今は亡き祖父と映画館で

『南極物語』を

一緒に観た記憶があります。

南極物語 [DVD]/蔵原惟繕,高倉健,渡瀬恒彦

悪天候のため

昭和基地に置き去りにされた

樺太犬15頭をめぐる物語。


雪原を走るタロとジロ、

そしてあのヴァンゲリスの旋律・・・!


子供心にも大変面白かった

映画だったのですが、

客席の照明の落とされた暗がりの中で

何に驚いたって、

南極観測船『宗谷』が上陸を断念、

これから犬たちのドラマが始まる!

という私としては一番心躍った場面で、

わが祖父がすやすやと

幸せそうに寝息を立て始めたことですよ。


十歳にも満たない児童としては

そこまでの髭面のおじさんたちの

むさくるしい人間劇などは刺身のツマで、

雪原で跳ね回る犬たちの姿こそが

この映画の売りだと考えていたわけで。


帰宅した私は両親に

「どう、映画は楽しかった?」

と尋ねられ

「うん、楽しかった、楽しかったけど、

お祖父様はずーっと寝ていたよ」


するとそれを聞いた祖父は涼しい顔

「いや、俺は起きていた」

「えっ!寝ていたよ!

じゃあお祖父様、お話の筋は言える?」


「結局残された犬のうち

タロとジロだけが生き残っていたんだろ?」

「・・・」


「じゃあNorizo、お前はどうして

タロとジロとその仲間たちが南極に

残されちゃったのかわかっているか?」

「・・・わからない」


「あれはな、第一次越冬隊と

第二次越冬隊の引継ぎが

寒さのため不可能になったからだ」


そのとき私は

うっかり信じてしまったのです、

わが祖父はもしかしたら

聖徳太子の生まれ変わり

なのではないか、と・・・


思えば頭の弱い子供でした、私は。


文字の読める大人だったら

前宣伝にちらりと目を通しておけば

あれくらいのことは答えられる、

というか、

わが祖父はどちらかといえば

『犬嫌い(怖いのではなくて

興味がない派)』だったのに

よくこんな映画に

私と妹を連れて行ってくれたなあ・・・


当時は仕事をしていらしたのだから

子供を二人連れて映画館に行くなんて

億劫だったろうになあ・・・


映画の途中で

居眠りをなさったのだって

あれは相当疲れて

いらしたからなんだろうなあ・・・


本当にね、孝行したいときに

祖父母はなしってやつですよ!


身近な高齢者が

いまだご存命の皆様、

今のうちに恩は返しておくと

後の心が楽になりますぜ。


経験者からのご忠告です。



なお『南極物語』は

その後大人になってから

夫(英国人)と一緒に観たんですけど

「・・・これを君は

子供の頃に観たんですか?

この映画といい

例の『銀河鉄道の夜』 といい

子供向け映画としては内容が

悲劇的過ぎるように僕は思うんですけど」


ちなみに大人の目で見ると

『単なる無口なヒゲオヤジ』だった高倉健が

えもいわれぬ魅力の芳香を放っていて

ちょっと驚きました


絵になるというのはこういうことか!

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