さてこのようにして

(前回の記事はこちら

浅田次郎に別れを告げ

じゃあ次は何を読もうかという

話になったところ、祖父が

「そこに確か短編集があったろう?」


ああ、ございますね、えーと

『見上げれば星は天に満ちて

-心に残る物語 日本文学秀作選』

ちなみに編者は浅田次郎

・・・もういい、わかった、

何か縁(えにし)があるんだね、

今回はもう貴方の望むがままに

私は喉を潰す覚悟だよ、浅田さん。


さて一番手は

森鴎外の『百物語』。


私は森鴎外とは

どうも気が合わないらしい。

高校時代に『舞姫』を読んだときも

「文学論の前に待て、

これは小説として果たして面白いか?」

と何故か腹が立ったことを覚えています。


今回も肝心の百物語が始まる前に

物語は終わってしまい、ある意味

「さすが森鴎外、私のツボを外しまくりだぜ」

という気持ちだったのですが、

私の朗読を聴いていた祖父も

「・・・え、それで終わりか?」

とか言っていたので

きっと祖父のセンスにも

合致しないんだと思います、森さんは。


次が谷崎潤一郎の『秘密』。


朗読を始める前に一応祖父に

「お祖父様、これ谷崎潤一郎ですよ、

本当に読んでいいんですか」

と確認を取った私は小心者ですか

(ちなみに祖父の返事は

『いいよ、谷崎だろ?読め読め』)。


これは小説として

面白くないわけではないのですが、

何と申しますか話の筋というのが

「とある男が女装に目覚めて

そのまま昔の女とよりを戻して」

みたいな内容で、私だって個人的に

こういう話は嫌いじゃないんですけど

孫が祖父に向かって読むお話としては

これはどうか


また谷崎も筆が立つものだから

女装中年のナルシシズムと倒錯と陶酔が

これでもかとばかりに

行間に燃え上がっているのですよ。


ちなみに話が終わって

「はい、おしまい」

と言いながら本を閉じたら、祖父ったら

「・・・なんだそりゃ」

「言ったじゃないですか!谷崎ですよって!」

「・・・いや、面白い、面白かった」


本当だろうか。


三番手は芥川龍之介の『秘密』。


面白い。

面白いけれども素直に考えて

祖父もこういう話は孫ではなく

他の人に読んで欲しかったに違いない。

どうかな。

一番いいのは

周囲に人がいないのを確かめて

ひとりでこっそり

読んじゃうことだと思うんですけどね。


読み終えるなり祖父も私も

妙に口数が少なくなってしまいました。


この次に収録されている

川端康成の『死体紹介人』は

叔母が読み手を引き受けてくれたので

私は一回休みと相成りました。


続く。


見上げれば星は天に満ちて―心に残る物語
日本文学秀作選 (文春文庫)