今のホルムズ海峡危機で、化石燃料に頼りすぎるのは やはりダメだ ということで、原子力を推進せよ と言っている人も多いのですが、日本の場合、それも完全に行き詰まっています。

 

というのは政府が当初目指していた核燃料サイクルは高速増殖炉「もんじゅ」の失敗→廃炉決定によって事実上とん挫し、核燃料を再処理する工場としての青森県の六ケ所村の工場は延期続きでいつ稼働できるかの目途が立たず、その上、高レベル放射性廃棄物を地層処分する場所も この狭い日本国内では どこの自治体も受け入れたがらず、なかなか決定できない というまさに「三重苦」状態になり、言うなれば、「排水が詰まっているのに、どんどん汚水だけをため込んでいるマンション」状態になっているからです。

 

日本政府が当初目指していた核燃料サイクルをイラストにしたものが↓です。日本の核燃料サイクル、もんじゅ廃炉と六ケ所問題

(上の核燃料サイクルの中の赤い線で囲った3か所の部分は目途が立っていない状態)

 

 

 

 

そして、ナトリウム漏れ事故等のトラブルが相次いだために廃炉が決定した高速増殖炉「もんじゅ」の燃料を取り出した後にどうするか というところで、また新たに行き詰ってしまった というニュースが最近報じられました。

 

それは この「もんじゅ」からの廃棄核燃料を受け取って再処理する計画だったフランスが 予定していた再処理工場の計画を断念したのです。

 

まずはそのニュースをご紹介します。

 

もんじゅ廃炉と燃料再処理の壁

 

(以下、上の記事の転載開始)

 

仏計画断念でなぜ暗雲? もんじゅ廃炉を阻む燃料再処理の壁とは

 

もんじゅ廃炉 福井県敦賀市MOX燃料

 

炉作業中の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の使用済み核燃料が、受け入れの有力候補だったフランスの施設の建設計画白紙によって、先行きが不透明になっている。もんじゅの燃料は特殊で、通常の再処理施設では対応できないためだという。

 もんじゅは1995年12月、冷却材のナトリウムが漏れ、火災を起こした。2010年に再稼働したが、炉内に燃料交換装置が落下。大量の機器の点検漏れなどの不祥事も相次ぎ、政府は16年に廃炉を決定した。

 廃炉計画によると、465体ある使用済み核燃料を34~37年度に搬出し、47年度に廃炉を完了するとしている。


六ケ所では対応できず
 政府の政策では、原発の使用済み核燃料は必ず再処理して、プルトニウムを分離して再利用する方針だ。国内では、26年度の完成を目指して六ケ所再処理工場(青森県)が建設中だが、対応できるのは既存原発の使用済みウラン燃料で、もんじゅなどで燃やすウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料)を再処理できる設計になっていない。

 

そのため、文部科学省は20年代の運転を予定していたフランスの特殊燃料処理施設(TCP)の建設計画を注視していた。だが、資金の確保や既存のラアーグ再処理工場との接続が困難となり、TCP建設が断念されたことが判明した。

 

(記事転載終了)

 

 

上の記事で分かるように、高速増殖炉「もんじゅ」用の特殊なナトリウム冷却用のMOX燃料の再処理をフランスに委託しようという計画が フランス側の財政的、技術的事情でとん挫してしまった形です。

 

フランスがだめなら、そもそもこの特殊なMOX燃料の再処理ができるのはロシアの国営の原子力企業「ロスアトム」くらいしかないでしょう。

ロシアは世界で唯一、  フランス、中国、米国が失敗した「閉じた核燃料サイクル」の実用化を成功させた国です。

 

 

 

 

しかし、日本政府の今のロシアとの関係悪化でそのような 原子力分野での協力関係を結ぶことなど、政治的判断で到底できないでしょうね。

 

そして、通常の燃料の再処理を行う予定で遅れ遅れになっている六ケ所再処理工場の稼働を待ちわびているのが 原発を稼働していて原発施設内プールに使用済み燃料をため込んでいる各電力会社です。特に、原発による発電割合が高い関西電力については 保管場所のプールも もうすぐ満杯になる と言われています。

 

福井県にある関西電力の原発の様子

 

そして、最終処分場の「高レベル放射性廃棄物」については どこの自治体も引き受けてくれそうにないので、海上自衛隊、気象庁、国土交通省の職員以外の一般住民が住んでいない状態の「南鳥島」が今、候補地として挙げられていますが、これにも多くの問題があります。

 

南鳥島での核ごみ最終処分調査

 

南鳥島が最終処分場候補地の理由

日本の最終処分場は文献調査段階

 

南鳥島は人口密集地から遠く、NIMBY問題を減らせる

 

南鳥島の戦略的重要性と管理のしやすさ

 

南鳥島は台風、海面上昇、塩害、補給困難があり安全か

 

地震・火山リスクと地球科学的要因

 

海洋汚染時の影響:容器劣化、地下水浸透、漏出リスク

日本、核燃料サイクルの課題と使用済み燃料増加

 

南鳥島論:原発プール逼迫、政府は候補地推進

 

日本がこのように、高速増殖炉もんじゅで行き詰まり、六ケ所再処理工場で行き詰まり、最終処分場も決められないままで各原発施設内の燃料プールに使用済み燃料だけが溜まり続けている という状況であるのを尻目に、核燃料サイクルを今強力に推し進めているのが中国です。この分野では世界最高の技術力があるロシアと技術協力協定を結んでいます。

 

今回はその記事もご紹介します。原子力資料情報室、2025年8月の記事からのものです。

 

(記事転載開始)

 

