変化朝顔の形のひみつ其の2
仁田坂 英二(九州大学大学院理学研究院生物科学部門 講師)



 

矮性の変異である、「木立」は古くから知られている変異で、まだ遺伝子は分かっていませんが、渦と同じように植物ホルモン関連の遺伝子の変異だと考えられています。


 

 

↑ 青打込弱渦柳葉青采咲 ↓

 

 

つるが上に向かわないだけでなく、支柱に巻き付かない「枝垂」も、江戸期には記録はなく、戦後初めて見つかった変異です。

重力を感受し、蔓の旋回運動に関わる内皮細胞層がなくなっているため、蔓が枝垂れてしまうことが明らかになっています。


 

 

↑ 青縮緬立田雨龍葉紅車咲 ↓

 

 

 

獅子は変化朝顔の花形です。文化文政期には既に「乱獅子」として記載されていますが、この時期の単純な獅子はタネのできる正木でした。


 

 

↑ 青斑入り海松葉茶細切采咲牡丹 ↓

 

 

 

その後、獅子を強める、「打込」や「管弁化」変異が加わり、芸の整った獅子が選抜された結果、現在我々が目にする風鈴や管弁状の花弁をつける獅子になり、タネができない出物になりました。


 

 

↑ 青斑入笹葉茶覆輪車絞切咲牡丹 ↓

 

 

獅子で壊れている遺伝子は花弁や葉の裏側を規定する遺伝子で、裏側が無くなるとそこが表側の組織と置き換わってしまいます。

 


本来、表側の組織と裏側の組織を貼り合わせることで平面になるのですが、両面が表の組織を貼り合わさると引き攣れが生じて、強く抱えた葉や筒状の花弁になってしまうのでしょう。

他にも「笹」も裏側の組織を規定する遺伝子、逆に「南天」は表側の組織を規定している遺伝子に変
異があることが明らかになりました。



 

 

↑ 黄握爪龍葉紫総風鈴獅子咲牡丹 ↓

 

 

「立田」、「柳」、「細柳」はいずれも同じ遺伝子の変異ですが、これは横幅方向の細胞の分裂を制御している遺伝子で、これが壊れると葉や花弁の幅が細くなってしまうのです。
 


さらに横幅方向を決める「柳」と裏側や表側を決める「笹」または「南天」と組み合わせると糸のような葉や花弁になってしまいます。


 

このように、愛好家はより変わった形を追い求める過程で、意図せずに最も有効な変異の組み合わせを持つ変朝顔を残してきたようです。