(琉球放送より)
【沖縄県知事選挙】SNSに広がるデマや中傷にどう向き合うか 宮城・地元紙の取り組み
インターネットを使った選挙運動が解禁されて以降、SNSなどによる情報発信は選挙戦に欠かせないものとなっています。一方で、SNS上では候補者などに対するデマや誹謗中傷が飛び交い、真偽不明の情報があふれています。
2025年、宮城県で行われた選挙では、こうしたSNS上の投稿が選挙戦に大きな影響を与えました。
切り取られ、ひろまる誤情報
今、SNS「X」で「沖縄県知事選」と検索すると、沖縄への誹謗中傷やデマ、根拠不明な投稿が並びます。
「辺野古移設を決めた張本人って玉城デニーじゃねーか」
鳩山総理の辺野古移設回帰を「英断」と評価したとされる投稿。しかし、当時の放送を確認すると沖縄の基地問題を全国に広く知らしめたことに対する発言を切り取ったものであることが確認できました。
玉城デニー衆院議員(当時):
「沖縄の今までの基地のあり方を鳩山総理が全国の皆さんに提起したということでは県民の中にも素晴らしい英断だという、そういう声もあります」
この投稿は1万5000件以上拡散され、いわゆる「バズっている」ことが分かります。コメント欄にはデマだと指摘する投稿も見られるものの、辺野古移設に“賛成していた”ことを前提に、玉城知事を批判するコメントであふれています。
「異様な選挙だった」取材した記者は
現代の選挙戦にSNSは欠かせないツールとなる一方で、候補者への誹謗中傷やデマ、誤情報の拡散といった現象が問題となっています。
現職の村井知事が6選を果たした去年の宮城県知事選挙。SNS上のデマや誹謗中傷がこれまでの選挙戦の景色を一変させました。
TBC東北放送 阿部航介 記者:
「やっぱり異様な選挙だったと振り返って思う。SNSの誹謗中傷が今まで見たことないくらいはびこっていて」
選挙戦は村井知事と、当時、自民党に所属しながら、参政党の全面的な支援を受けるという異例の選挙戦を展開した和田候補との、事実上の一騎打ちとなりました。
街頭演説中に感じた知事の異変
阿部 記者:
「10月9日に選挙戦が始まって最初の週末くらいまでは元気だった。2回目の週末に久々に村井さんの姿を見た時『あ、全然違うじゃないか』と思った」
地元テレビ局、東北放送で選挙取材を担当した阿部記者は、村井知事の街頭演説中にその異変を感じたと振り返ります。
阿部 記者:
「ボソボソと下を向いて喋っているだけ。そのボソボソ喋っている内容を聞いてみると言い訳だった。ネットで誹謗中傷されている内容についての言い訳をずっと喋っている。それにはびっくりした」
「悪行14選」と題しSNSで拡散された画像。村井知事の政策への批判にも見えますが、その多くはデマや根拠不明な情報で「外国人」というキーワードが、誹謗中傷を加熱させるきっかけとなりました。
広がる誤情報に粘り強く取り組んだ新聞社
阿部 記者:
「『水道のみやぎ型管理運営方式』というのがあった。水道のもの(所有権)自体は持ったまま運営の権利を企業に売るという。その企業の中に外資系(企業)が入っていた。そこで“外国”というキーワードがあって」
仙台市に本社を置き、宮城県を中心に東北地方のニュースを伝える河北新報社。県知事選挙期間中に取り組んだ、ある取り組みが注目を集めます。
河北新報 横山勲 記者:
「みやぎ型水道の民間委託というのは、もう始まって3年が経っているし、その前3年もずっと県議会で大もめしていた。だけどそれを知らなかった有権者が、さも今突然始まったかのように捉えてしまって」
県知事選挙を担当した横山記者。「水道事業の運営は外資にお任せ!」などと拡散された情報に対し、県議会の議事録など、公開されている1次情報を洗い直し、導入の経緯や現状について、事実関係を徹底的に調べ直しました。
真偽不明な情報の検証結果をウェブで公開
横山 記者:
「民間委託とは言いつつ、じゃあどこが民間に委託されたのかを改めて整理した。水質のモニタリングは導入前も導入後も県がやっているとか、いわゆる浄水場の運転管理は導入前から民間に委託していたとか。だからここは変わりがないと」
河北新報はSNS上で飛び交う真偽不明な情報について検証した記事を「かほQチェック」と銘打って、ウェブで無料公開しました。
河北新報 瀬川元章 選挙担当デスク(当時):
「結果論になるかもしれないが、無料であっても記事を出すことによって河北新報オンラインの価値が高まるのは間違いないので、それでいいんじゃないのかなと」
特徴的なのは、紙面よりも詳細な記事をウェブで先行公開したことです。紙面には後日、ウェブ記事の概要版を掲載しました。
読者自身が記事の真偽を判断できる工夫
横山 記者:
