それは私が結婚した当初のこと、
わが夫(英国人)の実家に遊びに行き
わが夫の父、すなわち
わが義父(白色シュレック)と
和やかに世間話などをしていた際に
「時に私の新しい義理の娘は
編み物などはしないのかね」
義父の質問に私は笑顔で即答、
「しませんね」
私の答えに義父は
大袈裟に不思議そうな顔をして
「しない?また何故かね」
「編み物というのは何かこう非常に
女性的というか女子的というか、
社会的性差に基づく色眼鏡を通して
見られがちな趣味じゃござーませんか。
私はそういう『女の子なんだから
こういうこと好きでしょ』みたいな事柄には
手を出さないことに決めているんす」
「いやいや、それは偏見だ、もったいない。
編み物というのはいいものだよ。
私の妻、つまり君の義理の母も
編み物をするんだがね、機会があったら
彼女に編み方を習うといいよ」
「そーすか。お義父様ご自身は
編み物をなさったりするんすか」
「・・・私はしないがね」
「じゃあ機会を見つけて奥様に
編み物を習ってみてはいかがすか。
私はよく知らないんすけど
編み物っつーのはいいものらしいすよ」
こう思い返すと私は嫌な嫁だなおい!
でもさー、編み物ってさー、
どうしてもそういう印象がありません?
こう、いかにも、どうしましょう、
私、女らしいんです!みたいなことを
強く主張したがる娘さんが『できます』と
言いたがる趣味の一つというか。
料理が得意で掃除が趣味で
おとなしくて照れ屋ででも一途で、
みたいな性格の自己演出の
一手段としての編み物、みたいな?
うわー、私はそういう女子とは
まず友達になりたくないわー!
そういう女には
二面性があるもんだわー!
そして男にはそうしたオナゴの
二面性がわからないもんなんだわー!
さて、何故私がここまで
編み物に対し深い偏見を
抱くようになったのかと申しますと
たぶん答えはこの名曲にあり。
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北の宿から
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着てはもらえぬセーターを
(わざわざ)寒さこらえて編む自分に
酔いしれて涙ぐむこの女の図々しさよ。
ああ嫌だ嫌だ!
こういう女にだけは近づきたくないし
まして自分がこんな女になりたくはない!
このあてつけがましさ!
私って可哀そうでしょ、でも健気でしょ、
さあ慰めて慰めて、みたいな
このメンタリティの唾棄すべき幼さと
そこに隠された恐るべき計算高さ!
失恋で辛いのはわかる、
しかしそこでさらにわざわざ結果的に
無駄になるとわかっている編み物までして
自己憐憫に拍車をかける、お前
結局そんな自分が大好きなだけだろ!
だからふられるんだよ!
またそのセーターを編んでいる途中で
適当な男を見かけたらお前のような女は
ころっと前の男のことを忘れて
「ひと目ひと目アナタのことを
思って編みました・・・」とか言って
新しい男にそのセーターを渡す気だろ!
あー嫌だ嫌だこういう編み物女!
・・・と、かような次第でわたくしめは
長いこと編み物と編み物を趣味にする女性に
抜きがたき偏見を抱いてきたのですが
馬齢を重ねてふと過去を振り返るに
ここまで私が実際に出会ってきた
『趣味:編み物』な女性はあんまり
そういう性格はしていなかったんですよね。
むしろ『北の宿から』女の
対極に位置するような気性の持ち主が
多かったような気さえするんです。
割とこうサッパリした性格というか
『女のねちっこさ』を上手に
コントロールして姿勢よく生きているというか。
また私が子供の頃に読んだ
往年の少年・少女漫画では
出てくる女の子が編み物をするとなると
「憧れの男の子のために
秘密でマフラーを・・・」みたいな
展開が定番だったわけですが
そういうのって普通に考えて
迷惑行為だと思うのですが、いかがか。
だって男の子の立場にしたら怖いでしょ?
好きでもない女の子から
手編みのマフラーを貰ったりしちゃうのって。
捨てるに捨てられないし。
そういう風に相手の気持ちを考えずに
堂々と手編み物を押し付けられちゃう
このような精神構造の女こそが私の嫌う
編み物女の典型であるわけですよ。
しかしその後大人になって
小説などを読むようになりますと
そこにはそういうのとは一味違った
編み物女が登場しておりまして。
クレイグ・ライス作品に出てくる女性たちは
ウイスキーで酩酊しながらクールに
ガンガン網目を増やしておりますし
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大はずれ殺人事件 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ラ 2-2)
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某『二都物語』には血に飢えた
編み物復讐者が出てきますしね。
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二都物語 (新潮文庫)
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そんなこんなで私はこの度
勇気を出して編み物女の
仲間入りをすることにしたのでした。
試してみて損なし、な
決断であったと満足しております。
まあ一度くらいはね、
人生、何事も経験でございますから。
そんなわけでこの編み物話は
年末に向けて続くのであった
編み物がお好きなあなたも
いやああいうのはちょっと、なあなたも
(その気持ちはよく!よくわかります!)
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