5/11、ウクライナのロシアからの天然ガスのパイプラインを管理する会社が 突然、ウクライナ東部のロシアとの国境のガスの通過点の元栓を締めると発表しました。Sudzha border point という場所の、東北部にあるロシアとの国境に近いガスの通過点になります。↓

 

 

この通過点からの欧州へのガスの供給は ウクライナ全体を通るガスの1/3量にもなります。そのような大きなパイプラインの元栓を突然締めると言ったわけですから、これはロシアへの嫌がらせと同時に、欧州への嫌がらせの意味があるのでは・・・。

 

ウクライナ側からのアナウンスをそのまま報道したCNNの記事↓を以下で和訳してご紹介します。

Ukraine halts some Russian gas flows to Europe

 

(和訳開始)

 

ウクライナ、欧州へのロシア産ガスの供給を一時停止

 

ロンドン(CNN Business)- ウクライナは水曜日、重要なパイプライン網から供給を迂回させたとしてロシアを非難し、ロシアの天然ガスの一部を欧州に流すことを停止した。

ドイツをはじめとする多くのEU経済圏にとって重要なエネルギー源であるロシアのガスは、プーチン大統領が2月に軍隊に侵攻を命じて以来、ウクライナ国内のパイプラインを通じて途切れることなく流れ続けていた。
 

しかし、ウクライナのガス輸送システムオペレーター(GTSOU)は、火曜日遅くの声明で、"占領軍による妨害 "のため主要な中継地点での操業停止を決定したと発表した。ソフラニフカ測定所は、ウクライナ経由でヨーロッパに流れるロシア産ガスの約3分の1である1日3260万立方メートルを扱っていると、オペレータは言った。
 

「ロシア連邦のウクライナに対する軍事侵攻の結果、いくつかのGTS施設はロシア軍と占領行政機関が一時的に支配する地域に位置しています」と述べ、ガスの不正な転用などロシアの干渉によりシステムの「安定性と安全性が損なわれています」と付け加えました。

ウクライナは 2020年に行われた修理の実施の時と同様に、ガス量は自国が支配する地域のさらに西にあるスジャ経由地に中継地点を移動させることができると言った。

 

しかし、ロシアの国営ガス会社ガスプロムは声明で、そのような再構成は「技術的に不可能」であると述べ、混乱が生じた理由は見当たらなかったと付け加えた。
 

「ソクラニフカ経由の中継は完全に提供され、取引先からの苦情はなく、現在もない」と、公式テレグラムチャンネルに投稿された声明で述べています。"ガスプロムは欧州の消費者に対する義務を完全に果たし、契約と事業者協定に従って中継のためのガスを供給し、中継サービスは完全になされている。"
 

ロイターが報じた別の声明で、ガスプロムは、水曜日にウクライナ経由で欧州に出荷された量は、火曜日の水準から25%減少し、約9600万立方メートルから7200万に減少したと発表した。
 

ウクライナ国営エネルギー会社ナフトガスのユーリー・ビトレンコ会長は19日、記者団に対し、同社がガスプロムに対して法的措置を取ることを検討すると述べた。

 

Rystad Energy社の天然ガスアナリスト、Zongqiang Luo氏は、ヨーロッパのガス網は十分につながっているため、特定の国が「直ちに影響」を受けることはないだろう、と述べた。
 

ソクラニフカを通過するガスの流量は、5月の平均で1日あたり約2300万立方メートルだったと同氏は付け加えた。スジャの中継地点では、1300万立方メートルのガスフローを追加してショックを相殺することができる。
 

しかし、不足分は 冬になる前に貯蔵タンクに補充することが難しくなり、「ヨーロッパがロシアのガス輸入から脱却する計画を早めることになる」と同氏はリサーチノートに書いている。
 

Gas Infrastructure Europeのデータによると、EUのガス貯蔵施設は約37%満杯である。これはこの時期としては普通だが、EUが11月に設定した80%という目標にははるかに及ばない。

 

リスタッド社によると、欧州の天然ガス価格は水曜日の朝に5%上昇したが、その後火曜日の終値の水準を下回るようになった。
 

金曜日から約9%下落していた原油価格は、このニュースによって上昇に転じた。ブレント原油と米国産原油は、水曜日に約3%上昇した。米国の天然ガス価格は火曜日には5%上昇し、水曜日にはさらに1%上昇した。
 