「新聞紙面でいくら書いても、それはインターネット上の話には届かないわけで。せっかくウェブの方でもさらに紙面より詳しい形で書いてあると。やっぱりインターネット上の話はインターネット上で戦わざるを得ないわけですよ」
「かほQチェック」では、検証記事の根拠となった情報を読者が確認できるように情報のリンクを掲載し、読者自身も記事の内容を検証できるように工夫。さらにファクトチェックに必要な「レーティング」を実施しませんでした。
レーティングとは、検証対象の言説などが正確か不正確か、または誤り、根拠不明などと判定するものです。このレーティングをあえてしないことで、真偽の判断そのものは読者に委ねる形をとったのです。
地元の読者を信じることから
横山 記者:
「逆の立場だったら、例えば私があることを信じ、それを別の人に『君の信じてることは嘘である』『君が間違っている』『訂正しろ』と一方的に言われたら腹が立つと思った。」
「それを河北新報が読者にすることが正しいのかと思って」
「かほQチェック」を提案し、主導した横山記者。宮城県知事選挙への投票権も持たない人たちによって民意がゆがめられてしまうことへの危機感がありました。
横山 記者:
「SNS分析ツールで解析していくと、知事選に関する投稿のかなりの割合が関東圏から発信されていることがわかったり。(宮城県民が)惑わされたら我々悲しい。だから、まず自分たちが読者・視聴者を信じるところから始めないといけないんじゃないかなと」
今後4年間の沖縄のリーダーを決める県知事選の告示まで残りわずか。SNS上にあふれる情報とどう向き合うか。メディアのあり方も問われています。
【沖縄県知事選挙】SNSと選挙 デマや中傷拡散の背景とメディアの課題
SNSで拡散されるデマや誹謗中傷の背景には何があるのか。また、これまで公平性を重視するあまり、選挙期間中の選挙報道が消極的になるという事態に陥ってきたマスメディア。こうしたデマにどう対処していけばいいのか。SNS時代における選挙報道について考えます。
「支那詣で」「売国の舞」飛び交う誹謗中傷
今、SNSで拡散されている、ある投稿があります。中国北京でカチャーシーを踊る玉城知事。元となる動画の投稿は2023年ですがことし7月の新たな投稿が1万3000回以上拡散されています。
「支那詣で」「売国の舞」─。
コメント欄は玉城知事や沖縄への激しい誹謗中傷であふれています。
玉城知事:
「カチャーシーを愚弄するというのは私は県民として、ウチナーンチュとして絶対許せない。あれは県出身の学生たちを激励する場で、お酒のない、昼間の食事会で皆を励まそうと思って踊ったカチャーシーですから。それを愚弄するいわれは毛筋ほどもないです」
SNSで誤情報やデマが拡散される背景について、言論やメディア法に詳しい山田教授はこう解説します。
専修大学 山田健太教授:
「まさに “嘘であるほど真実化する” という状況が生まれている。もう少し詳しく言うと、嘘であればあるほど人気が出てよく拡散もされ、拡散されるとそれがマジョリティになり、マジョリティになるとそれが真実化するという流れが、この2、3年非常に顕著になってきている」
選挙関連は「バズる」
その中でも特に、選挙関連の動画や投稿が「バズる」傾向にあると言います。おととしの兵庫県知事選挙では、対立候補へのデマや中傷、メディア批判がSNS上で激しく飛び交いました。
専修大学 山田健太教授:
「儲かるコンテンツとして、とりわけ選挙期間中に派手な、あるいは刺激的な動画が非常に人気を得て、それが儲かってしまうという流れが出来上がってしまっている」
仙台市に本社を置く河北新報社。兵庫県知事選挙の状況を目の当たりにし、1年後に控える宮城県知事選挙への危機感が募りました。
河北新報 横山勲記者:
「SNS上の、偽・誤情報であったり、個人への誹謗中傷であったりというのが、終わった後すごくクローズアップされたというか。というのを見て、翌年の同じような時期に我々も知事選があると」
実際に選挙戦が始まると、SNS上で誤情報や誹謗中傷が拡散され、現職候補は政策を訴えることよりも、拡散するデマなどへの釈明に追われました。
河北新報 瀬川元章編集部長:
「現場の記者に話を聞くと、めちゃくちゃなことに、めちゃくちゃという言い方がいいのかわからないですけど、カオスですよね、要は」
真偽不明の情報が錯綜するなか、河北新報が取り組んだのが「かほQチェック」でした。
SNS上で広まる言説に対し、公開されている1次情報やこれまで積み重ねてきた取材を基に、経緯や現状を丁寧に調べ直し、立て続けに検証記事を報じました。
これまで、公平性を重視するあまり、選挙期間中に選挙に関する報道が消極的になるというジレンマを抱えていたマスメディア。
