ひさしぶりに恋の物語を読んだ
ひさしぶりだけれども
自分の現実や日常から恋しい気持ちが失われているわけではないので 懐かしくは感じない
けれど自分の現実の恋しい気持ちとは随分遠いエピソードが並んでいるので ちょっと遠い感覚で読んでいた
自分から失われてるのは そうだよね エピソードだよね
ワインを何本も並べて試飲するとか ワインでなくてもアルコールに酔っているとか ふわふわと頼りなく立っているとか ましてナンパとか そこから追い払ってくれて肩を腕を貸してくれる存在とか
もうそういうのは多分ずうっと一生失われたままなんだろうな
でも
その時々の 空気 感覚 感情 色合い
そういうのは失われないから
恋物語を並走するのは楽しかった
と
ざっと言えば「客観的に」恋物語を読むことになったのは 加藤シゲアキ先生があとがきを書いたからだったのよねぇ
そのあとがきを読むために 本を買って本文を読んだ
ヒロインは次々に恋をする
自立して男性に依存しないで生きているような しっかりした彼女が 何人かの男性に出会い恋に落ちていく
だからこそ この小説は恋物語なんだけどね
そのへんの読み取りとか分析とか シゲアキ先生はまことに聡明な文章で感心しちゃう
「赤」や「白」の色のことを読み解いてしまうのは さすが小説家だなあ
小説家であると同時に音楽と身近なところに生きているシゲアキ先生は 作品の中の音楽にも敏感
あとがきをクラプトンの「Change the world」から始めて その曲がヒロインの心の立ち位置を表しているという考察につながってるなんて 思わず唸っちゃった
そして作品の著者・島本理生さんは歌がお好きなんだなあ
ということもあらためて感じた
そう感じる場所に送り込んでくれたのはシゲアキ先生ね
これは別の曲なんだけど 作品の途中に英語の歌詞が載ってた
ヒロインが歌いながら 亡き母や母の居た空間を回想するシーン
彼女の声で歌が聴こえてきた気がした
そして この曲のタイトルから 別のエッセイストの最新作を思い出して みずみずしい才能があちらにもこちらにもあることにカンゲキ!
(備考)
内田也哉子(内田裕也さん&樹木希林さんの長女)著「BLANK PAGE 空っぽを満たす旅」
両親をたてつづけに喪り 喪失を抱えながら人と出会い 一対一の対話を経て言葉を紡いだエッセイ
ところで
あとがき目当てで読み出したから「客観的」は当然なのかなあ と落ち着いて「客観的」をやっていたんだけれど
気づいたら「主観的な」心持ちで読めちゃったのよ
ヒロインが出会った男性の中に 背中ががっしりして手の大きなひとがいるの
強い背中に頼りたくなる気持ちが 他人ごとでなく胸にわき起こってきちゃったなあ
