ラコタ滞在記Part2-9:パウワウ・グランドエントリー~リスペクト精神~
ネブラスカから一路居留区のパウワウサイトへと車を走らせた。途中スピード違反(違反といってもほんの少しオーバーしていた程度だったんだkが・・・)で警告を受けるというハプニングもあったが、とにかく7時からパウワウ・グランドエントリーに急いだ。結局7時15分過ぎぐらいに到着したのだが、会場で「え~、インディアンタイムのため遅れております。もう少しお待ち下さい~」というアナウンスの声。
あわてなくても大丈夫。この時点でまだ着替え途中の人々がたくさんいた。さすがである。
パウワウはその昔、戦いにいく前の士気をあげるためのお祭り(前夜祭?)みたいなものだった。現在はホースショウなどのエンタテイメントを盛り込んでのお祭りである。スペインのセビジャーナスもそうだが、日本だと盆踊りみたいなものになるのだろうか。
「居留区のパウワウは小規模だけど、お祭り然としている大きなパウワウより好きなんですよ」というのは現地ガイドでありドライバーでもあるTomoさんの言葉だ。たしかにこのゆる~い感じがなんともいえない。
あらかじめ用意しておいたキャンプ用の椅子を持って『北』に席を取った。 パウワウグラウンドは四つの方位を示す色で屋根が作られていて、西に二組、北に二組の歌い手達がスタンバっている。入場は東と西の間からなのでちょうど良い位置に場所がとれた。後ろにはインディアン・タコスの出店が並んでいるので夜食を買いにいくのもちょうど良かった。
30分ほどしてようやくグランドエントリー。初日のため、出場者はあまり人数が多くない。それでも老若男女子供までふくめて50人ほどはいた。
まずはお披露目。星条旗やラコタ旗を掲げた軍人(現役米軍兵士のラコタ人)の後ろをツーステップを踏みながら鮮やかな衣装をまとった出場者の入場である。
その後、それぞれダンスの種類に別れて踊りが始まる。 ちなみにコンテスト形式のため、出場者は番号札を付けているのだが、昨年の優勝者はこのお披露目入場の際にイーグルのついたステッキを持って先頭に立って入場することもできる。
ダンスの種類は以下のようになっている。
男子:
ゴールデンエイジ(50歳以上)、ジュニア(未成年)
ファンシーダンス(ウォーダンスの衣装をもっと派手にしたドレス姿で踊る)
グラスダンス(ヤマアラシの毛がついたヘッドドレスを付けて踊る)
トラディショナルウォーダンス(伝統的な羽飾りと盾やスティックを持つ)
女子:
ゴールデンエイジ(50歳以上)、ジュニア(未成年)
ファンシーダンス(マントのようなショールを羽のように広げながら踊る)
ジングルダンス(ジングルという真鍮などを鈴状のパイプにした物がたくさんついたドレスを着る)
トラディショナル(骨ビーズを無数に付けた長い胸当て、羽の扇を持つ)
それぞれ2回ずつ行われるのだが、歌い手達も大変だ。
パウワウドラムは直径1m程の、まるでテーブルのようなドラムで、台の上に乗っている。それを10人ほどで取り囲んで叩き、歌を歌う。大迫力である。
私のすぐ近くにいたチームは他の3つのチームより歌がうまかった。さすがに9時頃になってくると疲れもでてくるようだが、それでも迫力は衰えない。このチームにはトラディショナルダンスのダンサーが一人いて、踊るばんが回ってくるまでは歌を歌っていた。
親子で出場している人達もいれば、家族が着替えを手伝って送り出していたり、実に和やかな雰囲気が漂う。
パウワウ衣装もフルセットではかなり重いのだろうが、それを着た子供が一生懸命踊る姿には顔がほころびっぱなしだった。
そんなパウワウで一際目立ったのが、一人のおじいちゃんである。彼が踊るときは歌い手以外全員起立してリスペクトを表した。
最初のお披露目エントリーの時には客席から一人また一人とおじいちゃんの隣にやってきて、一緒にステップを踏んだ。こういったお年寄りと一緒に踊れることは、それより若い人々にとってはとても神聖な経験だという。
