サウスダコタ~パインリッヂ居留区オグララ・スーの聖地で過ごした魂の旅日記 PART 1
第十六章 ウンデッドニーの前に
第十六章 ウンデッドニーの前に
サンダンスサイトは先に書いたように、その土地の地主であるハズ・ノー・ホースが訝しい顔で様子を見にくるといったプチハプニングがあったが、ホワイト・サンダーのおかげでしばらくそこに車を止めて彼の解説を聞くことができた。
仕来りに厳しい彼は私を車からは降ろさず(この頃はまだ今のように受け入れられていたわけではないので、サンダンスサイトのエリアを歩き回る事は許されなかった)、彼だけが降り、セージと祈りを捧げてきた。
仕来りに厳しい彼は私を車からは降ろさず(この頃はまだ今のように受け入れられていたわけではないので、サンダンスサイトのエリアを歩き回る事は許されなかった)、彼だけが降り、セージと祈りを捧げてきた。
今年のサンダンスで使われたと思われるコットンウッドがサイトの中央に立っていて、てっぺんに結ばれた布がひらひらと靡いていた。
周囲を取り囲むようにしてある藤棚のような日よけ棚。このサイトの片隅にいくつものスウェットロッジ用ロッジが見えた。今はサンダンスシーズンではないので、ひっそりと静まり返り、見渡す限りの大草原。ここはティピに泊まった翌日拝んだ朝日が昇ってきた丘の先にあたる。
サンダンスは彼等からの招待があれば異国の人間も参加することはできる。藤棚のようなものの周囲にゲスト用の場所が作られるので、そこで見学したりするようだ。
ホワイト・サンダーもグレイ・グラスも、希望すれば招待するとは言ってくれたが、興味本位で参加するものではないと思うので、然るべき意義を持ってそれに参加する意志があったら参加したいと思った。その時は長老に捧げものとして何かギフトを持っていかなければならない。いずれにせよ、然るべき意義を持って参加する場合は四年連続参加が一応の基準だ。
その後、居留区からネブラスカの州境へと車を走らせ、州境を周回した後向かったのはヘリテイジセンター。
レッド・クラウド・ヘリテイジ・センターはレッド・クラウド・インディアン・スクールに隣接している。スクールはミッションスクールで、学長は白人の神父だ。とても設備の整ったアカデミックスクールで、たくさんの子供たちがここに通っている。
このスクールはチーフ・レッド・クラウドが、白人達の教育制度を知り、今後自分達がこの合衆国で生きていくにあたって白人と同じ教育を必要とするだろうという思いから作られた。彼が合衆国政府に赴いた時に出会った神父に、白人に劣らぬネイティヴを育てるための教育を行う約束をしたのがきっかけである。
1888年にこの地にホーリーロザリーチャーチができ、その後スクールとして拡大していく。
チーフ・レッド・クラウドはこの広大なスクールの敷地内に埋葬されている。現在このスクールはネイティヴのみならず、白人の子供たちも通っているようだ。
ヘリテイジ・センターにはこのスクール出身の画家や造型師の作品なども飾られていて、彼等が作ったものがギフトショップで販売されていた。
ミュージアム内に入ってまず目を引くのはなんといってもウンデッドニー大虐殺の写真と解説。惨劇のそれが生々しく捉えられた写真の数々を見た。
後半には「Massacre or Battle?(虐殺か戦いか?)」というタイトルで、ラコタ側の見解が書かれたプレートがあった。
白人側の意見としては、インディアンの男は髭を生やしていないから男か女か見分けがつかなかった。一つ所に集まったため、暴動を起こすのではと恐れた合衆国政府が先手を打ったのであり、戦いであって虐殺ではない。リトルビッグホーンの戦いにおいて白人がインディアンに虐殺されたための対処だった・・・とのことだ。
