戦い疲れてすっかり野心を失ってしまった。


必要以上に儲けようとは思わない。

億万長者になって、世界一の美女をはべらす的な発想が無くなってしまった。

女も美女に越したことはないが、別にとりわけ美女でなくても良い。


皮肉なもので、すっかりやる気が失せたこの頃になって仕事の受注が増えている。

肩の力が抜けたおかげか、仕事はドンドン良くなる気配。

さらに社員まで増えてしまった。


まるで、男女間の恋愛の駆け引きのよう。

追えば逃げる、逃げれば追ってくる。


常に緊張を強いられて生きていると、この辺の勘どころがドンドン鋭くなる。


理詰で仕事をやるのだが、いよいよ人智を尽くした後は運頼みとなることが多々ある。

そして、来月末の資金繰りが確定していないのに、どうにかなると根拠の無い自信がある場合がある。

これはどうにも説明できない。勘としか表現できない。


やけに右側の側頭に白髪が増えた。右側ばっかり。

勘を司るのは右脳の役割だ。左脳は論理、右脳は感性。

白髪が増えたのは、右脳の酷使の結果か。


でももう、資金繰りで悩むことに疲れきってしまった。

これ以上続けると心も体も持たない。

決して驕ったりしないので、もうそこから開放してくれ。


気がつけば、会社の平均年齢は40を超えている。

主力のスタッフは皆40代後半。

そろそろ出口を考えねばならない。


これからの10年、この会社で僕がやる事は明確だ。

もちろん、会社は存続させるが、オペレーションは転換する。

それぞれのスタッフの出口への準備。

そして、僕がいなくても会社が存続できるようにする。

それがこの会社での僕のゴールだ。


そうすれば、新たな自由が手に入る。