私も流儀に習い、ゴールデンエイジ(50歳以上)の部では起立してグランパ、グランマが踊るのを見ていた。当然、踊り終われば拍手喝采である。
居留区にいると、そう長生きはしないものである。アメリカ全土の癌や糖尿病などの死亡率が下がる一方で、居留区での死亡率はあがる一方だと聞く。それはここオグララ・ラコタに限ったことではない。だからこそ、お年寄りが元気にパウワウで踊る姿はここに住む人々にとって心強くもあり、励みになるのだろう。
隣に座っていた夫婦は最初からそこに座っていたのだが、これといって夫婦同士会話をすることもなく、ただじっとパウワウを見ていた。ゴールデンエイジになれば起立して。Tomoさんもしみじみ「いい感じの夫婦ですねぇ。いいなあああいうの」と言っていたが、なんともいえないいい雰囲気の夫婦だった。必要なこと以外の会話がなくとも、寄り添って、楽しみを共有しているようなそんな姿だ。
日もとっぷり暮れて、二度目のゴールデンエイジの部が終わる頃、おじいちゃんの写真を一生懸命撮影しようとしていた姿を見ていたのか、その夫婦の奥さんが声をかけてきた。見た目がそう見えるのか、暗かったから肌の色の区別が付かなかったのかわからないが、こう尋ねてきたのだ。
「あなたラコタ?」
インディアン?ではなくラコタ?と声をかけてきたので、一瞬まずい事をしてしまったのかと焦る。しかしそうではなかった。
「いや、旅行者です。日本人」
「あら、そうなの。彼はね、私達のグランドファーザーなのよ」
被写体としていたおじいちゃんの事を指してそう言ってきたのだ。
多分、このおじいちゃんは居留区に住んでいるラコタ人ならたいがいは知っている人物なのかもしれない。彼等は珍しいおじいちゃんダンサーに興味を引かれているこちらの姿を見て、親切に声をかけてくれたのだった。
彼等にとって「グランドファーザー」というのは血縁関係でいう祖父だけを指すわけではない。もっとスピリチュアルな意味が込められているのだ。
「年は98歳なの」
「ええ98!?お元気ですね~」
「私達の誇りよ」
そう言って微笑んでいた。
ラコタ人だけではないと思うが、私が知る限り彼等は、部族のしきたりを初め人生のいろいろな物事をグランパ(グランドファーザー)、グランマ(グランドマザー)から教わる。父や母では物事を教えるには若すぎるという考えがある。
だから、人生の先生でもあるゴールデンエイジの人々を彼等はリスペクトする。みんなこういう人々達から物事を学んで生きてきた。
そんな伝統も近代化によって失われつつある昨今、まだまだ元気にグランパ、グランマ達が居留区にはいる。
おそらく、この夫婦もこのようなグランマ、グランパになっていくのだろう。
いわゆる大規模なイベントとしてのパウワウではなく、居留区の小規模なパウワウ。私もそれが好きになった。
地元の人達だけが集まり、和気あいあいと進行していく姿。そして、えも言われぬ暖かさやスピリチュアリティがそこはかとなく漂っている。
気が付くともう12時。本日の閉会時間を回っていた。最後は今日の受賞者達が旗を掲げて退場。彼等の後を客席から一緒に退場していく人々もいるので、私もそれに続いて並んでみた。退場口では受賞者達が一人一人に握手をしてくれるため、私もまぎれて握手してもらった。こういうのは小規模ならではの楽しさでもある。
B&Bに戻っても、なかなか眠れず、深夜2時頃の真っ暗な庭をB&Bにあるランプをたよりに散歩していた。パウワウ中にぱらぱらと雨が降ったが、それもすっかり上がり、空を見上げると満点の星空に北斗七星があった。
*古人がヴィジョンクエストをした場所~祖先達の聖域~につづく
*サウスダコタ~パインリッヂ居留区オグララ・スーの聖地で過ごした魂の旅日記 PART 2は2008年に別のブログに掲載していたものをアメーバ移行に伴い、再編集しておとどけしています。
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