という形で掲載したことに始ま。

その後P&Oが1844年にイギリスからアレクサンドリアへの航路と地中海方面への支線航路の定期船を用いる周遊券の形式で地中海クルーズ商品を開始した事例に遡る。

1867年にはアメリカ合衆国・ニューヨークのキリスト教会が中心となり、ニューヨーク発着でヨーロッパを経由し、中近東のキリスト教聖地巡礼を行う165日間の航海を実施して観光クルーズの先駆けとなり、航海の様子はマーク・トウェインにより「地中海遊覧記」として著された。

1891年にはドイツ国(ドイツ帝国)のハンブルク・アメリカ・ライン社(ハパック/ハパグ 現ハパックロイド)が同社中興の祖であるアルベルト・バリーンの企画で、400名以上の船客を乗せての地中海クルーズを成功させ、大衆クルーズの先駆となった。

ハパックではバリーンの企画によって1900年には4,500トンクラスのクルーズ専用船「プリッツェリン・ヴィクトリア・ルイーズ」(Prinzessin Victoria Luise)も建造、就航させている。

パナマ運河やスエズ運河の完成により世界一周のコースも開拓され、1922年11月から翌年3月にかけアメリカン・エキスプレスのチャーターによりニューヨーク発着でキュナード・ライン「ラコニア」を用いて初の世界一周クルーズが行われた。

クルーズ運航は、このように大手海運会社の閑散期経営対策として19世紀から20世紀前半にかけて定着し、また一方では、中・小型の旧式客船をクルーズ向けに改装した客船により、アメリカ東海岸からのカリブ海方面クルーズの普及などで大衆化も進んでいった。

第二次世界大戦後、大西洋横断航路に代表される大型長距離客船が、1950年代に起きた急激な航空機の発達(ジェット旅客機の実用化と普及)でその本来の役割を終えると、大手海運会社は貨物輸送に経営比重を移す一方で、既存の大型客船を通年にわたりクルーズ船として運航し、新たな収益手段として活用するようになった。

その過程では当初、かつて主要航路で運航された有名客船が多く改装・転用される事例が見られたが、大陸間を高速巡航で結ぶ往年のオーシャン・ライナーと、速度を重要としない「浮かぶ豪華ホテル、リゾート」としてのクルーズ船の性格は相違することから、新たに建造されるクルーズ船は速度よりも快適性や収容能力を追求する目的で、オーシャン・ライナーよりも経済性重視の、低速、かつ大型な、古典的客船とは異質な船形に変貌していった。

20世紀末期からは、カーニバル・コーポレーション(1972年創立)などを代表とする、大規模資本を投入したクルーズ船専業海運会社が、10万トンを超える巨大クルーズ船を複数建造・運航するようになり、そのバリエーションも多彩なものとなっている。
2020年、2019新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、クルーズ客船は軒並み運航停止に追い込まれた。
2020年5月時点でアメリカ合衆国領海内で投錨しているのは23隻、港に停泊中のものは24隻、領海内を移動しているものは44隻となっている。

区分
クルーズ客船は、そのサービス内容と価格帯により、次の3クラスに区分される。
クラス分けは、一つ一つの船についてではなく、「クルーズ会社」について判定される。
これは、その会社が運航する船は、どれも同等のサービスを提供することが通常だからである。
しかしながら実際問題として、同じ運航会社でも船毎により差は生じるわけであり、個別船のランク付けについては、ダグラス・ワードによるベルリッツ・クルーズガイドも参考となる。
なお日本でクルーズ客船の利用が一般的でなかった時代には、「豪華客船」などと呼ばれ、旅行代金も高額商品の典型のようにイメージされることが多かったが、実際には、日本のリゾートホテルと比べても割安な泊単価設定の船から一泊あたりかなり高価な船まで、サービス内容も比較的簡素な内容の船から、富裕層をターゲットとしたラグジュアリーなサービスの船まで、様々なクルーズ客船が存在する。