ここ2週間ばかり

英国の新聞紙面を賑わせていたのは

ラッセル・ブランド(人気コメディアン)と

ジョナサン・ロス(人気テレビ司会者)が

アンドリュー・サックス(人気老俳優)にかけた

いたずら電話とそれをめぐる騒動でした。


一連の事件(と言っていいのか)の流れは

当事者であるBBCがこちら にまとめているので

ご興味のある方はご参照ください。


ブランド氏が看板を務める

「BBC2」のラジオ番組に

ロス氏がゲストとして招かれ、

で、この二人が一緒になって

サックス氏の自宅に電話をかけ

留守番電話にいたずら伝言を吹き込み、

その様子がラジオで放送されたのです。


サックス氏は

有名テレビコメディ『フォルティ・タワーズ』の

マヌエル役で名を馳せた人で、現在78歳。


そんなご老人の電話にふたりは

「彼(ブランド)は

貴女の孫娘とヤッたんですよ!

ギャハハハハ!・・・ああ、ごめんなさい、

つい口が滑りました・・・」

「いえそんな、

僕はジョージアナとは何もしていません

・・・あ、俺、彼女の名前を

知っていることをばらしちゃったよ!」

とか

「この留守電を聞いてさめざめと泣く

サックス氏の姿を想像するのは嫌なもんだね」

「年寄り連中は電話のそばに

孫達の若い頃の写真を並べるからなあ」

「つまりこれを聞きながら彼は

彼女が9歳頃の写真を眺めているわけか」

とか

「僕はコンドームを着けていましたよ」

とか

「いやいやでもあれは

合意に基づいていたんですよ、

彼女は生理中じゃなかったですし、

合意に基づいた

とてもラブリーなセックスでした」

とか(全文はこちら に載っております)

延々留守電4回分を吹き込んだ、という。


この放送が流れた後、一部のメディアが

「これってどうよ」とその是非を世に問うたところ、

轟々たる世間の非難が呼び起こされまして、

番組が生放送ではなく

録音放送だったものだから

「BBCの放送基準はどうなっとるんだ」
と監査が入る騒ぎとなり、

野党保守党の党首だけでなく

ブラウン首相までがBBCに対し

「いや本当にどうなっているんだ」

との態度を表明、

BBCには2万7千件の抗議が寄せられ、

ブランドとロスは正式謝罪、

ブランドのラジオ番組は終了、

ロスは12週間の活動停止を表明、

BBCの「ラジオ2」局長が引責辞任

・・・まさに大嵐の様相を呈したわけですが、

まず最初にひとつだけ確認しておきたい、

ブランドとロスはこの「いたずら電話」で

笑いを取れる自信がどこにあったんだ・・・?


これをジョークとして成立させるのは

どう考えても無理だろう・・・

少なくとも国営放送の番組枠でやって

許される内容ではないと思う・・・


英国のお笑いは

呆れるほどレベルの低いものもあれば

衝撃的に質の高いものもあり

まさに玉石混淆で、

ある程度の「すべり方」なら

世間は許してくれるものなのですが、

今回の件が洒落ですまなくなったのは

ブランドとロスが高給取りで

人々の嫉妬を受けていたとかいう事情の前に、

この笑いの根本が

逃げ場なしの「年寄りいじめ」であったことに

社会が拒否反応を

示してしまったのではないか、と・・・


ロックバンド『オアシス』の

ノエル・ギャラガーは

ブランドとロスを擁護して

「人々は激怒しているわけだが、

それが放送終了後

5日経ってからってのはどうよ?」

とコメントしています。

ノエルの言うことにも一理はある。

でも純粋に考えてみてくれ、

このジョーク、面白いか?


たとえば私がジョナサン・ロスで

打ち合わせの段階でブランドに

「こういうネタでいこうと思うんだが」

と持ちかけられたら、

私はネタの再考を促すと思う。
どうしてもジョージアナの件で

番組を進めたいというのなら、せめて

ジョージアナを「いじる」方向を目指したい。

70過ぎのお爺さんではなく。


ブランドとジョージアナが

関係を持ったというのは

どうやら真実らしいのですが

・・・それならなおさら

これで笑いを取るのは難しいだろうよ。


タブーに挑戦するのはある意味

芸人の腕の見せ所でしょうが、

その場合のタブーの選択には

相当のセンスが必要とされる、

というこの事実。


「いじめ」と「笑い」の差はかなり微妙で、

それゆえコメディアンには

知性と技量が求められるわけですが、

ブランドとロスという

英国当代きっての人気芸人ふたりが

何故今回こんな穴に落ちたのか。


野次馬として純粋に

興味深い事例なのであります。



ブランドとロスを支持する貴方も

今回のこれはちょっと駄目だわという貴方も

微笑みの1クリックを


お願いします


なお英国の「ぬるい笑い」の「ぬるさ」たるや

正直、ただごとではない

ほとんど恐怖を感じるレベルです


なおジョージアナ嬢は

エンタテイメント業界の住人でして

今回の騒動をすっかり自分の

宣伝に利用している模様です


こういうお嬢さんが相手だったんだから

少し手を尽くせばネタそれ自体は

笑いとして成り立ちそうだったのに・・・

揶揄の対象をお爺ちゃんではなく

ブランド自身に持ってくればよかったのに・・・