5年間の感謝と、黙殺しきれない不満。
わたしは、どこかで感じていた。
ピアノを習わせてもらえなかった、と恨むお子さんと同じ。
あふれんばかりの、してもらったことを棚に上げて
足りないところを容赦なく突く。
なんて残酷なわたしなんだろう。
はらぺこくんを、絶望させてしまった。
だけど、我慢していたことを
いったんは吐き出してあげないと
優しくなれないんだと思う。
「でも、わたし、はらぺこくんに
すっかり懐いちゃってるでしょう?
はらぺこくんみたいで、一緒に遠くへ行ける人
そんな人、ほんとに見つかるんだろうか?
わたし、絶対すごく寂しくなると思う。」
「はらぺこくんには、わたしのホームになってほしいの。
港みたいな感じ。
いつでも帰れる場所であってほしい。
虫がいいけど。」
「いいよ。
それは全然大丈夫だよ。」
はらぺこくんは、優しい笑顔を
わたしに向けた。
まるで親のように深いはらぺこくんの愛を感じて
わたしは安堵した。
わたしたちは、また手をつなぎあった。
「偶然ゲームで知り合って
こんなにも続いて
なんかご縁があるんだろう。」
「そうだよね。
恋庭で、他にはらぺこくんみたいな人と
会える気が全然しない。
奇跡みたいだよ。」
はらぺこくは、うなずいた。
少し間があって、彼は口を開いた。
「これから、どうする?」
限りなくまろやかな、はらぺこくんの手は
わたしの決心を揺さぶるのだった。
「はらぺこくんの9月の誕生日は
ちゃんとお祝いするよ!」
「そんな先?」
「いや、その前も会うよ!
いきなり離れるのは耐えられないでしょ?
だから、8月はファイナル月間にしようと思って!
まずやりたいのはね
スマホの写真をいっしょに見るの!!
現在から、少しずつ遡って
ああ、こんなことあったなあって。
最後は一番始まりにたどりつくの。よくない?」
はらぺこくんは、苦笑して聞いていた。
「それから、思い出の場所を
いっぱい訪れよう。
夜の公園とか、いつも行く居酒屋とか。」
「いいかもしんないね。」
「恋庭も続けるよ。
あれは、絶対やめたくないの。
はらぺこくんと出会った場所だから。
あそこで話す、はらぺこくんがすごく好きなの。
内容も、アバターのファッションも。
リアルなはらぺこくんとおんなじくらい。
話す時間が好きだった。
今までみたいなチャットはしなくてもいいけど・・・」
「うん。
あれが繋ぎ止めてくれていた点は大きいな。
ほんとに、こんなに毎晩チャットをした人は
他にいないよ。」
2年くらい前に、はらぺこくんが
「今までのチャットを並べたら、富士山くらい、
いくんじゃないか」
って言っていた。
今では、エベレストも超えちゃうかもしれない。
一切の義務感はなく、ただ、ただ、会話を楽しんだよね。
「はらぺこくんは、
わたしの故郷に来てくれた、2人目の人だよ。
ダンナさんの次。」
はらぺこくんは、笑った。
「中には入れなかったから。
ダンナさんの次に近づいたな。」
田んぼを散歩しながら
昔、元夫と大学生のころ、
留守中の実家に、こっそり入った話をしたんだった。
両親はまだ勤めていて。
日中、ふたりで訪れて、中に入って
色々見せたり、ちょっとHなこともしたりした、って
話したんだった。
終着駅に着くころには
そんな風に、すっかり和やかな雰囲気になっていた。
忘れたくなくて、細かく書いてたら
まだあと、1回、かかりそう~~~💦💦
(つづく)