日本のマングローブ
鹿児島県種子島西之表市の湊川河口が自然分布でのマングローブの世界的に北限に位置し、メヒルギのみ生育している。



 

↑ マングローブ(ヤエヤマヒルギ) ↓

 

 

奄美大島最大のマングローブは住用(すみよう)川と役勝(やくがち)川が合流する河口域(奄美市)にあり、奄美群島国立公園の特別保護地区(マングローブ原生林)として保護されている。 

 

なお、マングローブに似た植生として、九州南端の鹿児島市喜入生見町にあるメヒルギ群落が、喜入のリュウキュウコウガイ産地として特別天然記念物に指定されている。しかし、江戸時代に移植されたものとされ、自然分布での北限ではない。


 

↑ マングローブ(メヒルギ) ↓

 

屋久島の栗生川でもメヒルギが生育し、町指定天然記念物として保護されている。伊豆半島ではメヒルギが植樹されており、定着の北限とされる。

 

 

沖縄島(沖縄本島)には、オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ヒルギモドキの4種が生育しており、このうちヒルギモドキは島北部の億首川の河口にしか見られない。



 

ヤエヤマヒルギとヒルギモドキについては、沖縄島が北限である。その他に、島北部東村の慶佐次、南部の漫湖等でマングローブが発達している。

久米島には、オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギの3種が生育している。島東部の儀間川河口に島唯一のマングローブが成立している。


 

↑ 浦内川に架かる浦内橋 遊覧船は上流へ進む ↓

 

 

宮古島には、オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ヒルギダマシの4種が生育しており、このうちヒルギダマシは宮古島が北限である。島北部の島尻にマングローブがある。

石垣島には、オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ヒルギダマシ、ヒルギモドキ、マヤプシキの6種が生育しており、このうちマヤプシキは石垣島が北限である。


 

↑ 川幅も狭まる ↓

 

 

宮良川河口のマングローブが「宮良川のヒルギ林」として国の天然記念物に指定されているほか、島西部の名蔵アンパルにもマングローブが広がり、国指定鳥獣保護区及びラムサール条約登録地になっている。


 

西表島には、マングローブ植物7種が全て生育しており、仲間川や浦内川の河口に広大なマングローブが発達している。

 

特に仲間川のマングローブは、「仲間川天然保護区域」として国の天然記念物に指定されている。


↑ マングローブ(オヒルギ)の花 ↓


 

マングローブの破壊と再生、新生
近年、世界各地でマングローブの破壊が問題になっている。


東南アジアでは、木炭の材料とするための伐採と、海岸沿いの湿地を日本向けのウシエビ(ブラックタイガー)やバナメイエビなどのエビ養殖場とするための開発が主な原因となっている。


 

また、家畜の飼料とするための伐採も行われている。そのため、あちこちでマングローブが消滅しつつある。


 

熱帯雨林の破壊が地球温暖化とのかかわりで問題になったように、マングローブの破壊も同様な問題として注目されるようになった。


 

また、マングローブが海の水質浄化に果たす役割が大きいことが知られるようになり、世界の湿地帯の価値の見直しとも連動し、その意味でも注目を受けつつある。

 

また、2004年のスマトラ島沖地震以降、マングローブによる津波被害の軽減の効果が指摘された。

 

マングローブが自然の防波堤(防潮林)となることで、津波の人への被害の原因となる漂流物体が食い止められるというものである。


スマトラ沖地震で大きな被害を受けた東南アジア諸国では、マングローブの再生への関心が高まっている。

津波発生時以外でもマングローブには海岸線の浸食を防ぐ効果がある。こうした防災や生物多様性での役割を評価して、世界各地でマングローブの再生や植樹による新生が試みられている。

 

 

↑ マングローブ(オヒルギ)の花と種 ↓
 

 

エジプトには35カ所のマングローブ林があり、このうち紅海に面する南部のハマタやシナイ半島南部のシャルム・エル・シェイクなど比較的大規模な4カ所で、エジプト政府が2010年代末から年5万本ペースで植樹を進めている。


 

ビニールハウスで種から60センチメートル程度の苗木に育ててから移植する。紅海対岸のサウジアラビアも1億本の植樹計画を表明している。


 

砂漠が海と接する砂浜でマングローブを形成するためには、枯れ木などを使って水流の影響を弱める柵を作り、群落が少し出来れば、それが波除けとなって次第に面積が広がると言う。


 

日本でもマングローブの浄化作用を利用しようとの目的で、マングローブ林形成を目指す事業が各地で行われている。

沖縄県那覇市の漫湖にはマングローブ林が植樹され、分布範囲が広がっている。しかし、上流からの土砂の流入や生活排水の流入、廃棄物が原因という可能性もあるが、干潟の陸地化や悪臭などの問題も生じている。



 

さらに、伊豆半島の青野川など本州の太平洋岸でもマングローブを育てようとの試みが行われている。これらの地域は、本来の分布域ではなく、そのままでは生育させることが難しい。

そこで、ビニールシート等をかけて保温する方法などもとられているが、自然植生の撹乱であるとの意見もある。


 

ングローブに生息する動物
マングローブは陸地の森林と同じく、様々な動物に対して生息環境を与えている。マングローブの海側は海水の影響を大きく受け、陸側は海水の影響を小さくし、潮位等に勾配が生じる。

また、マングローブの根や幹、枝の広がりなどは多様な空間を創造する。このようにその生息環境は多様である。

マングローブに生息する主要な動物は海産の底生生物(甲殻類や貝類等)や魚類であるが、スナドリネコのような哺乳類、鳥類、昆虫類なども利用している。


 

潮が引いた時には、多数のカニ等の甲殻類が出現する。干潟の近くではシオマネキ類やミナミコメツキガニなどが出現し、森の中にはアシハラガニ類やイワガニ類が多数生息している。

潮が満ちると地面に掘った穴の中にもぐりこんでやり過ごすものが多いが、中には木に登って過ごすものもある。潮が満ちるとガザミやノコギリガザミなど、大型のカニが姿を現す。

貝類では、キバウミニナなどの巻貝、ヒルギシジミ などの二枚貝がいる。これらの多くはマングローブ植物の落葉や種子を食べている。


 

特にマングローブの落葉を直接消費するキバウミニナやある種の大型のカニ類はマングローブ生態系の炭素循環において重要な存在である。

魚類では、干潟や呼吸根の上でミナミトビハゼなどのトビハゼ類が活動し、潮が満ちると他の多くの海水魚も進入する。

木の呼吸根が複雑に入り組んだマングローブ地帯は身を隠すのに都合がよく、アイゴ類やハゼ類など、多くの小魚がみられ、さらにそれらを捕食するフエダイ類やオオウナギなどの大型魚もいる。

大東諸島に生息するダイトウオオコウモリはマングローブを昼間のねぐら場所として利用している。 西表島での調査結果によるとメジロを中心とした鳥類の混群が確認されており、特にメジロはオヒルギの花の蜜を餌としていることも報告されている。

 


 

マングローブ植物そのものを生息場所としている動物もいる。貝類のイロタマキビガイ(英語版)やイワガニ科のヒルギハシリイワガニ などはマングローブ植物の幹や支柱根で生活している。

固着性動物であるフジツボの仲間のシロスジフジツボ(英語版)がヤエヤマヒルギに付着している事例も報告されている。この様な事からマングローブは「命のゆりかご」と呼ばれている。

マングローブの景観や多様な生態系は、エコツーリズムにおいても重要な観光資源となっている。