わたしの育った村に行ったあと

病院でタクシーを拾って

市街地へ向かった。

 

「このへんって

 仕事はどんなのがあるんだろう?」

と、はらぺこくんが興味深げにたずねる。

 

公務員、教師、看護師、医者、介護士・・・

資格職で全国どこへ行っても就職できる職。

あとは工場とか、販売とか?

 

はらぺこくんは

自分なんかは、特にできる仕事がないなぁ

なんて言う。

以前から彼は、本当は上京せずに

地元へ残っていればよかった

と、よく言うから。

 

過疎と仕事の選択肢の少なさは

どこの地方も共通の悩みなんだろう。

 

自然豊かな田舎で生まれ育ち、

進学で上京。

そのまま東京に住み着いたものの

田舎への郷愁と、都会生活の不確かさのはざまで

なんとなく年を重ねていく・・・

わたしたちは、そういう仲間意識も共有しているんだろう。

 

話が少しそれたけれど

タクシーは庁舎に到着した。

この辺では、ひとつの観光名所。

新しいので、わたしも来たことがなかった。

 

エレベーターで最上階へ。

ガラス張りのカフェがあり、

地元の風景を一望できた。

コワーキングスペースなんかもあり、

知らないうちに故郷はオシャレになっていた。

 

「東京にあったら、めちゃ混みだね!」

 

窓際の席も空いていて

なんなく座れる。

はらぺこくんと並んで座り、

目の前の眺望を楽しみながら

ソフトクリームを食べた。

 

はらぺこくんは地図が好きなので

始終グーグルマップを開いてる。

風景を見ながら

あれは、〇〇だね、

さっきいたのは、あのへんだね、

なんて、話す。

 

自分の生まれた地元を

こんな風にしっかり見たことはなかった。

18歳までしか、いなかったから。

しみじみと、故郷の町の美しさを眺める。

隣にはらぺこくんがいてくれることが沁みた。

 

そして、心がすごく穏やかなのは

今、ここへ来たからだ、と感じていた。

 

はらぺこくんから旅立つ、と決めたから。

 

わたしはすごく自由なのだった。

 

もう、終の棲家は

はらぺこくんの近くがいいのか?とか

悩む必要がなくなった。

 

カフェを出て

地元のゆるキャラとはらぺこくんの

写真を撮る。

 

2人で撮ってほしくて

警備員さんにお願いしたけど

勤務中とのことで、あっさり断られてしまった。

 

コワーキングスペースで

地域おこしの展示などをゆっくり眺めてから

庁舎を出る。

 

庁舎の前には石碑があり

地元の歴史が書かれているのを読む。

はらぺこくんと一緒に、地元を再発見する。

それはとっても楽しい作業だった。

 

まだ観光する時間は、たっぷりあった。

 

「じゃあ、商店街のほうへ行こう。

 今はシャッター街として、有名なんだけど。」

 

炎天下、タオルを首に巻いたはらぺこくんは

ずうっとわたしについて来てくれた。

いつものように、手をつなぎながら。

 

(写真はネットの素材です)

 

 

子どものころは、この商店街に

夏祭りでやってくるのが楽しみだった。

姉妹で浴衣を着せてもらって。

高校生の頃は、学校帰りに

自転車でここの大型書店に寄り道した。

 

そんな思い出話をしながら

ぶらぶらする商店街は

想像をさらに超えるレトロっぷりだった。

 

謎の雑貨屋さんの店内には、

店番のおじいさんが、

知り合いらしいお客さんと

座り込んで話している。

おじいさんは、下着姿で

ベビーカーをゆすりながら

孫の子守をしている。

 

「ああいう風に暮らせるのが

 ほんとはいいよね」

と、はらぺこくんが言う。

 

職住が一致していて

個人商店がたくさんあった昭和の時代。

いつの間にか、

郊外のモールにお客さんは流れ

みんな、どこかの「勤め人」になっていった。

 

「少しずつ、少しずつ、変わって行ってるんだね。

 何十年も経つと、こんなに変わってる。」

 

それから

街の唯一の百貨店に入る。

わたしの母が、認知症になる前は

ここでの買い物を楽しみにしていた。

 

デパートの店内は気の毒なくらい閑散としていて

店員さんが所在なさげだった。

わたしの母のような人たちも

もう買い物に来れなくなってしまったんだもの。

 

哀愁ただよう、故郷の旅。

はらぺこくんは、ずっと一緒に味わってくれた。

わたしたちは、日本の同じ時代を

歩んできたから。

 

彼が隣にいてくれると

わたしは、ものごとを

ものすごくたっぷり感じることができる。

受信機の性能がすごくよくなったみたいに。

 

商店街を抜け、まだ時間があったので

街中のギャラリーに寄ることにした。

 

本筋とあんまり関係ない話になりました💦💦

まだ、何回かかかりそう・・・

 

(つづく)