私が、読書が苦手だと気が付いたのは、自閉症の診断を受けた後、三十歳を過ぎてからのことです。
それまでも、他の人に比べて本を読むスピードが極端に遅いことには気が付いていましたが、それが当たり前だったので、苦手だという自覚がありませんでした。
私は、二つのことを同時にこなすことが苦手なのですが、本を読むという行為は、私にとって、文字を目で追うことと、単語の意味を理解すること、この二つを同時に行わなければなりません。
文章を読む時は、単語の意味を一つずつゆっくりと拾いながら読み進めていくので、なかなか先に進むことができないのです。
 

音読になると、さらに大変です。
文字を目で追うこと、意味を理解すること、その上さらに声に出して読むという行為が加わって、三つを同時にこなすことなんてもちろんできず、声を出すことだけに集中してしまいます。
学校の授業での音読では、何が書いてあるのか、文章の内容がいつもさっぱり分かりませんでした。


それでも、私は学校での音読はとても好きでした。
それは、「読み方がきれい」だと、よく褒められたからです。
自閉症は、言葉を覚えていく時に、家族や友達との会話よりも、テレビから言葉を取り入れていることが多く、そのために、方言よりも標準語で言葉を覚えていることがあるのだそうです。
私は、生まれも育ちも関西の割には関西弁が少なく、音読をする時は、まるでアナウンサーのような読み方をしていたようです。
褒められることはやはりとても嬉しいもので、例え文章の内容は理解できなくても、私にとって音読はとても好きな時間でした。



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