サウスダコタ~パインリッヂ居留区オグララ・スーの聖地で過ごした魂の旅日記 PART 1
第十七章 私の中でのある終焉 ~Wounded Knee~
第十七章 私の中でのある終焉 ~Wounded Knee~
1890年12月29日、ウンデッドニーの丘で悲劇が起きた。良いことをすれば報われるのだと白人との和平を願い、愛し合うことを訴えるべくしてゴーストダンスのために集まった人々。その内、ラコタの人々約400名ほど(老若男女問わず子供も含む。うち戦士・男性は100名程度)は雪が積もる凍った大地に死んだ。雪にまみれた死体は掘った穴にまとめて放り投げられ、三日間放置され、白人はそれまで白い布をかけて目に付かないようにした。
ウンデッドニーの丘の上にある墓地。入り口以外は撮影禁止
その後1973年にも銃撃戦に至る占拠事件が起きたが、偉大なる指導者達の尽力によってウンデッドニーの悲劇の再来を避けることはできた。この悲劇を語り継いでいる人々はブラック・エルクをはじめとして、いくつかの文献がでているし、後に証言をしている合衆国側の兵士たちもいる。
私にこの一件についての白人の見解を述べた人々は、あの時点でネイティヴには生き残った人(現場当事者)はいないから、本当のことは分からないと言っているが、そんなことはない。中には傷だらけの状態で家族の死体を目の当たりにした人もいる。逃げまどう母子が後ろから機関銃で撃ち殺されたのも。後に捕虜となった人々もいたはずだ。今でも水面下ではまだ戦いは続いているのだと思う。終わりなんてないだろう。
私は日本人という、彼等からすれば遠くはなれた国の人間で、どれくらい彼等に付いて詳しいかなどもこちらが何も言わない以上は知る由もない。だから時には都合のいいことを言って、正論立てようとしている様な気もした。もちろんこれは白人のみならず、ネイティヴの人々にも。
結局、真実はその現場に居た人物しか分からない。だから私はその真実を知ることはできないし、この土地の人間では無い以上知る必要もない。また興味本位に知ろうとするのも良いこととは思わない。
ただ起きた事実を受け止めるという事。それだけだ。
なぜウンデッドニーに行きたいのか。
ホワイト・サンダーは質問してこなかった。
確かにここは観光地で、ウンデッドニーミュージアムもあるのだから、目的がどうであれガイドとして連れてくる必要性を彼は感じていたのだろう。私は彼に直接ウンデッドニーに行きたいとは言わなかったが、実のところ彼が行きたくないと言わない限りは行きたかった。というよりは、行かなければならないと思った。
きっとホワイト・サンダーが行きたくないと言って、この時行かなくても、帰国までの間に他の人に頼んで行っただろう。
*ちなみにホワイト・サンダーは1973年の占拠事件の時にそれを止めさせるために奔走したそうだ。彼のみならず現地の人々にとってはいい思い出は一切無い場所。だからここに来るのは物好きな観光客しかいない。
ホワイト・サンダーは質問してこなかった。
確かにここは観光地で、ウンデッドニーミュージアムもあるのだから、目的がどうであれガイドとして連れてくる必要性を彼は感じていたのだろう。私は彼に直接ウンデッドニーに行きたいとは言わなかったが、実のところ彼が行きたくないと言わない限りは行きたかった。というよりは、行かなければならないと思った。
きっとホワイト・サンダーが行きたくないと言って、この時行かなくても、帰国までの間に他の人に頼んで行っただろう。
*ちなみにホワイト・サンダーは1973年の占拠事件の時にそれを止めさせるために奔走したそうだ。彼のみならず現地の人々にとってはいい思い出は一切無い場所。だからここに来るのは物好きな観光客しかいない。
ヘリテイジセンターから20kmほどの間、私達は無言でただ景色を見ているだけだった。無口なホワイト・サンダーが口を開いたのは、ウンデッドニー墓地の前に車を止めた時だった。それは、墓地の前でドリームキャッチャーを売ろうと近付いてきた少年を見て、絶対買うなという一言だ。そして彼はその少年をおっぱらいに先に車を降りた。
私は車を降りて墓地の方ではなく、反対側の丘の先の方へ歩いた。この下は虐殺が起きた現場。何かに吸い込まれるようにそっちに歩いていった。気をつけなかったらそのまま下に落ちてしまっていたかもしれない。立ち止まって周囲と下を眺めた。無音の空間。灼熱の真昼。・・・にも関わらず、寒気がした。
「墓地の入り口は写真を撮っていいが、中に入るときはバッグにカメラを入れておけ。でないと取り上げる」
ホワイト・サンダーの声で我に返った。この声がなかったらどうなっていたのだろうかと思う。
このまましばらくここにいたら、乱れ飛ぶ怒号や銃声、悲鳴、焦げ臭い匂いまでしてきそうで恐かった。現に少し震えていた。
墓地の中は撮影禁止。厳しい顔つきの墓地の管理者が私達を監視しに出てきた。
Tomoさんが「じゃぁ、中へ行きましょうか」と声をかける。やっぱりホワイト・サンダーは来ない。車によりかかったまま私達をじっと見ているだけだ。
「入っていいんですか?」と聞くことができない。私はまだ震えていた。
Tomoさんは階段を上がって目の前の金網に手をかけたが、そこには入っちゃいけない!と私の足が止まった。まだ入り口の階段に足すらかけてなかったのだが。
案の定ホワイト・サンダーが「No!! 金網に手をかけるな!そこは儀式の時以外立ち入り禁止だ」と怒鳴る。
墓地の中央に金網で仕切られた長方形の空間。その中央には石碑が立つ。この下にはウンデッドニーで亡くなった人々が眠っているのだ。石碑には名前が分かった人々だけなのだと思うが、チーフ・ビッグ・フットを始めとする、亡くなった人々の名が刻まれている。慰霊の儀式以外はネイティヴですら入らない。
ガイドによっては観光客を中に入れる事もあるそうだが、私はそれでも入ろうとは思わないだろう。小さな震えがとまらず、この長方形の空間の外側を高木さんの後ろに付いてぐるっと歩き続けている間も、心ここにあらずと言っていいほど、どうしていいのかわからなかった。
胸の前でぐっと両手を握りしめたまま、硬直した姿で歩いていた。
周囲はたくさんの墓があり、先に出会ったハズ・ノー・ホースの父の墓もあった。そしてほとんどに十字架が立てられている。墓地の先には小さな教会があるので、ここに埋葬されている人々のほとんどはキリスト教なのだろう。
半周ほどして「逃げるな」という言葉がわき起こってきた。長方形の空間に立つ石碑はど真ん中ではなくて片側の中央に立てられている。半周して右前方に石碑が近付いて来た頃だった。何から逃げるのだろう。この恐怖感からなのか?ではこの恐怖感はどこからくるのだろう。ふとそんな自問自答が繰り返されているうちに石碑を過ぎた。
2部へつづく
*サウスダコタ~パインリッヂ居留区オグララ・スーの聖地で過ごした魂の旅日記 PART 1は2006年に別のブログに掲載していたものをアメーバ移行に伴い、再編集しておとどけしています。
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