リマインダーとは、何かを思い出させたり、気が付かせたりするためのメモなどのことです。
身近なところでは「立入禁止」「触るな危険」「開放厳禁」などの張り紙も、リマインダーに当たるかと思います。
興味のないことはすぐに忘れてしまう私にとって、リマインダーは必要な物です。
私の机の上には、何かしらいつもメモ書きが置いてあります。
視覚情報に強い自閉症にとって、こういったリマインダーは効果的な視覚支援の一つですが、使い方によってはただの苦痛なグッズになってしまうことがあります。


小学校低学年の頃、私は、電話の応対で「ハイ」と返事をすることができませんでした。
「もしもし、○○ですけど、お母さんはいますか?」→「うん!」
母からは、「ハイと返事しなさい」と何度も言われていたのですが、なかなかできませんでした。
そのうち母は、何度言ってもできるようにならない私に業を煮やして、電話機に「ハイ」と書いた小さな紙を貼りました。
母にとってみれば、この紙を見ることで、私に「ハイ」という返事を思い出させたかったのだと思います。
ただ私の場合、それまでに「ハイと返事しなさい」と何度も怒られていたので、この紙も見る度に、「ハイ」と返事をすることではなく、「ハイと返事しなさい」と怒られたことを思い出すことになってしまいました。


以前の記事ご褒美シール に書きましたが、一度怒られた記憶が残ってしまうとそれはなかなか消えません。
私にとって、この「ハイ」と書かれた紙を見ることは、その度に怒られたことを思い出す苦痛なものでした。
いつも電話に出る度に心の中にザワザワとした嫌な感情がありましたが、その嫌な感情をハッキリと自覚して言葉にすることも、パニックで表現することもできず、ただ嫌な感じを味わいながら電話に出ていました。
そのうち、母の狙い通りに「ハイ」と返事することもできるようになりましたが、私はこの紙が嫌だと表現することは結局一度もなかったので、おそらく母は私の苦痛に気が付かないままだったのだろうなと思います。
ちなみに、この時の電話は昔懐かしいダイヤル式の電話でした。
プッシュホンの電話に買い替えられた時にこの紙も無くなって、私はようやく電話の苦痛から解放されることができました。


当時、なぜ私は「ハイ」という返事がなかなかできなかったのかと言えば、変更しないで の記事と同じ理由で、「うん」→「ハイ」という新しい変更をすぐに受け入れることができなかったのだと思います。

もし、「ハイと返事しなさい」と一度も怒られたことが無い状態で、この「ハイ」と書いた紙が電話機に貼られたのであれば、これはリマインダーとしてうまく機能していたのかもしれません。
ただ私の場合、コミュニケーションスキルのほとんどは見よう見まねで周囲の模倣をすることによって身に付けていたので、リマインダーよりも、子ども向けのマナーの本や直接のお手本を見て学ぶ方が、ストレスも少なく正しい電話の応対を身に付けることができたような気がします。

本人の負担が少なくスキルを身につけるためには、リマインダーが良いのか、マネをしながら練習する方が良いのか、それとも全く別の方法が良いのか、それも本人の特性によって様々に変わってくるので(私と息子でも全く違うことがあります)、その見極めが発達障害への支援の難しいところだなと思います。



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