夏になると思い出す
母が少女だった時の怪異です
(再記)
「二つある」 その壱
母が中学生の時の夏休み
鹿児島の田舎にある親戚の家に
遊びに行った時に起こった
不思議で怖いお話です。
明日は家に帰るという前の日に
仲良くなった地元の少女に誘われ
水着とお弁当だけもって海に遊びに
行くことになりました
長く埃っぽい道をテクテク歩き続け
丘を越えやっと海に着いたのは
もうお昼過ぎでした
木の下でお弁当をひろげ
大きなおむすびにパクついて
バシャバシャとひと泳ぎ
波打ち際でふざけたり
すっかり疲れた二人は砂浜で
横になってぐっすりと眠って
しまいました
やがて二人が目を覚ました時
お日様はすっかり傾き
不思議なことに
あれほど賑わっていた海岸には
家族連れも若者たちも人っ子一人
いなくなっていたのでした
驚いた二人は急いで身支度をして
丘を上り帰り道を急ぎました
「どうして急に誰もいなく
なっちゃったのかしら」
「うん・・・」
友達が急に無口になったの
にはわけがありました
帰り道にはどうしても
通らなければならない
お墓の側の暗い道があるからです
陽が沈むと人っ子一人いない道です
空にはもう大きなお月様が輝き白い道を
そして、それを見上げる母の顔も
明るく照らしていました
お墓の横にさしかかったとき
急に風が吹いて木々がザワザワと
二人を驚かせ
その影もまた少女たちを黙らせます
その時です
並んで歩く友達から
「ハッ」と息をのむ声が聞こえ
横を見ると、
少女は小さく口を開けたまま
じっと自分の足元を見つめているの
でした
ーつづくー