憂慮される中国の核燃料サイクル関連施設

 

イスラエル・米国によるイランの原子力関連施設攻撃でも明らかなとおり、原子力の平和利用と核開発には密接な関連性がある。近年、中国では大規模な核燃料サイクル施設開発が進んでいる。本稿では、核兵器国中国で、いったいどのような施設が建設されているのか、概要を衛星写真を用いて紹介したい。

【1】 CFR-600

 

CFR-600高速増殖炉 2014年・2025年比較

 

まず紹介したいのは中国が福建省で建設中の高速増殖炉CFR-600(2基)である。図1を見ると、2014年には島だった場所が埋め立てられて完全に変貌したことがわかる。高速増殖炉はその名の通り、プルトニウムを増殖できる原子炉で、かつて日本には高速増殖原型炉もんじゅが存在した。中国の説明によれば、この炉は高速炉の増殖能力実証のための実証炉である。増殖されるプルトニウムは核分裂性の比率が極めて高く、核兵器に使いやすい。CFR-600用の燃料は2018年6月に中露間で締結された協定に基づきロシアが供給する。2022年に初期燃料は提供済みである。なお協定によると、提供した燃料やCFR-600で生成されるプルトニウムも平和利用に限定されることになっている。ただしどのように転用を防ぐのかは不明だ。

 2025年の写真を見ると、上側から排水が放出されている。中国側は未発表だがCFR-600はすでに稼働していると推定できる。筆者が衛星画像を確認したところ、2023年夏頃から排水が放出されていることから、このころから1号機が試運転を開始したと思われる。2号機は衛星写真から建設中であることが確認できるが、かなり完成に近づいている。

【2】 404工場

 

中国404工場の変化(2013年 vs 2024年)

 

甘粛省にある404工場は核兵器用のプルトニウム生産工場だった。プルトニウム生産用の黒鉛炉である801原子炉(1960年建設開始、1966年初臨界、1986年運転終了)、軍事用パイロット再処理施設である717工程(1968年運転開始、1970年運転終了)、大型再処理施設である418工程(1970年運転開始、1987年運転終了)という3つの軍事施設が存在した。1987年、当時の李鵬副総理が404工場の再処理中止と軍民転換、民生用再処理工場の建設という方針を示し、運転を終了したとみられる。いずれの原子炉も1990年に廃止措置が始まった。

 404工場は現在、中国核工業集団公司傘下の中核404有限公司が運営している。同社の会社概要には、「原子力施設の廃止措置および放射性廃棄物の管理、核燃料の処理および核廃棄物の処理、原子力工学の設計、技術の研究開発、実験および技術試験などの事業に従事している」と記載されている。

 2013年の衛星写真を見ると、施設は大きく3つのエリアに分かれることが確認できる。左側が原子炉エリア、真ん中が717工程エリア、右側が418工程エリアである。一方、2024年の衛星写真では、原子炉エリアは廃炉に伴う廃棄物管理用の簡易的な建物が増えた以外、それほど大きな変化はないが、717工程エリアと418工程エリアは様変わりした。

 418工程エリアは、現地の写真と衛星写真を照らし合わせることで軍事用エリア(下側)と民生用エリア(上側)に区分できる。民生用の再処理施設は1998年から2005年にかけて建設され、2010年に使用済燃料を用いたホット試験が実施されている。また、使用済燃料中間貯蔵施設や再処理用の使用済み燃料貯蔵用プールの拡張工事が実施された。

 他に中国の競争入札サイトを確認すると、MOX燃料工場が建設されているが、3つのエリアのうちどこなのかは特定できない。

【3】 中核甘粛核技術工業団地

 

中核甘粛核技術工業団地の2011年と2024年の比較画像

 

404工場と同じ甘粛省に使用済み燃料再処理工場を3つとMOX燃料工場を建設中だ(中核甘粛核技術工業団地)。この団地の建設主体は中国核工業集団公司傘下の中核龙瑞科技有限公司となっている。再処理工場の処理能力は年200トンHM、第一再処理工場は2015年に建設開始、完成は2025年目標とされる。公式発表はないが、2020年から第二再処理工場の建設が始まったとみられる(運転開始見込み2030年)。MOX燃料工場(20トン/年)は、中国の競争入札サイトによれば、2018年に地質調査が発注されている。

 2021年甘粛省大規模建設プロジェクト投資計画によれば、この施設の建設期間は2015年~2028年、総投資額3000億元(6兆円)と記載されている。なお、近隣には低レベル放射性廃棄物処分場も建設されることになっている(再処理施設から南西に20km)。

【まとめ】

 中国の核燃料サイクル施設の開発は急激に進んでいる。特に甘粛省における施設建設は急ピッチだ。一方で、中国がIAEAの査察対象としているのはわずか3施設で、その中には再処理施設は含まれていない。また、中国は自国の民生用プルトニウム保有量についても2016年末分以降報告していない。そのため、中国の核開発の状況は極めて不透明となっている。

 

(記事転載終了)

 

 

このように、日本が高速増殖炉計画に失敗し、さらに六ケ所再処理工場の稼働は延期の繰り返し、核廃棄物処理についても地層処分できる場所がない という具合に、廃棄物を出してもその後の処理が自前でできない という「糞詰まり」の状態の中で、中国はロシアと原子力協力協定を結び核燃料サイクルに本腰を入れ原子炉が稼働中、さらに核融合の研究にまで巨額の資金を投入して、もちろん、まだ実用化には程遠いですが、研究では中国が世界の最先端になっている という状況が今の状態です。

 

 

中国の核融合実験装置EASTのプラズマ記録