所さんのおうちにお邪魔した晩、
終電がなくなって
泊まることになった。
手をつないだまま、無邪気にグーグー眠る所さん。
隣で座椅子にもたれ、
私はなかなか眠れなかった。
疲れてるんだけど
神経が興奮している。
男の人の部屋に2人きり、という初めての体験。
それに・・・
冷静になってみると
この隣で寝てる人は誰だっけ、という気がしてくる。
まだ知り合って2,3ヶ月。
会ったのは3回きり。
知っているようで、
まだ全然知らない人じゃない?
婚活の出会いなら、
3回会って真剣交際、なんてよく聞くけれど、
私の今までの人生、
「いいな」と相手を思うのは
部活とかバイト、職場の場しかなかった。
お互い日常的に顔を合わせて、
いいところも悪いところもわかって
じっくり好きになるっていうパターン。
所さんと私には、共通の知り合いも一人もいない。
職場でどんな人だと思われているのか、
集団の中でどんな振る舞いをする人なのか、
そういうのも、全然知らない。
そんなよく知らない男性が
至近距離の隣で部屋着で寝ている・・・
座椅子の上でもぞもぞ寝返りをうちながら
「やっぱり、帰ったほうがよかったかな~」
なんて気持ちまで湧いてきた。
まあいいや、
とにかく無事に朝を迎えるのだ。
これも1つの体験!
うとうとしたり、目が覚めたり・・・
そんなのを繰り返しているうちに
部屋が薄明るくなってきて、
やがて光が差し込んできた。
うーん、まぶしい!
清潔な太陽の光を浴びて
長い夜から無事に生還した気分。
思いっきり伸びをする。
ふわ~っと大あくびをして
所さんも目を覚ました。
朝日の中、
二人とも気だるく、
「おはよう」、
「今何時?」などと言葉を交わす。
今日は所さんは普通に会社へ行く日。
私も帰宅したら、仕事が待っている。
座椅子の背もたれを普通に戻し、
しばし、長い夜の余韻にぼーっと浸ってた。
電車、もう動いてるよね。
何時ごろ帰ろうかな・・・?
すると、所さんが頭をかきかき、
例の寅さんみたいな口調で
ボソっと言った。
「俺も情けねえなあ。
一晩一緒にいて、何にもできねーなんて。」
あは!
お約束のジョークみたい。
私は微笑ましくて、ふふふと笑った。
・・・と、
その時、突然!
ぐいっと引き寄せられて
いきなりのキス。
それも、長い長い熱烈な。
必死で受け止めていると・・・
ん・・・
もしやこの展開は・・・
キスだけじゃ、終わらない?!
会社へ行く所さんと、電車の中で別れる。
私は一人、朝日の中、家路を歩きながら
興奮の余韻を味わう。
ムフフ!とお腹の底から、喜びがこみあげてくる。
朝帰り!
こんなの20代のとき以来~~!!
所さんは、茶飲み友達を
探してたわけじゃなかったのね。
当たり前か。
ちゃんと男の人だった。
40代と60代だけど
こんなのって、アリなんだ。
未知の世界!
充実感に満たされていた。
(今日はこのへんで)