変化朝顔の形のひみつ
仁田坂 英二(九州大学大学院理学研究院生物科学部門 講師)
↑ 黄握爪龍葉紅総風鈴獅子咲牡丹 ↓
変化朝顔は花や葉の形に関わる遺伝子の変異が複合したアサガオです。
今から200年ほど前の、江戸時代、文化文政期に数多くの変わった色や形のアサガオ(突然変異体)が見つかり保存されました。

↑ 黄握爪龍葉紅総風鈴獅子咲牡丹 ↓
その後、昆虫によって交雑した多重変異体や新しい変異が加わった、より変わった形のアサガオが見出され、嘉永安政期のブームの頃には、既にアサガオに見えないような変化朝顔が観賞されていました。

↑ 黄握爪龍葉瑠璃風鈴獅子咲牡丹 ↓
明治・大正以降の第三次ブームでは、観賞するアサガオのジャンルが4つに絞られ、人工交配も駆使して、高度に洗練された系統の育成が進んだ一方、「桐」や「手長牡丹」のように顧みられなくなり、失われた変異もありました。

↑ 黄握爪龍葉瑠璃風鈴獅子咲牡丹 ↓
アサガオの形を支配している遺伝子の研究も少しずつ進んでおり、何故あのような不思議な形をしているのか、遺伝子レベルで理解できるようになってきました。
花の器官を作る遺伝子についてはシロイヌナズナやキンギョソウで A、B、C の3つの遺伝子(群)が関わるモデルが提唱されていて、アサガオにも同様の変異が存在します。

↑ 青水晶斑入弱渦葉淡藤爪覆輪丸咲牡丹 ↓
「八重咲」や「牡丹」はいずれも同じ C遺伝子と呼ばれる、雄しべと雌しべを作る遺伝子の変異です。この遺伝子が少し壊れると、雄しべが花弁化した八重咲になり、完全に壊れると雄しべが花弁に、雌しべがガクに変化してしまいます。

↑ 青水晶斑入弱渦葉淡藤爪覆輪丸咲牡丹 ↓
八重咲はタネを結ぶ正木ですので、こちらが先に保存され、これが変化してより強い牡丹が生じたことが遺伝子の構造から分かりました。

↑ 黄弱渦柳葉白撫子采咲 ↓
B遺伝子に相当する変異はアサガオの長い歴史の中でも見つかっていませんでしたが、2005年に歴博で初めて見つかりました。

↑ 黄弱渦柳葉白撫子采咲 ↓
牡丹との2重変異体はガクだけからなる異様な花を付け、花弁がないため、しおれることなく成長を続け、次第にガクの枚数が増えて盛り上がってきます。

↑ 黄抱常葉紫丸咲牡丹 ↓
アサガオには蔓の性質に関しても色々な変異が存在し、これらの変異の原因も次第に明らかになっています。「渦」は古くから知られた変異でしたが、2016 年のゲノム解読にと
もなって初めて原因となる遺伝子が明らかになりました。「桔梗渦」と同様に、植物ホルモン(ブラシノステロイド)作る遺伝子が壊れたため、あのように濃い緑色の葉の萎縮した姿になり、桔梗渦と渦の2重変異体ではホルモンがほとんど無くなるため、非常に小さく詰まった形の「渦小人」になります。

↑ 黄抱常葉紫丸咲牡丹 ↓










