むかし読んだSF小説に
一年中強い雨が降る星に不時着した
宇宙飛行士のお話しがありました。

 

 

 

 

 

 

不時着して
長い長い月日が流れ、
やっとこの星に 救助船がやって来ました。

 

 

 

 

 

 

「やっと来てくれたんですね

私はこの地球に似た星に不時着でき

可愛い動物もいてくれたので なんとか乗り切れたのです。」

年老いた男はそう言って涙を流し

自分の肩にゆっくり手を置きました。

 

 


救助隊員は驚き
この星にはあなた以外に動物はいない
あなたの肩には何も乗っていないのだ
そしてこの星には緑の植物というものはなく、生えているのは

赤い草木ばかりです
と伝え、
あなたは長いご苦労心労の末
ここを地球のような星なのだと思い込もうとしたのです
本当にお辛かったでしょう
でももう大丈夫です!
さぁ あの宇宙船に乗って帰りましょう
と彼の痩せ細った手をとりました。

 

 

 

 


するとまるで魔法のように

男の目に見えていた緑豊かな森や 

肩に乗った小さくて愛しい生き物が消えてゆき
ただ強い雨が降りしきる一面に赤い
植物が生い茂る風景が広がりました。

 

 


あぁそうだった、ここはそんな星だったのだ
私は幻を作り出し
いつか地球に帰れることを生きがいとしてなんとか生きてきたのだ
でもやっと地球に帰れるんだ!緑豊かな地球に!
男は嬉しそうに叫びました。

 


すると救助隊員は 男を見て少し気の毒そうにこう言ったのです。
「いえ、あなたをお連れするのは地球ではありません。

残念ながら
あなたが地球を出られてからしばらくして
世界規模の核戦争が勃発し

今や植物など一本も生えない荒廃した星なのです。
でもご安心ください!
私たちは脱出して様々な宇宙ステーションで快適に暮らしています。
動物はつれだせず植物もありませんが
食べ物は合成され娯楽もあります。」

 

 


男は目を見開き黙ってその言葉を聞いていましたが、
やがてゆっくりと隊員たちに
背を向け歩き始めました。

赤い茂みに姿を消した男の目には また
陽光に輝く緑の森と青い海が見え
そして肩にはクンクン鳴いている
可愛い生き物の温かな体温を感じて
いました。

 

 

そして、肩に乗る小さな生き物にこう語りかけます。
「地球から迎えにきたらおまえも一緒に帰ろうな
地球はここに似た美しい星だから
おまえもきっと気に入るよ。」
 

 

 

 

 


雨の日に時々思い出すお話です。

このお話のなかでは 私の大好きな雨も
年中降っていて忌まわしい存在
食用となる植物はあるのですが 全てが赤。

止まない雨と赤いだけの風景
なかなか怖い世界ですね。