この3ヵ月の間で、3人のノーベル賞受賞者の方々を取材するという、

極めて贅沢な機会に恵まれた。
​まずは3月。
日本記者クラブにて行われた、

ノーベル賞を受賞された二人の知の巨人たちによる記者会見の取材に出席した。

お一人は、空気中から有用な分子だけを自在に取り出す

「多孔性配位高分子(MOF)」を開発し、

地政学リスクに左右されない持続可能な社会の実現を

熱っぽく語られた京都大学の北川進特別教授(化学賞)。

その画期的な技術は、資源問題を根本から解決する一筋の光だ。


もうお一人は、免疫反応にブレーキをかける「制御性T細胞」を発見し、

がん治療やアレルギー克服への希望を切り拓いた

大阪大学の坂口志文特別栄誉教授(生理学・医学賞)。
民間が先進的な研究を支える土壌そのものが、

「真に『成熟した社会の文化』として根付いてほしい」という、

切実な願いがそこには込められていた。


​そして5月27日、同じく日本記者クラブにて行われた

京都大学の山中伸弥教授による講演へ。
​山中教授が2006年にiPS細胞(人工多能性幹細胞)を発見してから、間もなく20年。
「iPS細胞論文発表から20年〜実用化への歩み〜」と題された講演では、

これまでの驚異的な成果を振り返りつつ、

医療の未来を見据えた展望が深く語られた。
​2012年のノーベル生理学・医学賞受賞から年月を経て、

現在では国内だけで15を超える疾患を対象に

最先端の臨床研究や治験が進行している。
 

山中教授が強調されたのは、

有期雇用が多く長期的な資金獲得が難しい日本の現状において、

山中教授は寄付を募るために自らフルマラソンを走り抜く決意をされた。
「これからも多くの方にお願いし続ける必要がある」と語り、

今なお走り続ける強い意志に、深く胸が熱くなった。

 

今回取材した御三方に共通するのは、

ノーベル賞という人類最高の栄誉を手にしても決しておごることなく、

その技術を「社会実装」するために、

今なお現場の最前線で尽力し続けている姿だ。

 

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エッセイ89話『3人のノーベル賞受賞者たちの美しき未完成の探求、知の巨人が見つめる未来』|TOMOMI SUZUKI A SEED