タクシーは住宅地から村へと

走っていく。

 

「ここ、うちがよくとる

 お寿司屋さん」

 

「”今日は寿司でもとるか”って

 やるんだね😊」

 

道中、そんなおしゃべりが止まらない。

はらぺこくんといると

いつも「指さし期」の2歳児になってしまう。

 

やがて目に沁みるような

一面緑の田んぼが開ける。

タクシーには村の端っこで停まってもらって降りた。

あんまり我が家のそばに

つけるわけにはいかない。

 

「村人に会わないかな」

と、あからさまに警戒顔のはらぺこくん。

 

「大丈夫だよ。

 過疎ってるから

 だれも歩いてない。」

 

「遭遇しちゃったら、どうするの?💦」

 

「”あ、友達です~” 

 って言うから大丈夫!」

 

わたしがおかまいなしで

”ここは〇〇ちゃんっていう子のうち”

なんて説明しながら歩くと

はらぺこくんもついてきた。

 

「ここ、おばあちゃんち。

 いつも流しそうめんやってるのは

 このバラックだよ。」

 

「あ、写真のね。」

 

「ここは、はとこの家」

 

おっと!

はとこが庭で軽トラに乗ってる!

 

「はとこ、いるじゃん!」

 

「だいじょぶだいじょぶ!」

あわてて身を隠す。

コントみたいな、わたしたち😊!

 

そして、わたしの家。

 

「ちょっと待ってて」

と言って

垣根ごしに駐車場をチェックする。

車があった!

 

「父も母もいるっぽい。」

 

「え!いるんだ。」

 

「だいじょぶだよ。

 どうせ、大谷翔平を見てるから。」

 

でも、さすがに庭には踏み込まず

家の外からそーっと眺める。

 

「もう少し、引いて見よう」

と、はらぺこくんは好奇心に駆られてか

意外に積極的。

 

「どこが部屋だったの?」

 

「2階のあの窓のある部屋だよ。」

 

かなり不審者なわたしたちだったけど

楽しかった!

 

「これで、もし天変地異とかあっても

 ここに来れば、わたしの消息はわかるからね。

 この家がなくなっていても

 本家(おばあちゃんち)に

 行けば絶対だれか残ってるだろうから。」 

 

はらぺこくんは、黙って聞いていた。

わたしが今日の小旅行に

こめた思いをはかっていたのかな。

 

ついでに、村のはずれのお墓にも

連れて行った。

お盆迎えのためか、真新しい白い紙のかざりが

一面に飾られていた。

 

「うちの実家のほうのお墓にも 

 こういうのがあるよ。」

村の戦没者のお墓をふたりで眺めた。

 

それから、村にある牧場へ。

わたしの幼なじみが

乳牛を飼っている。

 

牛舎にずらりと並んだ牛を眺めてから、

ぐるりと村を一周する。

その間、ほんとにだれにも会わなかった。

 

そして、村を出て緑の田んぼ道へ。

少し先にある総合病院のタクシーを目指して歩く。

 

田んぼのあっちに

わたしの中学校

こっちにわたしの小学校が見えた。

 

「あんな感じだったのかな?」

はらぺこくんが

道を過ぎていく自転車姿の

中学生の女の子たちを指した。

 

はらぺこくんにわたしの歴史を

知ってもらえることがすごく嬉しかった。

 

農道には車もほとんど通らず

わたしたちは

道草する小学生のように

ぶらぶらと気ままに歩いた。

 

「この音・・・持って帰りたい。」

はらぺこくんが

用水路のコポコポという澄んだ水音を聞いて言った。

 

「いいよね。

 川の流れともまた違う、用水路の音。」

 

 

 

はらぺこくんも遠い田舎の出身。

よく用水路や川で泳いだという。

 

わたしも

学校帰りに用水路にざぶざぶ入って

歩いて帰ったことや

手ですくって水を飲んだ話をした。

 

用水路の流れにはときどき

段差があって、そこだけ

水が落ちて流れが急になる。

 

「木で船つくって 

 学校帰りに

 こういうとこで

 流したりしたよ」

 

「ふふふ。

 男の子たちが

 集まってワイワイやるんでしょ。

 道端にランドセル投げ出して。」

 

「そう。

 ”そっち行ったぜー!”とか

 ”俺のが速い!”とか。」

 

「永遠に時間があるかのようだったね。

 子どもの頃の学校帰りって。」

 

そんな話をしながら、かみしめていた。

心が通じるはらぺこくんとの時間を。

わたしたちは、昔、いっしょに遊んでいた

子ども同士だったんじゃないか?

 

田んぼの緑の稲は

まだ稲穂にならず、

シュっとしていた。

 

「田んぼはいいな・・・」

と、しみじみはらぺこくんが言う。

 

「いいよね。

 子どもの頃はこれが当たり前だったけど。

 東京から帰ってくると、感じる。 

 この匂いっていうか

 立ちのぼる生命力?

 浴びられるよね。」

 

鮮やかな一面の緑の中、

真っ白いサギの群れが

優雅に歩いていた。

 

 

***********

 

やっと病院に着き、

広いロビーの待合い椅子に並んで座る。

病気でもないのだけど

他に座れる場所がなくて・・・・💦

ぬるめの冷房だけど、汗がひいてきた。

 

ここでも知り合いに会わないかと

ちょっとドキドキしたけど取り越し苦労で済んだ。

 

タクシーのりばからタクシーに乗り

次は街の中心のほうへ。

 

※のんびりペースですみません💦

 気持ちのままに、書きたいことを残したいと思います。

 

(つづく)