OANDAのシニアマーケットアナリスト、ジェフリー・ハレー氏は、「ヨーロッパのガス供給に支障が出るという脅威が、今日のアジアでの原油を急激に上昇させているように見える」と書いている。"ロシアのガスがヨーロッパにカットされれば、インフレに対するすべての賭けは外れる"。
 

先月、ロシアはポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を停止し、ウクライナ戦争でモスクワに課された西側制裁への対応を劇的にエスカレートさせた。
 

ガスプロムは、ポーランドのガス会社PGNiGとブルガリアのブルガリアガスが、ユーロやドルではなくルーブルで支払うというモスクワの要求を拒否したため、供給を完全に停止したと発表した。
 

欧州委員会は、これを「恐喝」のたくらみと評している。
 

国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシアは昨年、欧州連合のガス輸入総量の約45%を占めた。
 

欧州最大の経済国であるドイツは、戦争が始まって以来、ガス輸入に占めるロシアの割合を55%から35%に減らすことに成功したが、突然の停止は同国を不況に陥れかねない。
 

経済省のスポークスマンであるスザンネ・ウングラッド氏が水曜日にCNNに語ったところによれば、「我々のガス供給は現段階では保証されており、連邦ネットワーク庁と共に供給状況を注意深く見守っている」とのことである。
 

ドイツが輸入するロシアのガスのほとんどは、バルト海を通るパイプライン「ノルドストリーム1」を経由して運ばれているとウングラッド氏は付け加えた。

 

(和訳終了)

 

ロシア軍もウクライナ軍も戦闘で天然ガスのパイプラインを傷つけることがないように行動していました。ですから、ロシアの侵攻後も70日間、何の問題もなくウクライナを通過してロシアのガスは欧州に流れ続けていたわけです。

また、ウクライナも自国の領土を通過して欧州にガスを流させることにより、通過料を取っており、それがウクライナ側の利益にもなっているわけで、敢えてロシアからのパイプラインは温存していたわけです。だからこの止めた中継所での操業ができなくなった というのは戦闘によって発生した問題ではなく、あくまで「政治的判断」だと思われます。

 

しかし、この突然の発表、不思議ですね。

ウクライナのハリコフ在住ながら、ずっとゼレンスキー政権の批判をしてきて有名になったチリ系アメリカ人のYoutuber,ゴンザーロ・ライラさんも こんな欧州に大きな影響を与えるような重大な決定は ゼレンスキー大統領だけで決められるものではない。バックにいてゼレンスキー氏にそれを決定させたのはアメリカだ というようなことをおっしゃっていますが、私もそう思います。

 

 

 

 

アメリカにとっては ウクライナがロシア産ガスのパイプラインを締めることによって、欧州へのガスの供給不安を生じさせれば、アメリカ産のシェールガスを液化天然ガス(LNG)にして欧州に売り込むチャンスです。

また、米からのLNGでは 欧州では ロシアからの直接のパイプラインと比較してコストが3~5倍になり、さらに貯蔵施設の建設も必要と、今まで欧州では 全く価格面で勝負にならなかったわけですが、ここで市場でのガス価格がさらに高騰すると、米国産シェールガスも 初めて欧州で競争力を持つわけです。

 

もしくは 米の支配層の中には この機会に欧州の経済全体を弱らせてやろうという思惑もあるかもしれません。

 

でも、欧州経済が弱ったり、ロシアが自国のガスを欧州に売れなくなったら、得するのは シベリアからパイプラインがすでにつながっていて安い価格でガスを買える中国です。

 

今もすでに深刻なインフレやエネルギー価格の高騰に苦しんでいる欧州が 近い将来、衰退するとすれば、代わりに 軍事的にも 経済的にも 今よりもっと脅威になるのは中国というのは 目に見えているわけで、米国が ロシア弱体化目的で始めた制裁が 結果的に 中国の世界での覇権拡大を推し進めてしまう可能性は高いでしょう。

 

日本にとっては 米国は 建前上、同盟国ということになっていますが、全く信頼のおけない国だと私は思います。