米国とイランが停戦合意にとりあえず署名し、今後60日間かけて最終合意内容を詰める ということで、石油価格は急落しましたが、ホルムズ海峡の状態は まだ自由に航行できる という状態からは程遠いようです。
(上のグラフ 米国産原油の「WTI原油」先物の価格推移)
まず、6/26にイランがホルムズ海峡を通っているシンガポールの国旗を揚げた貨物船に対してドローン攻撃を行いました。
なぜシンガポールの船が攻撃されたかと言うと、その船は イランが指示するルートではなく、もっとオマーン寄り、つまり南寄りのルートを通ってホルムズ海峡を脱出しようとしていたからです。
(上の地図の赤い点線の"Safe corridor" と表示されたルートがイランが「安全」だと指図するルート、ブルーの線がイランとオマーンとの間で合意された海上境界線。今回シンガポールの船が通っていてイランから攻撃されたのは オレンジの線で、これは慣習的なルート。)
つまり、この事件が示しているのは イランは けっして ホルムズ海峡の通行「管理」を諦めることはない ということです。
ですから、手数料を徴収して、その手数料が 賠償金をけっして払うことはない米とイスラエルからイランへの「賠償金」代わりになる ということを目論んでいるのであって、それに反して オマーンや米国が オマーン寄りのこのオレンジのラインを通れば通行料も払うことなく、無料で安全に通れる と宣伝し、多くの船がここを通り始めたものだから、「そうはさせるか!」と、イランは「見せしめ」の為にシンガポールの船を攻撃した ということです。
そして、米国はそれに対し、「停戦合意違反」だとして、イランへと「報復攻撃」を行いました。
↓(日本語に変換したもの)
US strikes Iran in response to a drone attack on a ship that Trump says violated ceasefire
(以下、上の写真の記事の和訳開始)
ワシントン(AP通信)-米国は金曜日、前日にホルムズ海峡で貨物船がドローン攻撃を受けたことへの報復として、イランを攻撃した。これは、両国が1週間前に合意した、数カ月に及ぶ戦争を終結させ、この重要な海峡を再開するための取り組みを開始するという暫定合意に対する、これまでで最も重大な試練となる。
ドナルド・トランプ米大統領は、今回のドローン攻撃は停戦協定違反だと述べた。攻撃は、トランプ大統領が記者団に対し、米国が報復するかどうかは「いずれ分かるだろう」と語った直後に行われた。
米中央軍は、イラン国内のミサイル基地、ドローン基地、沿岸レーダー施設を攻撃したと発表した。
「昨日、彼らが攻撃してきたこと、実際には4回も攻撃してきたことは気に入らない」と、トランプ大統領は米国が報復攻撃を行う直前にホワイトハウスで述べた。イランとの協議は順調に進んでいると主張してきたにもかかわらず、なぜ攻撃を行うのかと問われると、トランプ大統領はイランについて「彼らは少し違う」と答えた。
(和訳終了)
米国は イランのシンガポールの貨物船に対するドローン攻撃を「停戦違反」だとして報復攻撃を行ったわけですが、「停戦違反」と言うなら、レバノンでの停戦も合意に含まれているはずなのに、レバノンをまだ爆撃しているイスラエルを軍事支援している米国のほうが そもそも停戦していない ということが言えるのではないでしょうか?
この点でイランだけを責めるのはおかしいと思います。
まずはレバノンやガザでの虐殺を続けているイスラエルを政治的に抑え込む、一切軍事支援しない位のことをしないと、この問題は根本的には解決しないでしょう。
そして、当初は オマーン寄りの航路だったら通行料無料で通れる と宣伝していたオマーンも このイランからシンガポールの船への攻撃を受けて、立場が変わりました。
(以下、上の記事の転載開始)
(ブルームバーグ): オマーンはホルムズ海峡をめぐり欧州当局者に対し、イラン戦争前の状態に戻ることは不可能であり、同海峡を通過する船舶に何らかの料金を課す必要が生じる可能性があると伝えた。事情に詳しい関係者が明らかにした。
非公開情報を話しているとして匿名を条件に述べた同関係者によると、オマーン当局者は国際海事法を常に順守すると説明する一方で、海峡の汚染除去や船舶の航行支援などのサービスに関連した料金が課される可能性があると述べた。こうした料金が強制的なものになるかどうかは明らかではない。
関係者によれば、オマーンはアジアのマラッカ海峡を含む世界各地の海上交通の要衝で採用されている制度を分析している。マラッカ海峡では船舶への通航料は義務付けられていない。
米国や欧州、さらにオマーンの湾岸アラブ近隣諸国は、オマーンがイランと共同でホルムズ海峡に通航料や手数料の制度を導入することへの懸念を強めている。
フランスのマクロン大統領は29日、パリでオマーンのハイサム国王と会談する。仏大統領府によると、両首脳は「ホルムズ海峡における自由かつ無条件の通航を前提とする海上交通路の安全保障」について協議する。
オマーン外務省とフランスのオマーン大使館は26日時点でコメント要請にすぐには応じなかった。
(記事転載終了)
つまり、オマーンは イランがホルムズ海峡通行を管理して料金を徴収する意向を強く示し、それ以外のルートを通る船に対しての威嚇行動にも出たので、オマーン寄りのルートでも 数日前のように「無料で通行できますよ」とは言えなくなってしまった ということです。
イランとも交渉して、何らかの通行料を科すようにしないと海峡通行は安全にならない、戦争以前の状態に戻すことは無理 と悟った ということでもあります。
元々 このホルムズ海峡は イラン寄りの海域のほうが海が深く、オマーン寄りの海域だと浅瀬や岩礁があるので、大型タンカーになれば、イラン寄りの航路を通るのが普通だったのです。
今回 オマーン寄りのルートを通って脱出しようとしていた船が攻撃された ということは オマーン寄りであっても 戦争被害者であり賠償金を徴収する必要があるイランが通行管理をする という強い姿勢を示したということですから、オマーンもそのイランの意向を考慮せざるを得ない ということになるでしょう。
それが「イラン戦争前の状態に戻るのは不可能」とオマーン当局者が言っているという上のニュースです。
つまり、エネルギー価格は ホルムズ海峡が今までの「ほぼ全面封鎖状態」から「管理通航」へと移行することで、ピーク時よりはエネルギー価格は落ち着きますが、「完全に戦争前の価格にまで戻ることは おそらくあと数年はありえない」 ということになります。
エネルギーを中東に依存してきた日本にとっては 非常に残念なことですが、日本の「親分」である米国、そしてトランプが従っているユダヤロビーの意向に従って向こう見ずなイランへの先制攻撃を行ったせいで、このようなエネルギー価格の高騰とそれに伴う値上げラッシュ等の日本国民の生活の苦境、すでに始まっている小規模事業者の倒産 という事態になっている ということです。
米国とイスラエルのせいで こんな大惨事になっているのに、日本政府からは 米国やイスラエルに対して、一言も批判の声すら出ていないですね。
この 同盟国の米国だけではなく、イスラエルにすら一切声を上げられない ということが どれだけ異常なことなのか、盲目な高市支持者の皆さんも考えるべきでしょう。




