アゼルバイジャンとアルメニアによるナゴルノ・カラバフ自治州を巡る軍事衝突、直近では2020年9月27日~2020年11月10日に起き、最終的にロシア軍が兵を駐留させ、停戦監視を行うということで、いちおう表向き、落ち着いた形とはなりましたが、その後も散発的な軍事行動は起きていました。しかし最近になってエスカレートしてアゼルバイジャンがアルメニアの国境まで軍を進めて事実上の戦争状態となっているようです。
この24時間だけで、アルメニア、アゼルバイジャン、両軍合わせて200名以上の死亡が確認されています。
↓
200+ soldiers killed and many injured in fighting on both the Armenian and Azerbaijani side in the last 24 hours my sources on the ground say.
— Patrick Lancaster (@PLnewstoday) September 13, 2022
(上の地図:アルメニア、アゼルバイジャン、ナゴルノカラバフ(薄いピンク色の部分)の位置関係)
アゼルバイジャンは2020年の軍事衝突で アルメニア軍やアルメニアが支配していたナゴルノ・カラバフの民兵を圧倒し、ナゴルノ・カラバフ自治州のうちの、面積にして6割位のエリアの支配権を取り戻すことに成功しました。しかし、アルメニア人が多く住んでいるナゴルノ・カラバフはそのまま残され、アルメニアとをつなぐ回廊(ラチン回廊)にはロシアの平和維持軍が 警備ポストを置いて警備するという形でなんとか停戦にこぎつけたわけです。
アゼルバイジャンにも「飛び地領土」があって、アルメニアの南西部に薄いピンク色で塗られている部分、これはナヒチェヴァン自治共和国というアゼルバイジャンの飛び地で人口の98%がアゼルバイジャン人です。
今回 アゼルバイジャンは「アルメニア側から挑発を受けた」と言って、軍隊をアルメニアとの国境付近、あるいは国境を越えたあたりにまで進めているのですが、その狙いは アルメニア南部を侵略してこの飛び地のナヒチェヴァン自治共和国とアゼルバイジャン本国とをつなぐように支配したい というのがあると思います。
アルメニア軍、アゼルバイジャン軍は 兵力や装備からすれば、アゼルバイジャン軍が圧倒しています。
民族がトルコ系であるアゼルバイジャンには トルコの軍事的な強い後ろ盾があります。2020年の戦争では トルコのバイラクタル・ドローンがナゴルノ・カラバフのアルメニア民兵集団に大きなダメージを与えました。
アルメニアは地理的に周りをトルコ、アゼルバイジャン、ジョージア(グルジア)、イランと いうように ムスリム国家や非友好国(ジョージアはアルメニアにとって友好国ではない)に囲まれているのですが、同じキリスト教正教会を信仰していてアルメニアにとっての友好国であり、アルメニア内に基地も持っているロシアと、CSTOと呼ばれる旧ソ連だった国が参加した軍事同盟を結んでおり、アルメニア国内が侵略された場合は ロシアを中心とした軍事同盟であるCSTOが防衛しなければならないことになっています。
しかしロシアは ナゴルノ・カラバフやそこにあって独立を宣言している「アルツァフ共和国」については独立を認めていないため、2020年のナゴルノ・カラバフでの戦闘は「アルメニア国内が侵略された」とはみなされず、ロシアはアルメニアの同盟国として参加することはせず、あくまで仲裁の立場を取ったわけです。
そしてアルメニアと国境を接している国の1つ、イランはアルメニアと良好な関係にあります。というのも、イラン北部にアゼルバイジャン人がたくさん住んでおり、イスラム教シーア派であるイランのペルシャ人からすると、スンニ派であるトルコ系のアゼルバイジャン人は警戒しなければならない人たちであって、また、アゼルバイジャンとイスラエルが良好な関係でイスラエルは2020年のナゴルノ・カラバフの紛争の際もアゼルバイジャン側について兵器の提供を行っています。
イランの天敵、イスラエルがアゼルバイジャンを応援しているのですから、イランは「ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャンに返還されるべき」とは言いながらも どちらかと言うとアルメニアを応援 という感じで、アルメニア、アゼルバイジャン周辺には複雑な地政学的状況があるということです。
今回アゼルバイジャンがアルメニア側に侵攻してきているということは 停戦監視を行っていたロシアが ウクライナ戦争によって人員を取られて警備が手薄になっているところを狙ってきたのだと思います。アゼルバイジャンの今回の軍事行動の後ろでまた、米国が糸を引いている可能性も十分にあります。
2020年のナゴルノ・カラバフでの紛争もそうですし、2022年6月に発生したカザフスタンでのクーデター、2020~2021年にベラルーシで起きた反政府デモ、これらはいずれも 米国が仕組んだもので、私の過去のブログで記事にしていますので、よろしければご覧ください。
戦況は 軍事力でアルメニアを圧倒しているアゼルバイジャンが南部の国境付近の険しい山岳地帯で すでにアルメニア内に侵入して一部を占拠したようです。
ユダヤ人と同じように「ディアスポラ」になって世界中に移動していったアルメニア人が 特に米国やフランスで ユダヤ人ほどではないですが、ある程度の「政治力」を持っていたりはしますが、アメリカ政財界を牛耳るほどのユダヤ人の強大な政治力に比べたら、微々たる影響力だと言ってよいと思います。
アゼルバイジャンは自分たちの軍事行動を正当化するため、「アルメニア側から挑発(銃撃)があった」と言っていますが、それも 実際はアゼルバイジャン側から今回しかけた軍事行動だと思われます。
なぜなら、「アゼルバイジャンがアルメニアの国内で砲撃しているという明らかな証拠を持っている」とアメリカも言っているからです。
↓
「アルメニア国内でアゼルバイジャンが砲撃した重要な証拠を見た」と@StateDeptSpoxが記者団に語っている。「原因が1つである可能性は低い。」
アゼルバイジャンといえば、バクー油田という大きな油田を持っています。ロシアの石油やガス企業が国営企業で運営されているのとは違い、バクー油田はソ連崩壊後、元々ソ連国営だったのが外資に売り払われて、外資がほとんどの権利を握っているそうです。その石油は欧州やトルコ、イスラエル等に輸出されており、ロシア産石油に経済制裁がかけられている今、アゼルバイジャンからの石油の輸出まで、戦争で不安定になる、侵略で制裁、あるいは戦争を機に儲けようという投機的なトレーダーの動きによって、また石油の値段が上げるリスクが出てきたわけです。




