「ギブアンドテイクの崩壊」と言ってしまうと、
なんだか強い響きがありますが、
私が感じているのは
「ギブやテイクが消える」ということではありません。
(弱者に手を差し伸べるような救済とは、また別の話です)
「そっと置いておく」という感じ
このところ私が感じているのは、
これからの社会では
「必要だったら持っていってくださいね」という
ゆるやかな関係性が、自然に広がっていくのではないかということ。
もちろん、それだけで世の中が回るとは思いません。
でも、どこかに
「自分がいいなと思うもの」
「誰かに役立つかもしれないもの」
をそっと置いておくような感覚が
心地よいのではないかなと思うのです。
たぶん、私自身が『ぐいぐい来られる』と
引いてしまうタイプだからかもしれませんが(笑)
“押し込み”がもたらす違和感
実は先日、セールスが押し込み的に
ぐいぐい来てドン引きしてしまったことがあったんです。
押し込み的なセールスって
どうしてこんなに疲れるんでしょう。
「あなたのために、こんなに素晴らしいものを!」
「ここ、こうするともっと◯◯になるはずです!」
……テレビショッピングならまだいいんです。
見るか見ないかは視聴者の自由ですから。
でも、対面や電話でぐいぐい来られたりすると引きます。
どなたか知り合いのお友達であったり
お友達の紹介というのなら
まだいいんですけどね。
まして初対面でぐいぐいきたら引きます。
ネットで見たくもない広告を
強制的に見せられたりすると、
心が閉じてしまって、
その先にあった肝心の情報までも
「もういいや」と、見たくなくなってしまう。
それに近い。
私は、どんな物を売ってるかも大事だけど、どんな人がそれを売っているのかはもっと大切だと思ってます。
(売り物にもよるけど)
「与える」と「気持ちよくなりたい」の境界
以前『孤独のグルメ』で、こんな場面がありました。
芸人さん演じる店員が、主人公・五郎さんに
「LINE登録するとサービス情報がもらえます!」
とぐいぐい迫る。
五郎さんは「いえ、そういうのは結構です」と断るけれど、
店員は「お客様へのサービスで!」と
めっちゃ笑顔で押してくる。
でもそれ、ほんとうにお客様のため?
むしろ自分のため、ですよね。
みたいな演出でした。
「ギブ」と「自己満足」って、ほんの紙一重。
「仕事なので」と言われたらそれまでなのですが
うん、それはわかるよ
でも・・・
「人」を相手にしているのですからね。
居酒屋でまずはビールで乾杯!ぐびっと飲んで
そこからゆっくりメニューを決めていこう
なんていう思いでお店に入ったときに、
システムについて説明が長くて
ビールのオーダーもできずにいたら
心が萎えるなんていう人もいるのではないでしょうか。
ドラマでは面白おかしく大袈裟になっていましたから
そこまで酷いことはないと思いますけれど、
時々
「あなたのため」と言いながら、
実は“自分が気持ちよくなりたいだけなのでは?”
という動機が透けて見えるようなこともあるんです。
それに、こういう押し込まれる感に
人はもう疲れてきているんじゃないかなと思うのです。
江戸時代に学ぶ「自然な与え方」
江戸時代は、驚くほど多様でエコな社会でした。
リサイクルの種類は数百種類はあったそうです。
紙屑拾い、灰買い、蝋や下肥(う◯ち)を集める業者、
抜けた髪を再利用する人まで。
与える側としては「いらないもの」で
持っていってもらった方がありがたい。
受け取る方は商売になるのですから
廃品を少額で請け負ってリサイクル。
小さな得意や工夫が、
誰かの役に立っていた時代です。
「これ、できるから」「これ、面白いから」
そんな軽やかな気持ちとアイデアで始めたことが、
自然と“仕事”になっていたのではないでしょうか。
そういうものが生活の中に自然と息づいていた。
そいて、与えることが「ご奉仕」や「自己犠牲」ではなく、
ただ「好きだから」「できるから」「楽しいから」
その延長線上で、人と人がつながっていたんじゃないかなと思います。
大河ドラマ「べらぼう」でも下級武士が
絵や文章を書く物書きとして仕事をしています。
戦がなくなって政から外れている武士たちの中から
自分の得意分野を生かしている人たちがたくさん出てきたんですね。
「与えよ、さらば与えられん」とはいうけれど
「誰かに喜んでもらうと、自分も元気になる」
これは確かにそうだと思います。
落ち込んで何もできないとき、
誰かに喜んでもらえることをすると元気が出る。
それは確かに、心を動かすきっかけになります。
でもどこかでバランスが崩れて
与えることが苦しくなってしまうことがあります。
与えることも、受け取ることも、
呼吸のように
吸って、吐いて、また吸って。
その自然な循環がいちばん健やかで、
長続きすると思います。
「自由さ」があったほうが長続きするし受け取りやすい。
なので、ぐいぐいと差し出すよりは、
ただ置いといて、持っていってもらうくらいの感覚が
ベターかなと。
そんな在り方が、心地よい距離を保ってくれるのだと思います。
そこで必要とされるのは、
ここにあるよ。と知ってもらうための
人となりや、人脈、信頼に足るあり方とかでしょうか。
やさしい循環のかたち
「これ、よかったらどうぞ」
「ありがとう、ちょうど欲しかったんです」
そんな風のようなやりとり。
与えることも、受け取ることも、
誰かを支配したり、見返りを求めたりしない。
それが、これからの時代に合った
ギブアンドテイク、やさしい循環のかたちだなぁと
思うのです。
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