しかしウンデッドニーのこの事件は1890年。リトルビッグホーンの戦いはそれよりも20年近く前だ。もちろん、この事件においてはゴーストダンスという儀式のために多くの人々が集まっていたというのが原因だった。これを見た白人はこれを平和の踊りではなく、戦いの士気を高める踊りに感じたのかもしれない。ゴーストダンスは非暴力によって訴え、争いごとはせずに良いことをして互いに愛し合おうという意図があったのにも関わらず。
しかし、なにもホチキス銃(手回しのガトリング銃、機関銃の原型。紙綴器のホチキスは人の名前で、銃を作ったその技術が後の紙綴器に活かされた)で撃ちまくることはないだろう。今で言う機関銃だ。どう考えてもこれは虐殺。無差別大量虐殺・・・。
ウンデッドニーに関しては次のテーマに書くので、この辺にしておこうと思う。
ホワイト・サンダーもミュージアムに入って一緒に見学した。ウンデッドニーの写真のエリアに佇んで、じっとそれを見続ける彼の背中はなんともいえない痛々しさを感じる。大柄な彼の背中が小さく見えた。
暫くしてさっと回り終えた彼は、私に一言「外で待ってるよ」と声をかけた。
日本人からすれば原爆記念館を訪れるようなものだろうか。
力ない彼の声の意味が何となく分かる。彼の祖先も犠牲者だから。
力ない彼の声の意味が何となく分かる。彼の祖先も犠牲者だから。
ミュージアム内はビンテージものの衣装などもガラスケース内に納められており、かつてのラコタの芸術品を目にすることができる。儀式用のスティックや髪飾り、モカシン、バッグ、ブーツ、ドレス。ビーズワークが入ってくる前に行われていたヤマアラシの針を染めて使ったクイルワークの品々もずらりと並ぶ。
「どうすりゃこんなのができるんだ? いったいこれはどうなってるんだろう?」
私はこれらを食い入るように見つめ、やがて大きな革のドレスのところで立ち止まった。かなり古いもので、ビーズが現在使われているシードビーズではなく、大きめのポニービーズであることから1800年代初頭のものだと思われる。それをじっと見つめて、どの様に縫われているかを必死に確認した。
私達しか客がいないのでよかったが、端から見たらちょっと怪しい人に見えたかもしれない。上から下から真横から。近付き過ぎてガラスに息がかかって曇るのを腕で拭きつつ、体をくねくねさせながら必死に見ていた自分を思い出して今でも笑ってしまう。
これがきっかけで、後に彼等のビーズワークを勉強する機会に恵まれたのはありがたい事だ。
これがきっかけで、後に彼等のビーズワークを勉強する機会に恵まれたのはありがたい事だ。
昨年鹿革のラコタドレスを作ってもらったのだが、ビーズは施されていないものだ。自分でビーズをつけようと思って作ってもらったきり一年経過し、本腰を入れなければと思ったところにこの旅だった。
ビーズワークがつくと二十万円、三十万円と価格が跳ね上がるのは、実際にやってみてよく分かる。ものすごい労力がいるものだ。しかしめげない。なぜだか分からないが、どれくらいかかってでも完成させてやるという漠然とした意気込みが、このミュージアムで湧いてきた。
ヘリテイジセンターのドアの外でホワイト・サンダーはぽつりと待っていてくれた。
次に向かうはウンデッドニーの丘。
もし、ホワイトサンダーががあそこには行きたくないと言うのなら、私は行かなくてもいいと言おうと思ったが、この時は仕事と割り切った彼は何も言わずに連れていってくれた。
彼の顔は、ウンデッドニーを終えてパウワウサイトのピクニックランチまで和らぐことはなかった。
それは私も同じだった。
彼に次に会った時は「ウンデッドニーに行くなら自分で行けるだろう。行ってこい。なんかあったら俺の名前を出せ」と言われたのを考えると、この時2人の間にはずいぶん距離があった。もともそれが縮まったのはこの初ウンデッドニーの後すぐの事だったが。*サウスダコタ~パインリッヂ居留区オグララ・スーの聖地で過ごした魂の旅日記 PART 1は2006年に別のブログに掲載していたものをアメーバ移行に伴い、再編集しておとどけしています。
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