祖父(東京在住94歳)といつもの電話。


「ところで、株式市場が今

大変なことになってるらしいが、

お前の夫(英国人)はやっぱりをしたのか?」


靴磨きの少年が株の話を始めたら

株価は大暴落するとは聞きますが、

私はわが祖父が

『株式市場』なんて単語を口にしたことに

心底驚きましたよ。


・・・それにしても

『やっぱり』はちょっとひどくないですか?


「ある程度の損は被ったみたいですよ」

「そうか・・・損をしたのか・・・」

「少しでも投資に手を出していたら

今回の下げからは

逃げられなかったみたいですね」

「で、奴はどのくらい損したんだ?」

「それは質問禁止事項となっております」

「・・・」

「いえ、私も知らないんですよ、

夫に詳しくは聞いていないので」

「・・・お前・・・」

「お祖父様、聞けません、聞けませんよ」


妻としての気遣いというやつです。


「まあお前の夫はああいう奴だから

仕方ないけどな」

「・・・お祖父様、お言葉ですが

貴方は私の夫のことを

何だと思ってらっしゃるんですか」

「いや、だからまあ奴のことはいい。

でな、一応聞いておくけどな、

お前は株なんかには手を出していないよな?」

「・・・」

「今回の暴落で損はしていないな?」

「・・・」
「おい」

「・・・頑張ります

「おい、頑張るってのは何だ!

お前まさか株に手を出しているのか!」


いや・・・あのですね・・・

私自身は株の売買には

距離を置いているのですが・・・

その・・・

夫が私の資金を運用してくれているんですよ・・・

一応、私の分の運用指針は

「ローリターンでもいい、

ローリスクであってほしい」なんですけどね・・・


さあ、ここで本日のマナー講習です。

このような話の流れで

「で、Norizoさんの損はいかほどで?」

という質問は不粋というものですよ。


その代わりに本日の夫婦の会話を以下に。


昨日今日と私は何故か

夕食の支度に手間取りまして。


いつもだったら夫が帰宅するのと同時に

夕食開始となるのですが

「ごめん、あと30分待ってもらえる?」

みたいな状況になってしまいました。

またこういうときに限って

夫は空腹を抱えて家にたどりついているのです。


「すまん、申し訳ない、計算を誤った」

と謝罪する私に、夫は唇を尖らせて

「・・・いいですけど、

君は昨日も同じことを言ってましたよね、

二日も計算間違いが続くなんて珍しいですね!」

「うん、言葉も無い、ごめんな!」


温厚な夫があそこまで言うってことは

相当お腹が空いているな、悪いことをしたな、と

台所に戻って料理の続きをしておりましたら

夫が背中を丸めてやって来ました。


「・・・ねえ、ごめんなさい、

僕はひどいことを言いました。

お腹が本当に減っていて、つい口が滑ったんです。

心からごめんなさい」

「いや、いいよ、私が悪いんだから。

あと少しで出来るからもうちょっと待ってね」

「いいえ、僕は悪い男です。

君の計算間違いを責める資格なんて

僕にはないのに!」

「・・・なあ、気にしなくていいって」

「だって!君の計算違いなんてたった二回のことでしょ?

僕が・・・僕が最近投資判断で

どれだけ計算を誤っていることか・・・!」

「夫!もういい!もういいよ!


なんかね、もう、最後のほう

安っぽい昼のドラマみたいになっていました。


というわけで、世の中には色々と

尋ねてはいけない事柄が存在するのです。


ちなみに自分の損失額がどれくらいなのか

私は夫にまだ訊いていません

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靴磨きの少年と暴落の逸話は

有名だと思ったんですがどうなんでしょう


ケネディ大統領のお父さんが

世間が株価高騰に浮かれる中

靴磨きの少年に

「おじさんは投資で成功した人なんでしょ。

今度上がる株が何か教えてよ」と言われ

「こんな子供までが株に狂騒するのは異常だ」

と持ち株を手放し、その直後に起きた

1929年の株価暴落による損失を回避した、

というマーケットちょっといい話シリーズです