特定の候補者にとって不利になる可能性もある記事を選挙期間中に出し続けたことはこれまでの慣習を覆すものでした。
候補者のために報道しているのではない
河北新報 瀬川元章編集部長:
「新聞もテレビも選挙については量的公平を第一に考える、尺だったり文字数だったり行数だったり。なわけですけど、それってやっぱり今振り返って考えると、それが公平なのかと言われるとハテナがいっぱいあって」
河北新報を後押ししたのが、日本新聞協会が1966年に発表した「事実に基づく限り報道や評論は制限されない」とする統一見解でした。
河北新報 瀬川元章編集部長:
「嘘とかでなければ立ち入っても構わないと。結果的に候補者に不利になっても、それは報道の自由の範疇だというような見解があったので、それは理論的なバックボーンにしつつ」
河北新報 横山勲記者:
「選挙報道の公平性って言うじゃないですか。それは誰に対しての公平性っていうことを言ってるのかっていう問題だと思うんですよ。我々、候補者のために報道しているのかと。違うじゃないですか」「従前のいわゆる選挙報道の公平性といった時に、候補者がどう思うかの公平性ばかり考えてたんじゃないかと」
SNS全盛の時代に、その存在意義が厳しく問われているマスメディア。山田教授はテレビや新聞が陥るジレンマの背景を指摘します。
「事実でないもの」を報道することに慣れていないマスコミ
専修大学 山田健太教授:
「今まで報道機関は事実を報道する・ファクトを報道するというのに長けていたわけでして」「なかなか事実でないものを報道するというのは慣れていないということがあると思います」
「この経験不足による慣れがないという問題もあって、事実でないものを報道する、そういう検証報道の手法というのは、これから新たにどんどん開発をしていかなきゃいけない問題」
冒頭の、カチャーシーを踊る玉城知事の動画。2023年に中国でマスクをせずに会食していたことなどが批判されています。県の担当課に確認できた事実はこうです。
訪中したのは2023年7月。河野洋平氏率いる「日本国際貿易促進協会」の訪中団およそ80人とともに、コロナ禍で途絶えた経済交流の再開を中国政府に要請しました。
この年の5月に新型コロナは感染症法上の位置づけが「5類」に引き下げられ、マスクの着用は個人の判断となり、行動の制限もなくなりました。一方で、社会活動の再開に伴い、県内で感染が急拡大していた時期でもあります。カチャーシーを披露した場は現地の県人会との昼食会。出席者は県人会と県職員合わせて20人で、中国側の参加者はいません。カチャーシーは前日に北京の大学を卒業した学生たちへのお祝いと激励を込めたものでした。
それでも、コメント欄には「中国」というキーワードに反応し、沖縄ヘイトともいえる投稿があふれています。
「儲かる」沖縄ヘイト、笑いのネタにも
専修大学 山田健太教授:
「沖縄をある種差別化する、あるいは見下す、あるいはないがしろと言いましょうか、笑いの対象にするという意味合いで、沖縄というのがある種ターゲットになっている」
山田教授は「沖縄ヘイト」がバズりやすく、儲かるコンテンツとなっているだけでなく、“標的”にされていると指摘します。
「もう一つはですね、「遊び」という側面があると思うんですね」「沖縄ヘイト、あるいは沖縄に関連する様々なネット上の言説に関しても、この「遊び」という側面が非常に強いというのが特徴」
告示を前に、SNS上では知事選をめぐる根拠不明な投稿や、誹謗中傷が相次いでいます。沖縄のかじ取りを決めるのは県民自身。情報を見極め、冷静に向き合う姿勢が求められています。
(以上、琉球放送より)
せやろがいおじさんチャンネル「候補者に聞く」
(他候補のインタビューもありますが、事実上の一騎打ちと言われる玉木デニー、古謝げんたのお二人の分だけ載せました)
沖縄タイムスがデマ情報をファクトチェックしています
沖縄タイムスのファクトチェックを動画にしました。よろしければ連絡不要で自由に使って下さい。#玉城デニー#沖縄県知事選挙 https://t.co/ciDoEazunR pic.twitter.com/aLbTgY7Pc8
— 南 (@kirikiri0511jcp) September 1, 2026
「玉城デニーは統一教会とつながりがある」
— アシカガ (@Ashikaga1305) September 1, 2026
デマのファクトチェック動画#玉城デニー#沖縄県知事選 pic.twitter.com/2MJT9tuxxk
コメントをお寄せください。(記事の下の中央「コメント」ボタンを押してください)















