水彩画(佐々木泰明)
日本の水彩画
日本には、大和絵、肉筆浮世絵など版画以外で長い絵画の歴史がある。

 

 

油彩を含めた西洋の絵画が伝わると、日本に従来あった技法を踏まえた国産絵画は日本画と呼ばれるようになった。


 

水彩画は幕末から明治初期にかけて伝わり、明治30年代後半に大きなブームとなった。みづゑ(水絵)とも呼ばれた。


 

普及に大きな貢献をした画家・大下藤次郎は明治34年(1901年)に入門書『水彩画之栞』を刊行してベストセラーとなり、明治38年(1905年)には専門雑誌『みづゑ』(美術出版社)を創刊した。


 

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道具 水彩絵具

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固形水彩絵具
水彩絵具は、透明水彩絵具(ウォーターカラー)と不透明水彩絵具(ガッシュ)に分類される。


 

形態別にはチューブや瓶入りの練り絵具と固形絵具があり、固形絵具には半乾燥させたパンカラー(キャラメルカラー)と乾燥粉末を固めたケーキカラーがある。


 

透明水彩・不透明水彩ともに、主原料は顔料と展色材であるアカシア樹脂(アラビアガム)で、そのほか保湿剤や防腐剤などを含む。


 

伝統的製法では保湿剤として蜂蜜や水飴が使われるが、産業革命以後に工業的に生産されるようになってからはグリセリンが広く使われている。


 

保湿剤の助けにより、アラビアガムは固化しても再度水に溶け出すため、水彩絵具は乾燥後も再使用できる。


 

透明水彩はアラビアガムを多めに含むことで、分散する顔料の隙間から支持体(紙など)の色が透け、薄い塗りに適する。


 

不透明水彩は顔料と増粘剤を多めに含むことで、支持体の色を覆い隠し、厚い塗りに適する。見た目にも透明水彩は光沢を帯び、不透明水彩は艶消しになる。


 

屈折率の高い油に一貫して覆われる油絵具とは異なり、水彩絵具は水を溶媒とする都合から、着色顔料と展色材との屈折率の一致がもたらす透明性は利用されていない。



 

ただし高い屈折率を持つ白を混ぜることで不透明感を強化する技法は、古典的なガッシュ(ボディーカラーとも呼ばれる)の処方として使われてきた。


 

一般的に単に水彩と言った場合は透明水彩を指すことが多く、不透明水彩はガッシュ(グワッシュ)と呼ばれ、技法上も異なる発展をしてきたが、併用は珍しくない。


 

商業美術用のポスターカラーや日本の学童用水彩絵具も不透明水彩に分類されるが、これらは作品の長期保存を考慮した専門家用絵具とは異なり、より安価な顔料、体質顔料、アラビアガムの代替であるデキストリンを多く使用する。


 

また日本の学童用水彩絵具は濃く使うと不透明、薄めると透明性を呈する中間的な性質に調製されており、半透明水彩絵具とも呼ばれる。


 

水彩画の保存性は、絵具のみならず支持体や額装も含めて考慮されるべきだが、水彩画の耐光性は決して高くなく、美術館の展示では50ルクス・3000時間/年程度の制限照度が推奨される(油画は150〜200ルクス・3000時間/年程度)。


 

専門家用絵具では色ごとの使用顔料と耐光性等級の表示が慣例であり、ASTM D5067/D5724には品質・表示の規格が定められている。


 

水彩絵具に使われる顔料は、鉱物などを原料とする無機顔料と、石油など有機化合物を原料とする有機顔料に大別され、一般的には有機顔料の耐光性は劣る傾向がある。




しかしながら伝統的な無機顔料には重金属を含むものが多くあることもあり、高堅牢性を備えた新しい高級有機顔料の利用・開発が進んでいる。


 

また褪色の原因にもなる酸などの汚染ガスに対しては、展色材のアラビアガムが多少の保護効果を持っていると考えられている。


 

メーカーにより、絵の具の粒子が粗いあるいは細かい、同じ色名でもヒューやチント(代替顔料)を中心として顔料が異なる、同じく色味も異なる、耐光性や発色性など特長が存在し、用途により様々なメーカー製のものを利用することもある。


 

国内メーカーではホルベイン、クサカベ、HARUZO、まっち、ターナー等、海外メーカーではウィンザーニュートン、シュミンケ、ダニエルスミス、ペリカン等が知られている。


 


水彩筆に使われる獣毛の種類は、イタチやリス、ウシ、ウマ、豚など、それ以外の素材ではナイロン製など多数存在する。


 

近年ではナイロンに特殊な加工を施し、動物毛に近づけたものも売られている。特にイタチやリス毛を用いた筆が適するとされている。


 

イタチやテンの毛で最高級のものをコリンスキーと呼ぶ。費用対効果が高いとは言えないが、素晴らしい効果を上げる。フランスの「ラファエル」や英国のウィンザーニュートンのシリーズ7などの評価が高い。


 

短軸の筆が「水彩用」として販売されているが、制作の現場では長軸の筆が使用されることもある。油彩筆の中でも水彩に適するものもある。


 

ただ油彩筆でも豚毛は硬くて腰があるので紙を痛める危険性があるので、使うのを避けたほうが望ましい。


 

ただし、豚毛の水彩筆も存在するのと、表現の技法によりその限りではない。マングース筆を使う人もいるが、豚よりは軟らかくても使用は避けたほうがいい。


 


水彩用の紙は、一般には水彩紙と呼ばれる専用の紙を使う。不透明水彩では製図用のケント紙なども使われる。

 

極端な例では吸水性がよい紙で水墨画風に描ける紙も存在する。水彩画法では微妙なぼかしをするために、描画前に紙を濡らして描くこともある。

その他、キャンバスに水張りしたもの、ブロック状のもの、ボード状のものなどが用いられる。薄手の用紙だと反り返ってしまい描きにくい場合には、300グラム程度の厚さの紙を用いるとよい。アルシュ、ウォーターフォード、ストラスモア、ラングトン、ワトソン等が知られている。


原料はコットン(木綿)、パルプが多い。中には竹やガラスを原料としたものもある。今はあまりないが、布くずを原料としたラグを原料とした紙もあって最高品質で耐久性が非常に高い。

それぞれに特徴を備えており、コットンは乾きにくい(保水性が最高)、パルプは乾きやすいといった性質を備える。

当然の事ながら、絵の具と同じく絵の質感が左右される重要な画材である。そのために目的にあったものを選ばなければならない。



 

例えば製造者によりボタニカルアート向けなどがある。紙の色もナチュラルホワイトやホワイトなどが存在し、透明水彩では紙地の色が絵の具を超えて透過する事が多いためその差が大きく出ることもある。

紙は基本的に細目、中目、荒目と表面が区分され、さらに紙の厚さにより300g等と分けられる。例えば荒目は絵の具の乾きが遅いため滲みやぼかしの技法に向く、細目は紙の目が邪魔にならないので緻密な絵に向く、中目はどの技法もある程度無難にこなせるため初心者向きなどの特長が存在する。

他にも吸水性がよい紙、極端なものでは弾き気味の紙等特徴を備えているものもある。紙は個人個人の表現の差が現れるため重要であるが、結局は表現の方法や使用する技法、人の好みであるため使用される紙は多種多様である。