「二つある」 その弐

 

母が子供の頃に体験した

不思議なお話し・の続きです


 


友だちは小さく口を開けたまま 

じっとその足元を見つめています



「どうしたの?」

と聞いてもただ足元を見つめるばかり

「ねぇどうしたの?」


友だちの日焼けした細い腕が動き 

ゆっくりと指さしたのは

足元から前に伸びる黒い影

 

そして目玉だけギョロリと

夜空の大きな月を見上げました

 


一瞬、母にはなんのことだか

わからず

友だちの様子がおかしいのが 

少し怖くなりました

 



でも、「あっ」

気が付いたのです!

 


前に伸びる黒い影と

その先の空に見える大きな月🌕

 

影は後ろに伸びていなければ

ならないはず・・・


 


その時

友だちの影が揺らぎ 

その手を伸ばしたように見えました

 


母は

足首に何かがサワっと触れたのを

感じましたが怖さのあまり

下を向く事ができません





二人は顔を見合わせ

ゆっくりゆっくり頭だけ後ろに

めぐらせます

 

ギギギと首の骨が軋む音が

聞えたような気がしました

 

そこには

後ろに伸びた黒い影

そして

見上げれば大きな月🌕

 



月が二つある!




ヒィ!と

ふたりは同時に息を呑み

走り出しました

目も合わさず言葉も出さず

ただ走って走って

それぞれの家に帰りブルブルと

震えて朝を迎えたのです



 

次の日に母は鹿児島の実家に帰り

その友だちとは二度と会うことも

ありませんでした


 ※家に帰り着いてからの事は

 あまり覚えていないようです





後日談として

数年前の事、ご縁があり 

この時の母の友達である少女の

姪御さんとお会いする機会があり

 

母は田舎で知り合った少女だと

言っていましたが実は遠い親戚

だった事がわかりました

 

その女性は前年に鹿児島で

亡くなっていた事も知りました

 

お子さんもいらっしゃらず

姪御さんをとても可愛がっていて

彼女も小さな時からこの不思議な

お話を何回も聞かされていた

というのです

 

「叔母はむかしおば様(当時の母)と

いっしょに海に遊びに行ってその時

不思議なことがあった」と

 

「あ!それ月が二つあったお話です    か?」と私

 

「そうです、知ってるんですか?!」

 

あの日以来、二度と会う事はなく

鹿児島と東京でそれぞれの人生を

歩いていた二人でしたが、

その人生の中でこのお話を何度も

語っていた事を知りました

 

 

 

 

母から聞いた不思議なお話です